電子契約利用時、片方のみ電子署名付与は可能か 対処方法を含めて解説!
電子契約利用時、片方のみ電子署名付与は可能か 対処方法を含めて解説!

電子契約利用時、片方のみ電子署名付与は可能か 対処方法を含めて解説!

「電子契約サービス利用時、片方のみ電子署名を付与することは法的に問題ないか?」

と疑問に感じていませんか。

自社で発行した契約書に対しては電子署名を付与し、相手方は押印をすることで契約書を作成する場合があります。この場合でも双方で真正性を確保できるので法的に問題はありません。

当記事では、片方のみ電子署名を付与可能な法的かつ実務的な理由、片方のみ電子署名を付与する場合の注意点、電子契約の導入に消極的な相手方への対処方法までご紹介します。

目次

片方のみ電子署名付与は実務上可能

片方のみ電子署名付与は実務上可能

自社が発行した電子契約に電子署名を付与して、相手方はその契約書PDFを印刷し、押印をして返送するような業務が実務上、少なからずあります。こういった片方のみが電子署名を付与するやり取りが法的に、また、実務的に問題がないか解説します。

片方のみ電子署名を付与する場合は法律的に問題ない

上述したような片方のみ電子署名を付与する場合とは具体的に以下の流れを取る場合が多いです。

  • 電子契約サービスを利用して自社が電子契約を作成する。
  • 電子署名が付与された電子契約を相手方に提供する。
  • 相手方が提供された電子契約ファイルを2部印刷し、製本、押印をする。
  • 相手方が押印済みの契約書を自社に郵送する。

上記の流れであれば、自社、相手方共に契約書の真正性を満たせるので、契約書は法的に係争時の証拠として利用ができます。

しかし、片方のみ電子署名を付与する流れの契約締結が、実務的に相手方から受け入れられるか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。結論、意外にも片方のみ電子署名を付与するような業務が相手方から受け入れられる場合が非常に多いです。

社内規定上、相手方からの電子署名は問題にならない場合が多い

クラウドサインが公表している以下記事によると片方のみ電子署名を付与するような取引をしている企業は20%にも上るそうです。

事実、筆者の所属する会社ではこのパターンを用いているが、年間で見ると 新規契約全体の約20%がこの方法により締結されたもの である。仮に年間での契約締結件数が1,000件だとすると、200件がこのパターンで締結されたことになる。

この例からもわかる通り、片方のみが電子署名を実施する運用が認められる実務のケースが非常に多いことがわかります。

では、なぜこのような片方のみの電子署名が受け入れられるかというと、「自社における電子署名の取り扱い」については社内規程などが未整備で判断がつかないが、「相手方からの電子署名の取り扱い」については禁止されるような規程の作成予定がないため、受け入れているのが実情のようです。

つまり、電子署名を自社から付与することはまだできないが、相手方から電子署名を付与される分には問題ないと考える企業が多いということでしょう。

片方のみ電子署名を付与する場合の注意点

片方のみ電子署名を付与する場合の注意点

実際に片方のみが電子署名を付与した電子契約を相手方に送付すると、「想像していた契約書と違った。契約書に押印をして再送してほしい」と言われる場合があります。この場合になる理由としては以下の2点があります。

  • 電子署名がよくわからず相手方が受け入れてしまう場合
  • 電子契約がどのようなものか理解していたが、印刷時に合意したことがぱっと見でわかるようにしてほしいと考える場合

理由毎に対象方法を確認します。

電子署名がよくわからず相手方が受け入れてしまう場合

リモートワークの促進によって急速に電子契約が普及したことで、電子署名についての理解がないまま電子契約を利用してしまうケースが多いです。

その結果、電子署名に対する理解や法的意味合いなどがわからないまま、電子署名付の電子契約を相手方が受け取ってしまう場合があります。この場合に、電子契約に対して不安を感じて、書面契約の再送を依頼される場合があるので注意が必要です。

このような場合への対応方法として、片方のみ電子署名を付与する場合の注意点についてまとめた資料を相手方へ送付するとよいです。注意点には以下を記載するようにしてください。

  • 片方のみ電子署名を付与する場合が法的に問題ないことの理由
  • 電子署名が付与された電子契約が本人性が担保され改ざんが不可であること
  • 片方のみが電子署名を付与した契約書を利用する場合の実務の流れ

以上の3点を記載した注意点を送付することで、片方のみ電子署名を付与してもトラブルを避けることができます。

電子契約がどのようなものか理解していたが、印刷時に合意したことがぱっと見でわかるようにしてほしいと考える場合

片方のみの電子署名が付与された電子契約を相手方に送付した場合、相手方がその契約書を印刷したときに、誰によっていつ署名されたのか分からない点に相手方が不安を感じる場合があります。

