変更契約を電子契約化する場合のポイントは?覚書作成の方法を含めて解説
変更契約を電子契約化する場合のポイントは?覚書作成の方法を含めて解説

変更契約を電子契約化する場合のポイントは?覚書作成の方法を含めて解説

「電子契約上の文言を変更する場合の注意点は?」

と疑問に感じていませんか。

電子契約は電子署名付与後、契約書上の文言を変更することができません。したがって、文言を変更する場合には覚書(変更契約)を作成する必要があります。覚書(変更契約)も電子契約化が可能ですので、文言変更の際には電子契約を活用しましょう。

当記事では、電子契約上の文言変更が難しい理由、文言変更する際に作成する覚書(変更契約)作成のポイント、電子契約化可能な他契約書の種類までご紹介します。

目次

電子契約では契約書上の文言変更はできない

電子契約では契約書上の文言変更はできない

電子契約を利用する場合、契約締結後に契約書上の文言を変更するのは難しいです。以下では変更が難しい理由を説明します。

書面契約では二重線や訂正印によって対応していた

書面契約では、契約書上に訂正箇所が発生した場合に該当箇所に二重線を引き、訂正印を付与する方法が一般的です。

より丁寧に訂正するとすれば、該当箇所に付近に「〇〇文字削除、〇〇文字追加」と書く場合や、訂正箇所に対して別途覚書(変更契約)を作成する場合が多いでしょう。

電子契約では文中の文言変更や契約の破棄は難しい

一方で、電子契約を利用する場合、電子契約書上の文言に二重線を引いたり、訂正印を付与して該当箇所を訂正するのは難しいです。

なぜなら、電子契約は真正性を確保するために電子署名が付与されていますが、この状態でPDFファイルデータ自体に訂正を加えてしまうと、電子署名の仕組み上、電子署名が保証する真正性を維持することができなくなるからです。

つまり、電子契約は一度契約を締結して電子署名を付与してしまえば、契約書上の文言訂正や契約の破棄が一切できません。

変更するなら覚書(変更契約)の作成が必要

では、電子契約において、どのように文言の変更を実施するかというと、覚書(変更契約)を作成することによって対応をします。覚書とは一般的には何かを忘れないようにするためのメモ書きですとか、備忘録を指し示す意味合いである場合が多いようです。

しかし、契約業務の文脈では、簡易な契約書を指しますので、電子契約書上に変更がある場合には覚書(変更契約)を作成し、契約書上のどこに訂正箇所があるのか、相手方と再度契約書の締結をするようにしてください。

契約を破棄するなら契約破棄の旨の覚書(変更契約)の作成が必要

契約期間中に契約を破棄する場合、書面契約であれば該当する契約書を物理的に廃棄してすませることができます。

しかし、電子契約の場合、契約書を物理的に廃棄することができません。なぜなら、電子契約の場合、片方の当事者が契約書を破棄(対象ファイルを削除)したとしても、もう一方の当事者がファイルのコピーを保存している可能性があるからです。

したがって、電子契約を利用しているときに契約を破棄する場合には、該当する契約を破棄する旨で覚書(変更契約)を作成し、契約当事者双方で電子署名をする必要があります。

覚書(変更契約)の作成ポイント

覚書(変更契約)の作成ポイント

電子契約を訂正する際に作成する覚書(変更契約)のポイントを解説します。

電子契約における覚書の作り方

電子契約を訂正する場合に利用する覚書(変更契約)を作成する際、以下のような構成にするとよいと考えられる一例を紹介します。以下を覚書(変更契約)上に含む構成にするとよいです。

  • 表題
  • 前文
  • 本文
  • 有効期限
  • 後文
  • 覚書の作成日
  • 当事者名
  • 作成後の取り扱い

表題

契約書の表題は以下いずれかで表現するとよいです。

  • 覚書
  • 〇〇に関する覚書
  • 変更契約書 など

前文

具体的にどの契約書のどの個所に対する覚書(変更契約)であるのか記載します。例えば、「令和〇年〇月〇日締結の〇〇契約書の第〇条」と覚書(変更契約)に対して具体的に記載をしてください。

本文

双方の契約当事者で合意した契約の変更内容を記載します。契約書上のすべてを変更するのか、廃棄するのか、一部分だけを変更するのか覚書(変更契約)上に記載してください。

有効期限

覚書(変更契約)に有効期限を設ける場合、記載をしてください。

後文

電子契約を利用して覚書(変更契約)を作成する場合、以下のように電子契約特有の言い回しで末尾後文を記載ください。

本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、○○○および●●●が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。

電子契約では書面契約と異なり、作成通数の記載は不要です。なぜなら、電子契約では最初に作成した契約書(原本)を元に完全に一致し、かつ、改ざんが不能なファイルを無数に作成できるからです。

また、契約締結の方法は電子署名ですので、書面契約のように記名押印と記載しないように注意してください。なぜなら、仮に記名押印と記載してしまうと、契約書上に記名押印がないことを理由に契約の無効を主張される場合も想定されるからです。

