クーリングオフ書面の交付を電子契約化は可能?改正特商法も含めて解説!
クーリングオフ書面の交付を電子契約化は可能?改正特商法も含めて解説!

電子契約でクーリングオフ関連書類を電子化可能?改正特商法を含め解説!

「クーリングオフ書面の交付は電子契約化できないのか?」
「2021/6改正の特定商取引法によるクーリングオフ書面への影響は?」

と疑問に感じていませんか。

2021/6に改正され成立した特定商取引法により、2022/6より契約書などクーリングオフ書面は電子契約化することができるようになります。また、消費者から事業者へのクーリングオフ通知も同様に電子化可能になりますので、対応が必要です。

当記事では、そもそものクーリングオフの概要から、改正特商法の概要、改正特商法で生じる懸念、懸念への対応可能な電子契約サービスまでご紹介します。

目次

そもそもクーリングオフとは

まず、そもそもクーリングオフの概要から解説していきます。

クーリングオフの概要

クーリングオフとは、訪問販売など、特定の取引を対象に事業者による違法や悪質な勧誘から消費者を守ることを目的に設定されている制度です。

すべての取引に対してクーリングオフを定めてしまうと消費者・事業者共に手続きや業務が煩雑になってしまうことから、クーリングオフの対象を絞っています。クーリングオフの対象となる取引は以下の通りです。

スクロールできます
対象取引 説明 クーリングオフ期間
訪問販売 キャッチセールス、アポイントメントセールスなど 8日間
電話勧誘販売 電話経由での販売 8日間
連鎖販売取引 いわゆるマルチ手法。 20日間
特定継続的役務提供 エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス など 8日間
業者提供誘引販売取引 内職商法、モニター商法等 20日間
訪問購入 業者が消費者の自宅等を訪ねて、商品の買い取りを行うもの 8日間

上述の通り、対象取引ごとにクーリングオフの期間が設けられていますので、期間内であれば事業者に対してクーリングオフの意思を示すことで商品の返品ができます。

改正特商法以前は原則書面交付が必要であった

2021/6の特商法改正前までは、条件により契約の内容を明らかにした契約書を消費者に対して、書面で交付する義務がありました。特商法の文面上に明確に書面を交付すると記載があったため、契約書の電子契約化ができない点に課題でした。

2021/6に特定商取引法が改正され、クーリングオフ書面の電子契約化が可能に

2021/6に改正特商法が参議院本会議で可決されたことを受け、2022/6以降、概要書面や契約書面など交付が義務付けられている書面に対して、電子契約など電子交付ができるようになっています。以下では改正特商法の概要について解説します。

2021/6の改正特商法の背景

上述のように改正前の特商法ではクーリングオフ時に事業者に概要書面や契約書を書面で交付するように義務付けていました。

一方、新型コロナウイルスの影響などで急速にリモートワークが推進され、対面での書面交付が難しく、電子契約などが要求されていることもあり、特商法の改正が検討され始めました。結果、2021/6に特商法が改正されるに至っています。

2021/6の改正特商法の対象と電子契約化の条件

上記のような背景があり、事業者は2022/6以降であれば、事業者が消費者に交付が義務付けられている契約書などを、消費者の承諾を事前に受けている場合に、電子契約などの電子交付することができるようになります。

改正特商法により電子契約化が可能になる業務形態と根拠条文は以下の通りです。

業務形態 根拠条文
訪問販売 改正4条2項・3項
通信販売 交付書面の規定自体なし
電話勧誘販売 改正18条2項・3項
連鎖販売契約 改正37条3項・4項
特定継続的役務提供 改正42条4項・5項
業務提供誘引販売取引 改正55条3項・4項
訪問購入 改正58条の7第2項・3項

また、一方で消費者から事業者に向けてメールなどデジタルな手法によりクーリングオフを求める通知をすることも可能になりますので、併せて確認が必要でしょう。

事業者に求められる対応

総務省による「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」によれば、改正特商法に伴うクーリングオフへの対応として以下が記載されています。

事業者においては、それぞれの事業環境等も踏まえ、合理的に可能な範囲で電磁的記録による通知の方法(例えば、電子メール、FAX)に対応していただく必要があります。
したがって、「電子メールでクーリング・オフを行う場合には、以下のアドレスにお送りください。」などと合理的な範囲内でクーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を特定し、それを契約書面等に記載することにより、事業者が確認しやすいクーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を示すことは妨げられるものではありません。
なお、事業者において一方的に通知の方法を不合理なものに限定すること(例えば、電子メールでアポイントを取るような訪問販売においてクーリング・オフを書面のみに限定し、電子メールによる通知を受け付けない場合や、契約締結に際して消費者から事業者に対する連絡手段としてSNSを用いたにもかかわらず当該SNSを用いたクーリング・オフの通知を受け付けない場合等)はクーリング・オフの方法を制限する消費者に不利な特約に該当し、無効となるもの(特定商取引法第9条第8項等)と考えられます。