このような場合への対処方法として、各電子契約サービス事業者から発行される、「だれがいつ何に署名を実施したかを記載した証明書」を相手方に渡すとよいでしょう。このような文書を合意締結証明書と呼んでいる事業者もあるようです。

このような証明書を相手方に渡すことで片方のみ電子署名を付与してもトラブルをさけられるでしょう。

電子契約の利用に消極的な相手方への対処方法

電子契約の利用に消極的な相手方への対処方法

そもそも、相手方が電子契約による契約締結に合意をしてくれれば片方のみの電子署名のようなイレギュラー対応をしなくてもよいです。そこで、電子契約に消極的な相手方への対処方法をご紹介します。

電子契約は法的に効力を説明する

電子契約が法的に有効であるか疑問に感じている相手方が多いです。そこで以下内容を伝えることで電子契約は書面契約と同等に法的に有効である旨を伝えてください。

そもそも、契約は民法522条2項に記載の契約方式の自由により、どのような形式でも成立します。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

したがって、電子契約は法的に有効です。一方で、契約が成立することと、訴訟時に証拠として利用できることは別問題です。訴訟時に証拠として利用するためには、民事訴訟法228条1項にあるように真正性を満たさなければなりません。

文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

この点、電子契約では電子署名を付与することで真正性を確保しています。電子署名を付与することで電子署名法第3条にあるように真正性を確保できるのです。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

以上から、電子契約サービスによって作成された電子契約は法的に有効である上に、係争時に証拠として利用ができるので、書面契約と同等に利用できると考えてよいでしょう。

電子契約を導入することで相手方にもメリットがあると説明する

電子契約サービスを導入して契約を締結することで片方のみならず、双方にメリットがある点を伝えるとよいです。例えば、以下のようなメリットがあります。

  • 書面契約の作成・郵送・管理コスト削減などのコストメリット
  • 取引のリードタイム短縮
  • 法対応の簡易化 など

世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。

この事例のように、相手方も電子契約サービスを導入すれば同様のコスト削減効果を見込むことができるなど、具体的なメリットをお伝えすると利用に前向きになってくれます。

立会人型であれば電子証明書の発行はいらないと説明する

電子契約サービスには以下の2パターンがあります。

  • 当事者型
  • 立会人型

この中で立会人型を導入すれば、自社、相手方共に電子証明書の発行なしで利用ができますので、コストや負担をかけることなく電子契約を利用し始められると説明するとよいです。

また、立会人型電子契約サービスを導入する場合、契約締結用のURLを相手方に送付するのみで契約を締結できますので、取引のリードタイム短縮を期待できる点も伝えるようにしてください。

法対応が容易になると説明する

契約書は税法上の国税関係書類に該当しますので、7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存が必要です。書面契約の場合、キャビネット上で書面を長期保存しなければならないため、管理コストがかさむうえに検索性が低い点にデメリットがあります。

一方で、電子契約であればすでにお持ちのファイルサーバー上などで保管ができますので、低コストかつ検索性を高めることができますので効率的です。

また、電子契約をやりとりすると電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存が必要になりますが、電子契約サービスの中には相手方の電子帳簿保存法対応も実現可能なサービスがありますので、相手方も法対応が可能なサービスを利用している場合にはその旨を伝えると相手方に安心していただけます。

相手方と自社で利用する電子契約が異なる場合の対処方法

相手方と自社で利用する電子契約が異なる場合の対処方法

一方で、相手方と自社いずれも電子契約サービスを導入している場合があります。このような場合の対処方法を解説します。

片方の電子契約サービスを利用する

相手方と自社で取り決めの上、どちらか片方の電子契約サービスを選択して電子契約を締結します。この場合、選択されなかった電子契約サービスに相手方が慣れ親しんでいた場合に、混乱を招く場合があるため注意が必要です。

このような混乱を招かないためにもある程度市場シェアのある製品を使用していると導入がスムーズである場合があります。

それぞれが利用している電子契約サービスで電子署名後、PDFを交換する

双方で利用している電子契約サービス上で電子契約に電子署名を実施し、電子署名を付与済みのPDFを交換する方法があります。

このようにすれば、双方の電子契約サービスを利用して電子契約を作成できますが、自社と相手方の契約書の両方を保存する必要があります。

まとめ 片方のみの電子署名でも契約はできる

まとめ 片方のみの電子署名でも契約はできる

片方のみ電子署名を付与しことでも契約書の作成はできます。とはいえ、双方ともに電子契約サービスを導入した方がお互いにメリットが大きいですので、相手方へ電子契約サービスを導入するメリットを説明するようにしましょう。

相手方としても電子契約サービスを利用することで、コストメリットや取引のリードタイム短縮のメリットがありますので、電子契約サービスの利用がおすすめです。

まずは自社内で電子契約サービスの導入/利用を進めて契約業務の効率化を進めてください!

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