「2022年1月に改正された電子帳簿保存法による個人事業主への影響は?」
「改正により個人事業主に求められる申請などの対応が知りたい」
と疑問に感じていませんか。
電子帳簿保存法は法人/個人関係なく帳簿や書類を電子的に保存する場合には適用される法律です。したがって、個人事業主であっても電子的に帳票をやり取りする場合には帳票を電子保存する義務があります。
当記事では、2022年1月に改正された電子帳簿保存法の概要、具体的な個人事業主への影響、個人事業主の2023年10月に施行予定のインボイス制度を見据えた対応方針までをご紹介します。
2022年1月に改正された電子帳簿保存法とは
2022年1月に電子帳簿保存法が改正されたことで、世間の注目を集めました。では、なぜ世間の注目を集める結果になったのか順を追って解説します。
電子帳簿保存とは
電子帳簿保存法とは、電子的に帳簿や書類を保存してもよいと法的に認めた法律です。電子帳簿保存法は1998年に施行されて以降、実務上の要件に合わせて改正がされてきた経緯があります。
保存対象となる以下の対象ごとに保存要件が分かれている点が電子帳簿保存法の特徴です。
- 国税関係帳簿(帳簿保存の区分)
- 国税関係書類(書類保存の区分)
- 書面の電子化(スキャナ保存の区分)
- 電子取引した文書の電子保存(電子取引保存の区分)
また、電子帳簿保存法は2022年1月には上述のすべての要件で改正が実施されています。結果、電子帳簿保存法全体で要件緩和が実施されているのです。
電子取引要件における電子データ保存の義務化とは?
所轄税務署長への申請書提出が廃止になるなど、電子帳簿保存法全体で要件緩和が目立った一方で、電子帳簿保存法 電子取引保存の区分では紙保存措置の廃止が実施されています。
そもそも、改正以前の2021年12月までも、法人/個人事業主問わず、基本的には電子取引した文書は電子保存することが義務化されていました。
しかし、電子取引をした文書であっても、書面出力すれば、要件を満たして保存しているとみなされていたのです。
これを電子帳簿保存法では、紙保存措置と呼んでいました。この紙保存措置が2022年1月以降には改正により廃止されます。したがって、電子取引した文書は電子取引保存の区分要件にしたがって保存をする必要が出てきているのです。
とはいえ、2021年12月の時点で紙保存措置廃止に対応が可能な企業が少ないと想定されたことから、紙保存措置廃止について2年間の宥恕(ゆうじょ)措置が公表されています。
したがって、法人/個人事業主問わず、2023年12月まではこれまでどおり、電子取引した文書であっても書面出力して保存をしておけば、税務上は問題ありません。
要件を満たさずに保存していた場合、ペナルティはある?
電子帳簿保存法 電子取引要件で電子取引した文書は電子保存が義務化されましたが、もし保存要件を満たさない方法で保存をしていた場合、ペナルティはあるのでしょうか。
結論、青色申告の承認取り消しや当該書類の仕入れ税額控除が認められないなどのペナルティが電子帳簿保存法上では想定されています。
青色申告の承認取り消しになると、企業のレピュテーションを損なう経営リスクがありますので、確実な対応が求められています。
また、個人事業主としても青色特別控除が受けられなくなりますので、指摘を受けないような方法で保存をしていく必要があるのです。
2024年1月以降の宥恕措置はどうなる?
ここで気になるのが2024年1月以降の電子帳簿保存法 電子取引要件の対応方針です。結論、2023年12月に宥恕措置は廃止され、2024年1月からは新たに猶予措置が設けられます。
猶予措置とは以下要件を満たせば、企業/個人事業主問わず、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たして保存しているとみなす措置です。
- 保存要件を満たして保存ができなかった相当の理由がある
- 電磁的ダウンロードの求めに応じることができる
- 電磁的記録の出力書面の提示、または、提出ができる
猶予措置があるからといって、電子帳簿保存法 電子取引要件対応が不要になるわけではない点に注意が必要です。
なぜなら、相当な理由があるとする理由が、現状の電子帳簿保存法上で不明確であるため、自社が相当な理由があるとして所轄の税務署に申請したとしても許可されるとは限らないからです。
確実な対応をするのであれば、電子帳簿保存法対応を進めるのがよいでしょう。
個人事業主への影響
電子帳簿保存法の改正によって、企業にあたえる影響が大きいことがわかりました。では、個人事業主への影響はどうでしょうか。
個人事業主も各種要件に基づいた保存が求められる
個人事業主に対しても電子帳簿保存法の要件は適用されます。したがって、例えば、受注先に請求書を電子送付した場合には電子帳簿保存法 電子取引要件を満たした方法で保存が求められるのです。
一方で、個人事業主向けに電子帳簿保存法では要件を緩和した措置が設けられています。個人事業主は緩和された要件を把握した上で対応方針の策定が求められているのです。
個人事業主が電子帳簿保存法 電子取引要件対応を検討するうえで、論点となるのは以下の要件をどのようなやり方で満たして、電子ファイルを保存するかになります。
- 真実性の要件
- 可視性の要件
個人事業主が満たすべき真実性の要件
個人事業主は、以下いずれかの方法で真実性(改ざんがされていないことの証明)を満たす必要があります。
- タイムスタンプ付きのファイルを受領する or タイムスタンプを付与する
- 訂正削除ができないシステム上に保存する or 訂正削除履歴が考慮されたシステム上で保存する
