「一問一答は読む必要がある?」
「電子帳簿保存法 一問一答で見た方がよい箇所とは?」
と疑問に感じていませんか。
電子的に帳簿や書類を保存してもよいと認めた法律である電子帳簿保存法に対応するにあたり、不明点が出てくる場合があります。
その際に国税庁が公表している一問一答を参照することでかなりの部分を解消できますので、国税庁公表の一問一答の一読がおすすめです。
当記事では、電子帳簿保存法の中でも、電子取引要件とスキャナ保存要件について、見るべき一問一答のポイントを解説します。
国税庁から電子帳簿保存法へのよくある質問に対するFAQが国税庁から公表されている
電子帳簿保存法は保存対象となる帳簿や書類によって保存要件が異なります。4つの対応要件区分があり、その各要件区分に応じて、国税庁から一問一答が公表されているのです。
一問一答を見ておけば電子帳簿保存法対応はだいたい対応できる
国税庁公表の電子帳簿保存法一問一答には、各保存要件で国税庁の問い合わせ窓口で受け付けたFAQが記載されています。したがって、国税庁公表の電子帳簿保存法一問一答を見ることで、現状抱えている疑問を高い確率で解消できるでしょう。
また、電子帳簿保存法一問一答は国税庁によって、随時更新がされています。毎年6月ごろには一問一答は定期で更新がされ、そのほかのタイミングでも随時更新がされているようです。
とはいえ、読み込みは大変なのでポイントを押さえよう
とはいえ、国税庁後任のFAQ資料である電子帳簿保存法一問一答ですが、すべてを読み込むとなると骨が折れます。
電子取引関係の一問一答だけでも、問が30問程度あるのです。そこで、当記事では電子帳簿保存法対応をする中で、2022年1月の改正以降に特によくある質問について国税庁公表の一問一答を参照する形式で解説をします。
電子取引関係でよくある一問一答
改正後の電子帳簿保存法対応の中でも特に疑問に感じる方の多い以下について解説します。
- 取引情報の保存は受領側だけの義務?
- 電子取引を実施した他システムで保存してもよいのか?
- 紙と電子の両方で受け取ったらどちらを保存すればよい?
- 文書は何年保存すればよい?
- 電子取引した文書を適切に保存しないとペナルティがある?
- 文書によって真実性の確保手段が異なる?
取引情報の保存は受領側だけの義務?
電子帳簿保存法 電子取引要件は電子取引を実施した、送信側、受領側いずれにも対応義務があります。ただし、2023年12月までは宥恕措置が実施されていますので、電子取引をした文書を書面保存しても要件を満たせられます。
また、電子帳簿保存法の対象は、電子帳簿保存法に対応しているかどうかに関わらず、すべての企業が対象です。
所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者が取引情報(注文書、領収書等に通常記載される事項) を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を電磁的記録又はCOM若しくは書面により保存しなければならないという制度です(法10)。
なお、電子取引を開始する場合には、税務署に対して申請書を提出する必要はありません。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問1
電子取引を実施した他システムで保存してもよいのか?
電子取引を実施したシステム(メールやEDIなど)上で必ずしも、電子帳簿保存法 電子取引要件を満たして文書を保存する必要はありません。
例えば、メールに請求書を添付してやり取りする場合には、請求書をメールサーバからダウンロードして、他ファイルサーバや文書管理システム上で要件を満たして保存することも可能です。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に当たり、以下の要件を満たす検索機能を確 保する必要があります。 ⑴ 取引年月日その他の日付、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項 目を検索の条件として設定することができること。 ⑵ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することがで きること。 ⑶ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問26
上述の一問一答問26にあるように、検索要件を満たせば、文書の保存先については要件がありません。
紙と電子の両方で受け取ったらどちらを保存すればよい?
