電子契約に推定効は働くのか 電子署名法など関連する法律を解説!
電子契約に推定効は働くのか 電子署名法など関連する法律を解説!

電子契約に推定効は働くのか 電子署名法など関連する法律を解説!

「推定効とは?」

「電子契約において推定効は成立するか?」

と疑問に感じていませんか。

契約が成立することと係争時に契約書を利用できることは別問題です。契約方式の自由により口頭などの契約でも成立はしますが、係争時に証拠として利用するためには推定効が成立する必要があります。

当記事では、推定効の意味合いや電子契約における推定効の考え方までご紹介をします。

目次

そもそも推定効とは

そもそも推定効とは

電子契約関連の記事を参照していると「推定効」というキーワードに出くわしますが、そもそも推定効とはなんでしょうか。以下では推定効の考え方をご紹介します。

「みなす」と「推定する」は異なる

そもそも、推定効にも含まれる「推定する」とはどのような意味合いでしょうか。「推定する」と近い言葉として「みなす」という言葉がありますが、この2つの言葉は厳密には法律上、別の意味合いで利用されることが多いですので注意が必要です。

「みなす」とは例えば「AとBは違うものであるが、条件を満たした場合に同一として扱う」という意味合いで利用される場合が多いようです。

一方で「推定する」とは例えば「AとBは法律上、同一のものであるとしておき、これを覆すような証拠が出てこない限りはそのように扱う」という意味合いで利用されます。

押印による効力は推定する

書面契約においては、「推定する」という言葉を利用して真正に成立する、つまり、推定効が成り立つとしています。書面契約では民法228条4項に以下の記載がある通り、押印を付すと真正に契約が成立したと推定される(推定効が働く)ことになっています。

4 . 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。

つまり、書面上に押印が付与されていれば、その書類ははんこの持ち主の意思によって契約が締結されたと判断ができる(推定効が働く)ので、民事訴訟法で定めるような裁判の証拠として利用できるようになるのです。

この「真正に成立したものと推定する」という箇所を一般的に推定効と呼んでいます。

電子契約においても推定効は成立する

電子契約においても推定効は成立する

では、電子契約において推定効は成立し、契約は法的に有効なのでしょうか。以下では電子契約の法的有効性と推定効の考え方について解説をします。

そもそも、契約はいかなる形式でも成立する。推定効とは別問題

契約は民法522条2項に記載の契約方式の自由によりいかなる形式でも成立します。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

つまり、口頭など証跡を残さない形式であっても契約は成立します。同様の理由で電子契約も有効に成立するのです。ただし、契約が成立することと、万が一、係争があった時に証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。

係争時に証拠として利用するためには民事訴訟法228条1項にあるように契約が真正に成立していると推定される(推定効が働く)必要があります。

文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

電子契約では電子署名を付与することで推定効が働く

書面契約においては上述したとおり、押印することで推定効が働きます。一方で電子契約では電子署名法3条にあるように電子署名を付与することで推定効が働きます。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

この電子署名とは電子署名法2条にあるような要件を満たした電磁的な署名を指しています。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

つまり、以下の要件を満たした電子署名を付与する必要があります。

  • 電子署名が本人の意思によって署名されたことが証明できること(本人性)
  • 電子署名後に改ざんされていないことが証明できること(非改ざん性)

以上のように電子署名法2条の要件を満たした電子署名を電子契約に付与すれば、書面契約と同様に推定効が働くのです。

立会人型であっても推定効は成立する

ここで「立会人型の電子契約サービスの場合、電子署名法2条で求められているような本人性を厳密には担保ができないのでは?」と疑問に思う方も多いかと思います。

この疑問に対して回答するために、まず、前提を整理すると、電子契約サービスには利用者自身が電子証明書を発行するか否かにより以下の2タイプに分かれます。

  • 立会人型
  • 当事者型

この中で立会人型において、利用者自身は電子証明書を発行せず、電子契約サービス事業者が代理で電子署名を付与するタイプの電子契約です。

立会人型を利用する場合、事業者が代理で電子署名を付与するので、確かに電子署名法2条で規定されているような本人性を担保するのは難しいようにも見えます。

この疑問に対する回答として、2020/9に総務省、法務省、経済産業省3省により「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」が公表されています。

