電子契約で電子印鑑は実印の代わりになる?電子署名の法的必要性など解説!
電子契約で電子印鑑は実印の代わりになる?電子署名の法的必要性など解説!

電子契約における実印とは 電子署名が果たす役割なども解説!

「電子印鑑とは?」

「電子契約で電子印鑑を実印の代わりに利用できる?」

と疑問に感じていませんか。

電子印鑑に電子署名と同様の機能を持たせれば、書面契約に押印する実印と同様に利用可能です。とはいえ、電子印鑑にはいくつか種類があるため、各タイプの違いを理解して利用する必要がある点に注意ください。

当記事では、そもそも実印とは何か、書面契約で実印が求められる理由、電子契約で実印の代わりになる電子署名、電子契約で電子印鑑が実印の代わりになる理由まで解説します。

目次

そもそも実印とは何か

そもそも実印とは何か

そもそも実印とは何か、認印、ネーム印と比較して解説します。

会社実印は印鑑登録されている印鑑

会社実印とは、会社設立時に法務局に届け出ており、印鑑登録されている印鑑を指します。各企業の実務の中で、特に重要度の高い、例えば以下の文書に対して実印は押印される場合が多いようです。

  • 不動産売買契約
  • 企業買収契約
  • 官公庁の入札届け出書類 など

実印には役職者印、丸印、代表者印など、いくつか呼び方があります。しかし、すべて会社実印を示している点に留意ください。

印鑑登録をしていないのが認印

認印は実印を除くすべての印鑑を指します。つまり、印鑑登録されていない印鑑はすべて認印です。印鑑登録されていないため、実印と比較すると押印されたときの文書の証拠としての信頼性は劣ります。

また、実印で対応するほどではない以下のような公的な色合いが強い手続きで利用されることが多いようです。

  • 役所での申請業務
  • 社内承認業務 など

企業で利用される会社員(角印)もこの認印に分類されます。

公的な書類では使用できないネーム印

朱肉を付けてスタンプのように押印するのがネーム印です。大量生産され、本人性の担保が難しいため、役所での申請業務や契約締結などの重要度が高い業務での利用が認められていません。

したがって、以下のような実印や認印では対応に向かない、重要度の低い業務で利用される場合が多いようです。

  • 宅配の受け取り
  • 社内の確認印 など

シャチハタ印はネーム印にあたりますので、誤っても重要な書類にシャチハタ印を利用しないようにしましょう。

書面契約では実印が押印されることで真正性を証明する

書面契約では実印が押印されることで真正性を証明する

なぜ書面契約では実印の押印が必要とされているのでしょうか。順を追って実印の必要性を解説します。

契約を係争時に証拠として利用するためには真正性の証明が必要

そもそも、契約は民法522条の契約方式の自由によって、どのような形式であっても成立します。したがって、契約の成立を目的とするなら、実印の付与は不要です。

第522条
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

しかし、ここで契約が成立することと、契約を証拠として裁判の証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。

契約書を裁判の証拠として利用するためには、民事訴訟法228条にあるように真正性を証明する必要があります。

228条
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

書面契約では二段の推定によって真正性を証明する

では、書面契約でどのように真正性を証明するかというと、実印を押印することで二段の推定により真正性を証明します。

二段の推定とは以下の2段階の推定を経ることで、押印がされた文書は真正に成立したと推定するものです。

  1. 本人の実印が押印されている
    ⇒経験則より、本人の意思によって実印による押印がされていると推定(一段階目の推定)
  2. 本人の意思によって実印が押印されているのであれば、真正に成立している
    ⇒民事訴訟法228条4項による推定(二段目の推定)

電子契約では電子署名を付与することで真正性を証明する

電子契約では電子署名を付与することで真正性を証明する

では、電子契約ではどのように真正性を証明するのでしょうか。結論、電子契約においては電子署名を付与することで真正性を証明します。以下では電子契約において、電子署名による真正性の証明が可能な理由を解説します。

電子署名とは電子版の印鑑

電子署名とは文字通り、電磁的な署名です。電子署名法2条に定義が記載されています。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

つまり、電子署名法2条を簡略に記載すると以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 本人性(本人の意思によって電子署名を付与したと証明できること)
  • 非改ざん性(電子署名の付与後に改ざんがされていないことを証明できること)

電子契約において電子署名を付与することで真正性の証明が可能

この電子署名を電子契約に付与することで、書面契約における実印のように真正性の証明が可能です。電子署名法3条を参照すると電子契約に電子署名を付与することで真正性を証明可能なことが確認できます。

第三条 
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

したがって、電子署名は電子契約における実印といっても過言ではないでしょう。

電子署名付の電子契約が裁判の証拠として利用された判例がある

実際に電子署名付の電子契約が裁判時に証拠として利用された判例がいくつかあります。例えば以下の判例で電子署名付の電子契約が証拠として利用されています。

  • 東京地裁令和1年7月10日貸金返還等請求事件

ただし、電子署名付の電子契約が証拠として利用された判例は、実印が付与された書面契約と比較するとまだまだ数が少ないため、電子契約の証拠としての信頼性は確定的でないとの見方が大半なようです。