覚書の作成日

覚書(変更契約)を作成した日付を記載してください。ただし、タイムスタンプを付与している場合、作成日を記載しないでもよいとも考えられる場合があります。

なぜなら、タイムスタンプであれば年月日分秒まで正確に記録されるため、契約双方の当事者がいつ契約締結したか確認できるからです。

しかし、タイムスタンプの付与日がすなわち実際の契約締結日とも限られませんので、覚書(変更契約)の作成日の記入は必要であるとの主張も散見されます。安全策を取るのであれば、覚書(変更契約)を作成した日付を記載しておくとよいでしょう。

作成後の取り扱い

覚書(変更契約)は作成後、元となる契約と紐づけて保管してください。覚書(変更契約)と元となる契約が紐づいていなければ、変更内容を確認できません。

また、電子契約は電子とはいえ、契約書ですので、各種税法に基づいた保存が必要な点に注意ください。例えば、電子帳簿保存法、法人税法に基づいた保存・管理が必要です。

電子帳簿保存法など、各種税法に基づいて法的要件を満たした状態で保存をしていない旨が国税調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどリスクがありますので必ず要件を満たして保存をしましょう。

電子契約で作成した覚書は印紙税非課税

書面契約の場合、覚書(変更契約)に記載されている内容によっては印紙税の課税対象(第二号文書)です。

収入印紙を添付する必要のある課税文書は印紙税法上に記載の1号から20号に分けられる20種類があります。

この中に、明確に覚書(変更契約)と記載があるわけではありませんが、そもそも印紙税の課税対象である課税文書であるかどうかは契約内容により決定するため、覚書(変更契約)が課税対象となる可能性があるのです。

一方で、電子契約を利用して覚書(変更契約)を作成した場合、印紙税は非課税です。なぜなら、課税文書とは”紙”を対象としているため、電子ファイルである電子契約は課税文書ではないと判断されるからです。

覚書(変更契約)に記載の契約金額によっては、印紙税の課税額は大きくなります。コスト削減から考えれば、電子契約を利用して覚書(変更契約)を作成したほうがよいでしょう。

覚書(変更契約)に限らず、あらゆる契約の電子化が可能

覚書(変更契約)に限らず、あらゆる契約の電子化が可能

覚書(変更契約)に限らず、ほぼすべての契約書を電子化することができます。したがって、覚書(変更契約)に限らず契約書の電子契約化を進めていくと契約業務の効率化につながるのです。

2022/5より、ほぼすべての契約書を電子化することができる

2021/9に施行されたデジタル改革関連法で、その中の取り組みの1つである「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で「押印・書面の交付等を求める手続きの見直し」が実施されました。

この法律により、2022/5には改正宅建業法が施行され、これまで電子契約化をすることができなかった大部分の契約書を電子契約化が法律上で認められています。

したがって、覚書(変更契約)を含む、あらゆる契約の電子契約化が進めやすくなっているといえるでしょう。

一部の契約書では引き続き書面契約での締結が必要

一方で、一部の契約書は未だに法律上で書面契約による締結を義務付けていますので、注意が必要です。逆に言えば、一部の電子契約化できない契約種別を押さえておけば、電子契約の活用の幅が広げることができますので、この機会に抑えておきましょう。

電子契約化ができない契約書を以下の通りです。

文書名 根拠法令 改正法施行予定
事業用定期借地契約 借地借家法23条
企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 企業担保法3条
任意後見契約書 任意後見契約に関する法律3条
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 2023年6月

電子契約サービス導入のメリット

電子契約サービス導入のメリット

覚書(変更契約)を含む契約書の電子契約化をすることで多数のメリットがあります。電子契約のメリットを最大化可能な電子契約サービスを導入した場合のメリットは以下の通りです。

契約書1通あたり2,500円のコスト削減をすることができる場合がある

電子契約サービスを導入することで以下のコスト削減効果を期待することができます。

  • 印紙税の削減
  • 書面契約の作成・郵送・保存コストの削減
  • 監査コストの削減 など

世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。この事例からもわかるとおり、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は大きいといえるでしょう。

契約締結のリードタイムを最短で1日に短縮することができる場合がある

書面契約の場合、契約書の作成から相手方の記名押印付き契約書の返送までで、2-3週間かかる場合も珍しくありません。

一方で立会人型の電子契約サービスを導入した場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで契約締結を完了することができますので、契約業務のリードタイムを最短で1日に短縮することができます。

まとめ 電子契約訂正時には覚書(変更契約)を作成しよう

まとめ 電子契約訂正時には覚書(変更契約)を作成しよう

電子契約書上の文言を訂正する場合、覚書(変更契約)の作成が必要です。

電子契約の覚書(変更契約)は書面契約とは、契約の締結方法や真正性の確保方法が異なるため、契約書上の文言に相違があります。したがって、電子契約を導入する場合には、電子契約用に契約書上の文言を変更する必要がある点に留意ください。

とはいえ、電子契約を導入することによるメリットは大きいです。ぜひ前向きに電子契約の導入をご検討ください。

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