この中で、固有性が満たされる場合には立会人型であっても電子署名法3条の推定効が成立すると記載されています。

Q2.サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による暗号化等を行う電子契約サービスは、電子署名法第3条との関係では、どのように位置付けられるのか。

(省略)

以上の次第で、あるサービスが電子署名法第3条に規定する電子署名に該当するか否かは、個別の事案における具体的な事情を踏まえた裁判所の判断に委ねられるべき事柄ではあるものの、一般論として、上記サービスは、①及び②のプロセスのいずれについても十分な水準の固有性が満たされていると認められる場合には、電子署名法第3条の電子署名に該当するものと認められることとなるものと考えられる。したがって、同条に規定する電子署名が本人すなわち電子文書の作成名義人の意思に基づき行われたと認められる場合には、電子署名法第3条の規定により、当該電子文書は真正に成立したものと推定されることとなると考えられる。

政府が示す固有性の要件とは

上述で立会人型の電子契約サービスを利用して電子契約を作成する場合には、固有性の要件を満たす必要があると記載しました。では、固有性の要件とは何かというと、以下3つの要件を指しています。

  • 利用者の認証プロセスについて十分な固有性が満たされていること
  • サービス提供事業者内部の認証プロセスについて十分な固有性が満たされていること
  • 電子契約サービスの利用者(署名者)の身元確認がなされること

利用者の認証プロセスについて十分な固有性が満たされていること

利用者自身の意思によって契約を締結したことを証明するために、契約者の認証プロセス上で二要素認証など厳密な本人確認を実施する場合には、十分な固有性があると認証できます。

サービス提供事業者内部の認証プロセスについて十分な固有性が満たされていること

認証プロセスにおいて、サービス提供事業者が契約者ごとの暗号の強度強化する仕組みを用意し、作成された電子契約が本人によって作成されたものであると認証できる場合には固有性を満たせられるとされています。

電子契約サービスの利用者(署名者)の身元確認がなされること

電子文書の作成者の意思で電子署名が付与され契約が締結されていることを確認する必要があるため、電子契約サービス利用者と電子契約作成者の同一性を確認する必要があります。

そこで、事業者に対して電子契約サービス利用者の身元確認をするように求めています。身元確認の具体的な方法は明記されていないものの、契約の金額や重要度に応じて身元確認方法を決めるように記載があります。

電子契約サービスを導入するメリット

電子契約サービスを導入するメリット

上述のように電子契約は電子署名を付与することで推定効が成立しますので、書面契約と同様に利用ができます。書面契約と同様に推定効が成立するのであれば電子契約の活用がおすすめです。

以下では電子契約サービスを利用して電子契約を利用するメリットをご紹介します。

1通あたり2,500円のコスト削減効果を出せる場合がある

電子契約サービスを利用することで以下のコスト削減を期待できます。

  • 印紙税の削減
  • 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
  • 監査コストの削減 など

世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。この事例からもわかる通り、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は大きいです。

2週間かかっていた契約業務を即日可能になる場合がある

郵便法が2021/10に改正され普通郵便の最短配送日が翌々日になりました。したがって、取引のリードタイム長期化が懸念されます。

この点、立会人型の電子契約サービスを利用すれば契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみでクラウド上で契約締結を完了できますので、取引のリードタイム短縮を期待できます。

国内導入数No1の電子印鑑GMOサインを導入した某アパレル会社ではそれまで2週間かかっていた契約業務を1日に完了できたと公表しています。

まとめ 契約業務を効率化しよう!

まとめ 契約業務を効率化しよう!

電子契約は電子署名を付与することで推定効が働きます。また、世間で選定されることが多い立会人型電子契約サービスにおいても固有性の要件さえ満たせば推定効が働きますので安心してご利用ください。

推定効が働き書面契約と同様に利用ができる電子契約ですが、電子契約サービスを利用することでメリットを最大化できます。電子契約サービスを導入して契約業務を効率化していきましょう!

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