「電子契約は法的に効果を持つの?」
「電子契約サービスを導入することによるメリット・効果とは?」
「メリットだけじゃなくて、デメリット(注意点)も教えてほしい」
と疑問に感じていませんか。
電子契約は書面契約と同様に法的な効果を持ち、電子署名を付与することで万が一の係争時にも証拠として利用が可能です。また、電子契約サービスを導入することで、印紙税などのコスト削減や取引のリードタイム短縮などの効果が期待できますので導入がおすすめ。
当記事では、電子契約が法的な効果をもつ理由や電子契約サービスを導入することによる効果、メリット・デメリットまでをご紹介します。
電子契約は法的な効果を持つ
冒頭でご紹介した通り電子契約は法的な効果を持ちます。以下では電子契約が法的な効果を持つ根拠について、順を追って解説していきます。
電子契約の証拠力
従来は紙媒体の契約書に、双方の担当者が「押印」することで契約締結の証拠としていました。その他、紙媒体の契約書には本人が作成した証拠として「印鑑証明書」、改ざんを防止するために「契印・割印」などが存在します。
電子契約は上記のようなものはありませんが、以下の一定の条件のもと、書面契約と同様の効力が認められています。
- 押印の代わりに「電子署名」
- 印鑑証明書の代わりに「電子証明書」
- 契印・割印の代わりに「タイムスタンプ」
電子契約システム・サービスは目的・機能別に様々なものが存在しますが、ほぼすべてが上記を標準機能として搭載しています。比較検討の際にわざわざ「対応しているか」を心配する必要はほぼないといって良いでしょう。
(ただし、電子証明書に関しては、事業者の電子証明書はあるものの、契約を行う当事者の電子証明書には対応していないシステムも多くあるので注意が必要です)
関連記事
立会人型であっても真正性の確保は可能
電子契約サービスには以下の2種類があります。
- 当事者型
- 立会人型
この中で立会人型は利用者自身が電子証明書を発行し、電子署名を付与しないため、電子署名法2条で定義されているような本人性を満たさないのでは?と疑問に考える方も多いでしょう。結論、立会人型であっても真正性の確保は可能です。
2020/7に総務省、法務省、経済産業省の3省連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が公表されています。
その中で、立会人型電子契約サービスを利用したとしても真正性を満たすことが可能と記載があることから、一般的に普及している立会人型電子契約サービスも安心してご利用いただけます。
電子契約を導入するメリット・効果
法的に効果をもつ電子契約ですが、導入するメリット・効果はどこにあるのか、以下で解説をします。
契約書1通あたり2,500円程度のコスト削減効果がある
電子契約サービスを導入することで以下のコストメリットを見込めます。
- 印紙税の削減効果
- 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減効果
- 監査コストの削減効果 など
世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書類1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。この事例からも電子契約サービス導入によるコスト削減効果が大きいことがわかるでしょう。
取引のリードタイム短縮効果がある
郵便法が2021/10に改正され、普通郵便の配送日が最短で翌々日となるなど近年おビジネスシーンでは取引のリードタイム長期化が課題となっています。特に海外企業とのやり取りや個人事業主とのNDA締結などの修正が多数発生する契約締結ではより課題が深刻です。
この点、立会人型の電子契約サービスを導入すれば、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで契約締結を完了できるため、取引のリードタイム短縮効果を期待できます。
既存の契約業務を55%程度削減できる効果がある
電子契約サービスには契約書の作成から管理までを効率化する機能が搭載されていますので、既存の契約業務にかかる社内事務工数の削減効果を見込めます。
電子契約サービス事業者が提供する数字の中には、電子契約サービス導入によって契約業務の55%を削減できるといったデータもあるため、工数削減効果は大きいです。
契約業務の工数削減に貢献する機能例として以下がありますので、導入時に確認するとよいでしょう。
- ワークフロー機能
- 電子印鑑機能
- 契約書のテンプレート登録機能
- 一括送信機能
- 顧客別のステータス管理機能 など
税法対応を容易にできる効果がある
電子契約は電子契約サービスを利用せずとも実施可能です。例えば、エクセルなど慣れ親しんだツールを利用することで電子契約を作成することもできます。しかし、エクセルなどのツールを利用して電子契約を作成した場合、税法への対応が難しい場合があるため注意が必要です。
例えば、電子契約を相手方にメールに添付して送付した場合、電子取引に該当しますので電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存が求められます。
電子取引要件ではタイムスタンプの付与や主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)での検索などができる必要がありますが、エクセルなどで作成した電子契約の場合、要件を満たすのが難しい場合が多いです。