取引慣行や事前の取り決めで、紙(書面)を原本としている場合には書面の保存が必要です。この場合、電子は複製に該当しますので、電子取引要件を満たして保存する必要はありません。
ホ 取引慣行や社内のルール等により、データとは別に書面の請求書や領収書等を原本とし て受領している場合は、その原本(書面)を保存する必要があります。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問3 ホ
また、相手方との取引慣行で、請求書をクラウドサービス経由とメール添付の二つの方法で受領する場合があります。この場合には、いずれの請求書も同一の内容であるのであれば、いずれも原本と考えられますので、片方の保存のみでよいとされています。
請求書をクラウドサービスにより受領したものと電子メールにより受領したものがある場 合のように、同一の請求書を2つの電子取引により受領したときについては、それが同一の ものであるのであれば、いずれか一つの電子取引に係る請求書を保存しておけばよいことと なります。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問21
文書は何年保存すればよい?
法人であれば、法人税法に従い7年以上の保存が必要です。
⑴~⑺のいずれの場合においても、データは各税法に定められた保存期間が満了するま で保存する必要があります。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問3 二
電子帳簿保存法 電子取引要件の対象は国税関係書類以外の書類です。国税関係書類以外の書類とは、国税関係書類が”紙”を表すのに対して、”電子データ”を指しています。
基本的には国税関係書類以外の書類と国税関係書類は同一のものと考えてよいです。国税関係書類は法人税法上で、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(繰越欠損金がある場合は10年間)の保存が求められています。
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
法人税法 第59条
つまり、最低でも実務上では電子取引した文書を8年2か月程度は保存しておく必要があるでしょう。
電子取引した文書を適切に保存しないとペナルティがある?
電子取引した文書を隠蔽、仮装して、故意に所得税や法人税、消費税をごまかした場合には、重加算税が課される場合があります。
とはいえ、あくまで意図的に隠蔽、仮装していた場合に課されるペナルティですので、要件を満たして保存をしていたからといってすぐに課されるペナルティではない点に注意が必要です。
ただし、要件を満たして保存をしていなかった場合には、青色申告の承認取り消しのリスクがあると、2022年1月の改正以降に国税庁から公表されていますので、確実な対応が求められています。
文書によって真実性の確保手段が異なる?
電子取引をした手段によって、電子取引要件で求められる真実性を確保できる方法が限定されます。
例えば、請求書や領収書などを電子メールに添付ファイルとして受領して、ダウンロード後、他システム上で保存する場合などの場合、訂正削除が考慮されたシステムによる真実性の確保ができないのです。
⑴⑵については一般的に受領者側におけるデータの訂正削除が可能と考えますので、受 領したデータに規則第8条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていない場合に は、受領者側でタイムスタンプを付与すること又は同項4号に定める事務処理規程に基づ き、適切にデータを管理することが必要です。また、対象となるデータは検索できる状態 で保存することが必要ですので、当該データが添付された電子メールについて、当該メー ルソフト上で閲覧できるだけでは十分とは言えません。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問3 イ
つまり、上述の一問一答に記載の通り、受領したシステム上からダウンロードをしてシステムに保存し直す場合、改ざんの余地がうまれるため、訂正削除が考慮システムによっては対応ができません。
タイムスタンプは何を付与してもよいの?
電子帳簿保存法 電子取引要件で真実性を確保するためにタイムスタンプを付与する方法があります。この時、利用できるタイムスタンプは一般財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものに限定されます。
認定を受けているタイムスタンプ事業者は「タイムビジネス信頼・安心認定マーク」を利用できることから、タイムスタンプ利用時には、このマークがついているかの確認が必要です。
タイムビジネスの信頼性向上を目的として、一般財団法人日本データ通信協会が定める基 準を満たすものとして認定された時刻認証業務によって付与され、その有効性が証明される ものです。 また、認定を受けたタイムスタンプ事業者には、「タイムビジネス信頼・安心認定証」が交 付され、以下に示す「タイムビジネス信頼・安心認定マーク」を使用できることから、その 事業者の時刻認証業務が一般財団法人日本データ通信協会から認定されたものであるか否か については、この認定マークによって判断することもできます。
電子帳簿保存法 一問一答【電子取引関係】問28
また、上述の一問一答に記載の要件を満たした、タイムスタンプを付与するだけでは要件を満たすことができず、タイムスタンプを付与した後に以下要件を満たす必要がある点に注意ください。
- タイムスタンプをだれが付与したのか確認できるようにすること
- 課税期間中の任意の期間を指定して、期間内に付与されたタイムスタンプを一括検証できること
スキャナ保存関係でよくある一問一答
電子帳簿保存法 電子取引要件対応の次に対応されることが多い、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件で2022年1月の改正以降によくある一問一答を解説します。
相互関連性って何?