したがって、今後しばらくは電子契約の証拠として利用された判例をチェックしていく必要があります。

立会人型電子契約サービスを利用しても真正性の証明は可能

立会人型電子契約サービスを利用しても真正性の証明は可能

利用する電子契約サービスによって、電子契約への電子署名の付与の仕方に違いがあります。

一般的に利用されることの多い、立会人型を利用すると真正性を証明できないのではないか?と一時期は疑問視されていましたが、省庁からの公表によって、問題なく真正性を証明できることが判明しています。

以下では、立会人型であっても問題なく真正性を証明できる理由を解説します。

電子契約サービスには2タイプある

電子契約サービスには利用者自身が電子証明書を発行する義務があるか否かによって、以下の2タイプがあります。

  • 当事者型電子契約サービス
  • 立会人型電子契約サービス

当事者型とは利用者自身が電子証明書を発行して、電子署名を付与するタイプの電子契約サービスです。実印タイプと呼ばれることもあります。

利用者自身が電子証明書を発行して電子署名を付与するので、立会人型と比較して万が一の係争時の電子契約の証拠としての信頼性が高いとも考えられています。

一方で、立会人型は利用者自身で電子証明書を発行する必要はなく、事業者が利用者に代わってクラウド上で電子署名するタイプの電子契約サービスです。

立会人型電子契約サービスであっても真正性の証明は可能

立会人型電子契約サービスの場合、事業者が利用者に代わって電子署名を付与するので、電子署名法2条に定義されるような本人性を満たしていないのでは?と長年疑問がありました。

しかし、2020/7に総務省・法務省・経済産業省の連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が公表されたことで、疑問が解消されています。

結論、固有性の要件さえ満たせば、立会人型電子契約サービスを利用して電子署名を付与しても真正性を証明可能です。

したがって、一般的に利用されることの多い立会人型電子契約サービスを利用して電子契約を作成しても問題なく、証拠として利用ができます。

電子印鑑とは印影を画像化したもの

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電子署名が付与されていれば、電子契約の真正性を証明可能です。つまり、電子署名情報を付帯した電子印鑑を付与することで、電子印鑑を実印のように利用することができます。

電子印鑑には2タイプある

電子印鑑とは印影をスキャニングして、データ化したものです。大枠以下の2タイプがあります。

  • タイプ①:印影を画像化しただけのもの
  • タイプ②:印影画像に電子署名情報を付帯したもの(実印として利用可能)

タイプ①:印影を画像化しただけのもの

実際の印影をスキャニングして画像化したタイプの電子印鑑です。スキャニングするだけですので、コストを削減して、簡単に利用を開始できる点にメリットがあります。一方で、複製が容易であるので、本人性を証明することは難しいです。

タイプ②:印影画像に電子署名情報を付帯したもの

実際の印影をスキャニングしてデータ化したうえで、押印をした署名者情報やタイムスタンプの時刻情報を付与したタイプの電子印鑑です。

電子署名の要件である、本人性と非改ざん性を満たした情報を電子印鑑に付与すれば、書面契約でいうところの実印として利用することも可能です。

電子印鑑は実務上、なぜ求められるのか

ここまで紹介してきた通り、契約の成立や真正性の証明に対して、法的に電子印鑑の付与は必須ではありません。では、なぜ電子印鑑の付与が求められるかというと、例えば以下の理由が多いようです。

  • 電子印鑑が付与されていることで、契約書を見た時にぱっと見で署名されていることがわかる
  • 電子印鑑が付与されていることで、信頼できる契約書にみえる など

いずれの理由もこれまでの商習慣を維持したいとの背景があり、出ている理由であると予想できます。とはいえ、電子契約を相手方に利用してもらうために、見た目上に印鑑があるだけでも効果があるのであれば、電子印鑑を利用した方がよいです。

電子印鑑を付与するリスク

電子印鑑では、実際の印影画像をスキャニングしてデータ化したものを印鑑として付与しますので、第三者によって簡単にコピーされる懸念があります。

昨今の3Dプリンターの性能であれば、実際の実印印影から印鑑そのものを再現することも可能です。したがって、電子印鑑に対して実印などの悪用されては困る印鑑の利用は避けた方がよいでしょう。

まとめ 電子契約を利用して契約業務を効率化しよう

まとめ 電子契約を利用して契約業務を効率化しよう

識別情報付きの電子印鑑を書面契約における実印のように利用することはできます。

しかし、電子印鑑の付与は法的に必須ではないため、電子印鑑を利用する明確な必要性がなければ、電子署名のみを付与するだけでも、電子契約の真正性は証明可能です。

とはいえ、電子印鑑が付与されていることで安心をする企業が多いことも事実ですので、取引先の反応を見ながら電子印鑑の導入要否をご検討ください。電子印鑑にも対応をした電子契約サービスを利用して、契約業務を効率化していきましょう!

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