二段の推定は電子契約の電子署名でも有効?法律や判例など根拠を示して解説
二段の推定は電子契約の電子署名でも有効?法律や判例など根拠を示して解説

電子契約において二段の推定は成立する?関連法や判例を混ぜて解説!

「二段の推定とは?」
「二段の推定は電子契約でも有効?」

と疑問に感じていませんか。

二段の推定とは、書面契約の真正性確保の根拠となっている考え方です。二段の推定は電子契約においても成り立つと考えられるものの、実際に判例として真正性が成り立つと出たケースがないため、注意が必要です。

当記事では、二段の推定の考え方、電子契約における二段の推定の考え方、電子契約の導入がおすすめの理由までご紹介します。

目次

二段の推定とは?

まず、二段の推定の考え方について解説します。

二段の推定の概要

二段の推定とは契約の真正性、つまり、訴訟時の証拠となりうるかを判断する際の考え方です。二段の推定は主に民事訴訟法の分野で使用されます。

二段の推定は以下の二段階を通じて、当該の契約が本人の意思に作成され、本人の同意した契約書であると証明します。

段階 推定内容 根拠
1段階目 一般的に自分の印鑑は自分のみが利用可能 経験則
2段階目 本人の印鑑が捺印された契約書は本人の意思により捺印されたと判断可能で、真正に成立する 民事訴訟法第228条4項

二段の推定が必要な理由

そもそも、契約は民法522条によりいかなる形式でも成立します。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

つまり、口頭など目に見えない形でも契約は成立するのです。しかし、口頭などで成立した契約は、裁判になった場合に証拠力を疑われかねません。そこで、多くの場合で契約書が残されています。

契約書を証拠とする場合、その契約書が本人の意思によって締結されたものなのか、判断が難しいことがあります。そこで利用されるのが二段の推定です。

二段の推定により、本人の印鑑が付与されていれば真正に成立したと考えられることができます。したがって、二段の推定は契約書の証拠力証明を手間やコストかけることが出来る点で重宝されます。

二段の推定の法的効力を証明する裁判の判例

二段の推定により、真正性が確保できる証拠が最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁を参照すると確認することができます。

文書中の印影が本人または代理人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴326条にいう「本人又は其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ」の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなる

以上から、書面契約においては二段の推定により、本人の印鑑が付与されてさえいれば真正性が確保できることがわかります。

電子契約でも二段の推定ってなりたつ?

ここまで紹介してきた二段の推定は書面契約においての話です。ここからは二段の推定が電子契約においても成立するか解説していきます。

電子契約における判例はないため、明確にいえない

まず、結論からいうと電子契約において二段の推定が成り立つか、関連する判決が出たことがないため正確に回答できません。しかし、二段の推定の考え方からすると、電子署名法3条などを考慮することで、電子契約において二段の推定が成立すると予想ができます。

電子契約で二段の推定が成立しえる

電子契約における二段の推定の考え方は以下の通りです。

段階 推定内容 根拠
1段階目 本人の公開鍵による電子署名は、電子証明書による本人性の証明やPIN入力など本人しかしらない情報を入力するため、本人による署名と推定できる 経験則
2段階目 本人の意思によって付与された電子署名は真正に成立したと推定できる 電子署名法3条

上記で1段目の推定が、書面契約における印鑑付与の代わりをしています。書面契約と同様に、本人の意思によって付与される署名は電子署名法第3条によって真正に成立するといえるので、電子契約においても二段の推定は成立することができます。

そもそも電子契約で証拠としての真正性が疑われる場合は少ない

二段の推定が電子契約に適用できるのかわからないのであれば、トラブルに発展する可能性があるのでは?と考える方もいるかと思います。しかし、現実的に考えると、二段の推定の有効性にあまり関係なく、電子契約はある程度信用して利用してよいと考えています。

理由は2つです。まず、上述した通り、おそらく二段の推定が成立すると予想されること。もう1点が、電子契約において真正性が疑われる場合がそもそも少ないと考えられることがあります。

多くのユーザが利用する事業者署名型電子契約の場合、複雑かつ長大な契約締結専用のユニークURLを発行するため、本人以外に電子署名を付与することが難しくなっています。したがって、そもそも、電子契約で真正性が疑われることは少ないと考えられるのです。

電子契約の導入がおすすめな理由

二段の推定が成立しない可能性は限りなく低いと予想される中で、導入メリットの大きい電子契約サービスの導入がおすすめです。以下では導入メリットをご紹介します。

ハンコ業務や印紙税などコストの削減を期待できる

電子契約サービスを利用することで以下のコスト削減効果が期待できます。

  • 印紙税の削減効果
  • 書面契約の作成、郵送、管理コストの削減
  • 監査コストの削減 など

世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では、1通あたり2,500円のコスト削減効果を公表しています。この事例からもわかる通り、電子契約サービス導入による、コスト削減効果は非常に大きいです。