この点、電子契約サービスの場合、システム上でタイムスタンプの付与や検索項目の付与ができますので、法対応が容易である点がメリットです。コンプライアンスを重視する場合、電子契約サービスを利用した方が効果的であるといえるでしょう。
また、法人税法上で求められる7年間以上の保存(繰越欠損金がある場合は10年保存)をする場合も、電子契約サービス上で長期署名を付与したうえで長期保存できる場合がありますので、この点もメリットとなります。
セキュリティの強化効果がある
契約書を作成する時、常に契約書の持ち出し、紛失、盗難リスクが付きまといます。書面契約の場合、これらのリスクに対応するとなると契約書保管のためのキャビネットを準備するなど、なかなか手間がかかります。
この点、電子契約サービスを利用することで手間を少なくシステム上でリスクの軽減効果を見込める点にメリットがあります。
- ユーザ別の閲覧制御
- ファイル別の閲覧制御
- ファイル別の閲覧ログ履歴の取得
- IPアドレス制御
- SSO など
契約の更新漏れを防げる効果がある
書面契約を締結した場合、契約の更新漏れに気づけないケースが散見されます。電子契約サービスを利用した場合、システム上で取引先別に契約更新月を管理できますし、システム上から契約更新月が近づくとアラートを出すことができますので、契約の更新漏れを防ぐ効果を期待できる点にもメリットがあります。
導入時のデメリット・注意点
電子契約サービスは導入メリット・効果が大きい一方で、導入時にデメリット、注意点も存在します。
社員リテラシー
電子契約サービスを導入するためには、既存の業務フローを一部変更する必要があるでしょう。紙媒体の契約書に慣れ親しんできた社員は、新しいサービスの導入をよく捉えなかったり、電子契約サービスの活用に慣れるまで時間がかかることが予想されます。
電子契約を導入して効果的に業務効率化を図るためには、社員のITリテラシーや感情を考慮することも重要です。現場の状況を踏まえて、慎重に社内調整と啓蒙を進めましょう。
電子書類と紙媒体書類の混在
法整備が進んで契約書の大半が電子化されましたが、2022年5月以降も電子化が認められていない契約も存在します。
また、契約相手が紙の契約書しか取り扱っていないケースもあるため、自社に合わせて電子契約書を作成・管理してもらうようにするか、あるいは相手に合わせてあえて紙で管理するかを調整しなければなりません。
業務領域や契約相手によっては、すべてを効果的に電子契約に切り替えることが難しく、その場合は電子契約書と紙の契約書が混在するため、管理が煩雑になることが予想されます。
しかし、今後法改正によって電子契約が認められる契約が増える可能性があります。紙の契約書の存在によって電子契約を断念する必要は必ずしもないでしょう。
相手方への説明・承諾が必要になる
電子契約サービスを導入する際、事前に相手方へ電子契約サービス導入の可否を尋ねたうえで承諾をもらう必要があります。
相手方によっては、電子契約の導入効果・メリットがわからない、電子契約の法的有効性に懸念があると導入を断られる場合があります。この場合には、相手方の懸念点に応じてシステムの効果等を説明をする必要がある点に留意ください。
相手方が電子契約サービスの導入メリットを理解していない場合
電子契約サービスの利用は、システムを導入した利用者のみならず相手方にもメリットをもたらします。相手方が得るメリットは以下の通りです。
- 印紙税の削減などのコスト削減効果
- 取引業務のリードタイム短縮効果
- セキュリティの強化効果 など
したがって、双方に導入するメリットがあると説明することが重要です。
相手方が電子契約の法的有効性を懸念している場合
電子契約は上述した通り、法的に有効な上、電子署名を付与することで万が一、係争が起こった場合に証拠として利用ができる点にもメリットがあります。一方で、電子契約が普及してから日が浅いこともあり、電子契約が係争時に証拠として利用された判例は非常に少ないのが実情です。
このような実情を加味して、企業の法務担当者の中には念のために電子契約ではなく、書面契約を求めるケースがあるようです。このような場合には、自社のみ電子契約を作成し、相手方には受領した電子契約を印刷後、記名押印するという手段もあります。
相手方の電子契約に対する懸念を踏まえた上で、柔軟に契約の締結方法をご検討ください。
なりすましや無権代理のリスクがある
電子契約サービスを利用したとしても以下のリスクは依然として残るため、対応が必要です。
- 第三者によるなりすまし署名のリスク
- 無権代理のリスク
第三者によるなりすまし署名のリスク
ID/PWの流出などによって第三者によるなりすまし署名のリスクがあります。このリスクに対して、二要素認証が可能な電子契約サービスを利用するなどして対応する必要があるでしょう。
無権代理のリスク
システム上の二要素認証などによって確かに本人による署名であることが証明できたけれども、そもそもその本人に契約をする権限がないリスク(無権代理のリスク)があります。
このリスクに対して、電子署名を付与する人間の権限をチェックする必要があります。電子署名前に署名者の役職などを確認するのです。とはいえ、どこまでチェックするかによって運用の負荷が変わりますので、企業ごとに調整が必要になります。
まとめ システムを導入して契約業務を効率化しよう!
電子契約サービスを導入することで様々な効果・メリットが得られます。非常に高い効果を得られる一方で導入時には、なりすましや無権代理へのリスク対策が必要など注意点がありますので留意ください。
とはいえ、電子契約サービス導入による効果は大きいので、ぜひ電子契約サービスを導入して契約業務を効率化していきましょう!