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件では、電子化したデータと帳簿を一意のキーで紐づける相互関連性が要件としてあります。
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持(規3⑤五)
電子帳簿保存法 一問一答【スキャナ保存関係】問12
ただし、電子化をする文書によっては帳簿上のレコードと紐づけが難しい場合がありますので、注意が必要です。例えば、見積書などは見積書を授受したタイミングでは、帳簿上に仕訳がないので、一意のキーですぐには紐づけができません。
したがって、見積書などの文書に関しては、仕訳ができてからキーの紐づけをする必要があるため、運用が複雑になるリスクがあるのです。
過去の紙を電子化してよいの?
過去分の国税関係書類について、電子化してデータ保存ができます。
ただし、スキャナ保存要件については、モノや金の流れへの影響度の大きさから重要書類と一般書類に国税関係書類を分類していますが、過去分の重要書類を電子化して保存する場合には、所轄税務署長に適用届出書の提出が必要ですので注意ください。
令和元年度の税制改正により、スキャナ保存の承認を受けている保存義務者は、その承認を受けて保存を開始する日前に作成又は受領した重要書類(過去分重要書類)について、所轄税務署長等に適用届出書を提出したときは、一定の要件の下、スキャナ保存をすることができることとなりました
電子帳簿保存法 一問一答【スキャナ保存関係】問55
2022年1月に電子帳簿保存法は改正され、新規で発生する文書については、スキャナ保存要件を開始する際に所轄税務署長への適用届出書の提出は不要になっています。しかし、改正後も、過去分の重要書類については申請が必要なのです。
電子データを紙出力したものを再度電子化してもよいの?
電子取引した電子データを書面出力後、再度電子帳簿保存法 スキャナ保存要件を満たして保存はできません。
2022年1月に電子帳簿保存法は改正され、2023年12月まで電子取引した電子データの書面保存が宥恕措置として認められていますが、宥恕措置期間中に書面保存した文書は再度、電子化できないのです。
令和3年度の税制改正においては、真実性確保のための要件(改ざん防止措置)が特段課 されていない出力した書面等は、他者から受領した電子データとの同一性が必ずしも十分に 確保できているとは言えないことから、出力書面等による保存措置が廃止されたところです。 したがって、他者から受領した電子データを書面等に出力して保存することは、電子帳簿保 存法や他の税法に基づくものではありませんので、当然、その出力書面等は電子帳簿保存法 に基づくスキャナ保存の対象となりません。
電子帳簿保存法 一問一答【スキャナ保存関係】問64
取引金額など検索項目がない文書はどのように保存すればよいの?
契約書などは場合によって、取引金額の記載がありません。このような文書の場合、取引金額は0円、または、空白として検索ができればよいです。この解釈は電子帳簿保存法 スキャナ保存要件だけでなく、電子取引要件についても同一ですので、留意ください。
記載すべき金額がない書類については、「取引金額」を空欄又は0円と設定することで差し 支えありません。ただし、空欄とする場合でも空欄を対象として検索できるようにしておく 必要があります。
電子帳簿保存法 一問一答【スキャナ保存関係】問45
まとめ 電子帳簿保存法のFAQには一度目を通そう
国税庁から公表されている電子帳簿保存法 一問一答を参照すると、電子帳簿保存法に対応する中で生じた疑問を大枠で解消可能です。
もし、国税庁公表の一問一答を参照しても疑問を解決できない場合は、国税庁の電話相談センターや所轄の税務署へご質問ください。
とはいえ、最も簡単に電子帳簿保存法対応をする方法は、電子帳簿保存法対応している専用ツールを利用することです。例えば、契約書であれば電子契約サービスを利用すると契約業務自体も効率化できるのでおすすめしています。
ぜひ電子帳簿保存法対応を機会に社内業務の効率化もご検討ください。