取り扱う契約書量が多いほどコスト削減効果は大きくなりますので、自社の契約書量を顧みたうえでコスト削減効果を試算ください。

取引のリードタイム短縮が可能

郵便法が2021/10に改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日になりました。したがって、取引のリードタイム長期化が懸念されます。特に海外企業との取引や、NDAなど多数回の修正があるような契約書を扱う取引の場合は、さらに長期化が課題となるでしょう。

この点、多くの電子契約サービスであれば契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで、契約締結が完了できますので取引のリードタイム短縮を期待できます。

簡単に法対応できる

電子契約は電子契約サービスを利用しなくても、発行ができますが、その場合に問題になるのが法対応です。電子契約は電子とはいえ、税法上の国税関係書類に該当しますので、各種税法の要件を満たした保存が必要です。

例えば、法人税法に基づいた7年以上の保存、電子帳簿保存法に基づいた真実性、検索性の確保などがあるでしょう。電子帳簿保存法などは、要件を満たして保存をせず、国税調査時に指摘を受けた場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので注意が必要です。

これらの法対応をするのに、電子契約サービスは適しています。電子契約サービスであれば、タイムスタンプ付与による真実性の確保やファイルへの属性情報付与による検索性確保などを実施できるからです。

電子契約導入時の注意点

メリットの大きい電子契約サービスですが、一部導入時に注意が必要なポイントがあります。

全ての契約書の原本を電子化できるわけではない

書面契約の一部では原本の電子化を認めていない場合がありますので、留意が必要です。例えば、不動産業界では、対面での説明が必須との理由で原本の電子化を認めていない契約書があります。

これから電子化しようと考える契約書の原本を電子化可能であるか確認するようにしてください。他、例えば以下のような契約書の原本は電子化できません。

文書名 根拠法令
不動産売買・交換の媒介契約書 宅建業法34条2
定期借地契約書 借地借家法22条
事業用定期借地契約 借地借家法23条
取壊予定建物の賃貸借契約における取壊事由書面 借地借家法39条2項
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条

また、原本の電子化が認められていないだけであって、複製の電子化は認められています。したがって、原本は書面で保存をしておき、複製を電子化することで検索性の向上などを期待することができるでしょう。

電子契約は電子署名の付与の仕方により2タイプある

電子契約サービスは電子署名の付与の仕方により以下の2タイプがあります。

  • 立会人型
  • 当事者型

立会人型は利用者に代わって事業者が電子署名を付与するため、利用者は電子証明書を発行しなくてよい特徴があります。したがって、コストと手間をかけずに利用することができる点にメリットがあります。

一方で当事者型は利用者自身が電子証明書を発行し、電子署名を付与するため、万が一、係争があった場合に立会人型と比較して証拠の信頼性が高いと見込まれています。とはいえ、一般的に多くの利用者が手軽さを求めて立会人型を利用しているのが実情のようです。

契約書の文言やフォーマットを変更する必要がある

書面契約を電子契約に変更することで、契約書上の文言やフォーマットを変更する必要があります。契約書上で”書面”と記載がある個所は、電子契約を指し示す文言に修正する必要があります。

修正前:書面契約書の記載文言 修正後:電子契約書の記載文言
記載文言 甲と乙は、本契約成立の証として、本書2通を作成し、両者記名押印のうえ、各自1通を保有するものとする。 甲と乙は、本契約の成立を証として、本電子契約書ファイルを作成し、それぞれ電子署名を行う。なお、本契約においては、電子データである本電子契約書ファイルを原本とし、同ファイルを印刷した文書はその写しとする。

その他、印鑑付与の代わりに電子署名をつかうなど、電子契約を利用することで、書面固有の文言を変更する点がありますので修正をしましょう。

まとめ システムを利用して契約業務を効率化しよう!

二段の推定により書面契約は真正性が確保されます。電子契約において二段の推定が成立するとは、過去に判例が出たことがないので明確には言えませんが、おそらく成立すると予想されます。

また、電子契約サービスを利用することによるメリットはコスト削減効果など明確です。したがって、二段の推定が明確に成立するとは言えないからといって、電子契約サービスの導入を検討しない理由にはならないです。

二段の推定がなぜ電子契約においても成立すると考えられるのか、二段の推定の論理を正しく理解したうえで、電子契約サービスの導入をぜひご検討ください。

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