つまり、事業者は以下の2点の対応を迫られるでしょう。

  • 契約書(電子契約)への電磁的方法によるクーリングオフ通知が可能になったことの明記
  • クーリングオフ通知を受け付けるための窓口の開設や受付体制の整備

「クーリングオフ通知を受け付けるための窓口の開設や受付体制の整備」については、上記のQAにも記載がある通り、「合理的な範囲内でクーリング・オフに係る電磁的記録による通知の方法を特定」することも認められています。

つまり、合理的な理由があれば電磁的な通知をメールなど、事業者が確認しやすい環境を整備できますので、事業者にとって適切な体制整備が求められています。

改正特商法に対する懸念点

改正特商法により、一部対応が必要になるものの事業者側、消費者側の利便性があがります。一方で、一部懸念点がありますので解説します。

消費者から承諾を適法に得る方法

クーリングオフ時に交付が必要な書面の電子化は、事前に消費者の承諾が得ることが前提です。しかし、現状の検討では、この消費者の承諾をいかに得るか?について、明確な記載はありません。

したがって、消費者からの承諾をどのように証跡として残すかが今後の論点になるでしょう。この承諾を得た証跡が残せなければ、消費者が納得しないうちに契約締結をさせられる、高齢者などが不利な契約を結ばされても外部が見つけられないなどのリスクがあると、有識者会議でも指摘がされています。

この懸念に対して、政府規制改革推進会議では以下のような発言も確認できています。

「本人が納得していないものは承諾とは言えず、電磁的な交付をしても書面交付義務を満たしたことにならない。(中略)形ばかりの承諾が悪質事業者に利用されることは絶対に阻止することは必須。」「高齢者に配慮する必要があり、原則書面は維持する。」

つまり、まさにいま消費者からの承諾をいかに得るかについて議論が交わされている最中ですので、今後の議論に注目していく必要がありそうです。

クーリングオフの期間の起算開始日を特定する方法

クーリングオフは各取引ごとに書面を交付してから8日~20日の期間が設定されています。したがって、クーリングオフの交付文書を電子化する場合、電子メールを受領さえすれば期間の起算が開始されてしまうのではないかという議論があります。

この懸念点について、電子メールを開封しなければ起算が開始されないとの認識も出てきていることから、今後の起算日の考え方についても注目していく必要があります。

改正特商法に対応するには電子契約サービスが便利

改正特商法に対応するには電子契約サービスの利用が簡単です。以下では改正特商法への対応を含め、電子契約サービスを利用するメリットをご紹介します。

契約書の文言変更などが容易

上記で紹介した通り、今後、消費者からのクーリングオフ通知をデジタルで受け取る義務が発生するため、受付窓口(メールアドレス)の明記が契約書上などに必要になります。また、今後の特商法についての議論によってはさらに契約書上に記載が必要な文言が増えるかもしれません。

この点、電子契約サービスであればアプリケーション上で簡単に契約書の文言が変更できますので、容易に改正特商法に対応ができます。また電子契約サービスによっては、相手方に送付したメール文書が開封されたかステータスを管理できるものもありますので、この点も魅力的です。

印紙税削減などのコスト削減が見込める

電子契約サービスを導入することで改正特商法のクーリングオフへの対応だけではなく、印紙税削減などのコスト削減効果も見込める点がメリットです。例えば以下のコストメリットを電子契約には見込めるでしょう。

  • 印紙税の削減
  • 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
  • 監査コストの削減 など

実際に、電子契約サービスで世界No1シェアを誇るDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では、契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果を公表しています。

印紙税の削減効果だけでも、電子契約により1通あたり2,000~円見込める場合が多いですので、電子契約を導入したコストを回収するだけのコストメリットは出るのではないでしょうか。

取引のリードタイム短縮を期待できる

郵便法が2021/10に改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日になりました。したがって、取引のリードタイム長期化が懸念されます。特にクーリングオフのあるような取引種別であれば、早期に相手方に契約書の送付が求められますので、課題は深刻です。

この点、電子契約サービスであれば契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するだけで契約を締結できる場合も多いですので、電子契約を導入すれば取引のリードタイム短縮を期待できます。

まとめ 電子契約サービスを導入して業務を効率化しよう!

2022/6以降であればクーリングオフに関連する契約書などを電子契約化するなどしてデジタルで対応ができます。とはいえ、相手方の承諾をいかに得るか、起算日をいつにするかなどいくつか現段階では不明な点がありますので、引き続き国の議論の過程を見守る必要があるでしょう。

クーリングオフで交付が義務付けられている書類のデジタル化に利用するのみならず、電子契約を利用するメリットは印紙税の削減などいくつかあります。この機会にぜひ電子契約の導入をご検討ください。

クーリングオフに対応可能な電子契約サービスを導入して契約業務を効率化していきましょう!

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