- 訂正削除に関する事務処理規定を作成する
最も簡単に対応ができる方法はタイムスタンプを付与する方法です。電子契約サービスなどの専用ツールを利用していれば、タイムスタンプの付与は簡単ですが、個人事業主には少しハードルが高いでしょう。
したがって、個人事業主の場合、現実的には訂正削除に関する事務処理規定を作成して対応する方法が最もよいです。事務処理規定のサンプルは国税庁のHP上からダウンロードできますので、ご利用ください。
個人事業主が満たすべき可視性の要件
そもそも、判定期間に係る基準期間(通常は2年前)における売上高が1000万円以下の個人事業主、かつ、国税調査時に税務官からのダウンロードの求めに応じられるのであれば、取引先名や各月など任意のフォルダに格納して文書を格納しておけば問題ありません。
もし、個人事業主で売上高が1000万円以上の場合には以下項目について検索ができる必要があります。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
上記について検索ができるために個人事業主の場合、以下手段を選ばれる方が多いようです。
- 「20221031_㈱国税商事_110000」のようにファイルに特定の命名規則で名称を付ける
- Excelなどで索引簿を作成して、請求書などのデータを検索できるようにする。
個人事業主として働く中で実現可能な手段をご検討ください。
個人事業主であっても帳票の長期保存が必要
帳票の長期保存の義務は法人だけでなく、個人事業主であっても必要です。ただし、白色申告/青色申告のいずれを申告しているかにより、保存年限が変わる点に注意ください。青色申告をすると保存年限が長い点が特徴的です。
白色申告の場合
白色申告の個人事業主、かつ、不動産所得、事業所得、山林所得がある場合、以下の帳簿・帳票を保存する義務があります。
保存対象 | 保存年数 |
---|---|
収入金額や必要経費を記載した帳簿 | 7年 |
上記以外の帳簿 | 5年 |
決算関係書類 | 5年 |
帳票各種 | 5年 |
青色申告の場合
青色申告の個人事業主の場合の保存年数は以下の通りです。個人事業主とはいえ、法人並みに長期間文書を保存します。
保存対象 | 保存年数 |
---|---|
仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿 | 7年 |
損益計算書などの決算関係書類 | 7年 |
領収書などの現金預金取引等関係書類 | 7年 |
上記以外の帳票 | 5年 |
書面を電子化する場合はスキャナ保存対応が必要
個人事業主の方の中には書面で受領した領収書などを電子化して保存することをご検討している方も多いかと思います。
個人事業主が書面を電子化する際には、上述で紹介した電子帳簿保存法 電子取引要件ではなく、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件を満たして保存をする必要がある点に注意が必要です。
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件についても、個人事業主が保存要件を満たさずに保存をしていた場合、青色申告の承認のリスクがありますので、確実な対応が求められます。
2023年10月からはインボイス制度がはじまる
電子帳簿保存法 電子取引要件対応は2023年12月までに実施をすればよいと考えている担当者の方も多いです。
しかし、2023年10月には電子帳簿保存法対応が実施されるより前に、インボイス制度が施行されますので、早期での対応が求められています。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、2023年10月以降、仕入税額控除を受けるためには適格請求書発行事業者が発行した適格請求書の保存が必要になる制度です。
インボイス制度が施行されると、適格請求書の受領者は受領した請求書に対して確認作業が多数発生するため、業務負荷があがることが想定されています。
したがって、個人事業主であっても、業務効率化が検討されるわけですが、請求書の電子配信などを検討すると、これは電子帳簿保存法 電子取引要件対応が必要になるのです。
したがって、インボイス制度対応をしようと思うと必然的に、まずは電子帳簿保存法 電子取引要件対応が必要になってくるため、個人事業主であっても、早期に対応が求められます。
契約書は電子契約の利用がおすすめ
電子帳簿保存法 電子取引要件対応を個人事業主が対応するのは大変です。したがって、電子帳簿保存法対応ソフトを個人事業主が利用すると業務負荷を下げられますので利用をおすすめしています。
例えば、電子契約サービスであれば、DocuSignなどは1アカウントからクラウド上で利用できる安価な料金プランも提供していますので、個人事業主におすすめのサービスといえるでしょう。
このようにやることが多く、経理業務に時間を避けない個人事業主こそ、電子帳簿保存法に対応した電子契約サービスなどの専用ツールの導入をおすすめしています。
まとめ 個人事業主こそ電子帳簿保存法対応を急ごう
個人事業主であっても、電子帳簿保存法の不備を指摘されて青色申告の承認取り消しになることは大きなリスクです。
したがって、電子帳簿保存法に対応した専用ソフトを利用するなどして、確実な方法で電子帳簿保存法対応をするようにしてください。
例えば、電子契約サービスであれば、電子帳簿保存法対応だけではなく、契約業務自体を効率化する機能が多数搭載されていますので、ソフトを導入した投資対効果を出しやすいです。ぜひ一度専用ソフトの導入をご検討ください。