「電子帳簿保存法対応した文書の保存期間は?」
と疑問に感じていませんか。
法人で扱う国税関係帳簿書類の場合、法人税法上で7年以上の保存期間が設けられています。
ただし、実務上では保存期間の開始日が確定申告書の提出期限翌日からであることを踏まえたうえで保存期間・運用を決める必要がある点に注意が必要です。
当記事では電子帳簿保存法で保存すべき保存期間、保存期間中に満たすべき要件について解説をします。
電子帳簿保存法に対応する文書は最低7年間の保存が必要
電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類をデータ保存してもよいと認めた法律です。
電子帳簿保存法は税法の一つであるため、電子帳簿保存法に対応する必要がある文書(国税関係帳簿書類)は他税法の要件も満たしたうえで保存となっています。
電子帳簿保存法の対象文書は国税関係帳簿書類
電子帳簿保存法の対象書類である国税関係帳簿書類とは例えば以下のような文書を指します。
- 請求書
- 納品書
- 領収書
- 見積書
- 契約書
- 財務諸表 など
上記のような領収書などの文書や帳簿をデータ保存する際には電子帳簿保存法の要件を満たしてデータ保存が必要です。
国税関係書類は最低7年の保存が必要
国税関係書類は電子帳簿保存法だけでなく、他税法の要件を満たしてデータ保存する必要があります。その一つが法人税法です。法人が扱う国税関係書類は法人税法上で最低7年間の保存期間が必要です。
もし、繰越欠損金を見据えるのであれば最低10年の保存が必要ですので、注意が必要でしょう。
保存期間の開始日は確定申告書の提出期限の翌日
国税関係帳簿書類の保存期間の開始日は確定申告書の提出翌日、つまり、青色申告法人では事業年度の末日から二か月後が保存会館の開始日である点に注意が必要です。
つまり、文書ごとに保存期間を仕分けるのは実務上大変ですから、年初に授受した文書に合わせて保存期間を決定すると考えると、最低8年2か月の保存期間が必要になります。
繰越欠損金を見込むのであれば、同様の考え方をとって、保存期間は11年2か月です。
また、確定申告書の提出期限の延長特例(法人税法第75条の2)を受ける可能性を考慮するのであれば、確定申告書の提出期限が最大2か月延長されるので保存期間は最低8年4か月の保存期間(繰越欠損金を見込むのであれば11年4ヶ月の保存期間)必要になります。
裁判時に必要な文書は永年保存する場合もある
法人税法上の保存期間は上記の通りですが、裁判時に証拠として提出することの多い契約書などは永年保存する場合が多いです。
なおかつ、紙を電子化した契約書の証拠としての信頼性に不安を抱える企業では原本を紙としておき、複製をシステム上で保存することで検索性向上を狙うようにして保存期間中、保存する場合もあります。
各種法要件を満たして保存期間中、保存する必要がある
国税関係書類は法人税法に基づいて保存期間中、ただ保存すればいいわけではありません。法人税法同様に他税法上の要件に基づいて保存する必要もあるのです。
電子帳簿保存法には4つの保存要件がある
満たすべき法律の一つとして電子帳簿保存法があります。電子帳簿保存法は2022年1月に改正法が国税庁により施行されたことで、法律全体で要件緩和が目立ったことで対応がしやすくなっています。
電子帳簿保存法は保存対象となる文書を以下4つの区分に分け、各区分ごとに保存要件を定義しているのです。
- 国税関係帳簿データ(帳簿保存の要件区分)
- 決算関係書類など国税関係書類データ(書類保存の要件区分)
- 紙の電子化データ(スキャナ保存の要件区分)
- 電子的に相手方とやりとりした文書データ(電子取引保存の要件区分)
固定資産台帳のような帳簿を電子的に保存する場合は帳簿保存の要件区分、メールに領収書を添付してやり取りする場合は電子取引保存の要件区分のように、対象文書に応じて保存方法が異なります。
電子的に保存しようと考えている文書が満たすべき電子帳簿保存法の保存要件を確認の上、保存期間中、保存するようにしてください。
電子帳簿保存法の要件を満たして保存していない場合、ペナルティが課されることも
国税関係書類を電子的に保存する場合、電子帳簿保存法を満たした保存が必要です。
もし、電子帳簿保存法の保存要件を満たさずに保存している旨を国税調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しや仕入れ税額控除が認められないなどのペナルティがあると国税庁によって公表されているのです。
また、国税庁により2022年1月の電子帳簿保存法改正で重加算税があるとの公表もありますが、あくまで重加算税は仮装、隠蔽があった場合に課されるペナルティです。
つまり、本来電子保存しなければならなかった文書を電子保存していなかったなど、故意によらない場合は電子帳簿保存法において重加算税は課されませんので、留意ください。
電子帳簿保存法 電子取引要件とは
2022年1月の電子帳簿保存法改正で電子帳簿保存法上、以下のような電子取引中にやり取りした国税関係書類は電子保存が義務化されました。したがって、保存期間中、以下の要件を満たした電子保存が必須です。
- 要件①:真実性
- 要件②:可視性
要件①:真実性
電子帳簿保存法 電子取引では真実性、つまり、データを授受した後に改ざんされていないことを証明する必要があります。
真実性の要件
電子帳簿保存法 電子取引要件では以下いずれかの手段によりデータの真実性を担保可能です。
- タイムスタンプが付された後のデータ授受、または、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプをデータに付す
- データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
訂正削除申請書の保存期間
真実性を満たす方法の一つに事務処理規程の作成があります。この方法を選択する場合、訂正削除時には削除申請書を提出し、承認、保存期間中の保管が必要です。
削除申請書は修正対象の文書の保存期間、つまり、最低7年間保存が必要であると法的にされていますので、削除申請書の保存期間、保存方法についても検討する必要がある点に注意ください。
要件②:可視性
電子帳簿保存法 電子取引では可視性、つまり、整然かつ速やか、明瞭に対象書類を見つけて提示できる必要があります。電子帳簿保存法 電子取引要件では最低、以下による項目検索が必要です。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
ただし、税務調査時にダウンロードの求めに応じることが前提にある点に注意が必要です。もしどのようなダウンロードを要求されるか不明である点に不安がある場合、追加で以下による検索ができれば問題なく対応できるとされています。
- 範囲検索
- 複数条件検索
紙を電子化して保存する場合にはスキャナ保存対応が必要
紙を電子化して保存する場合、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件を満たして保存が必要です。電子帳簿保存法 スキャナ保存要件は電子取引要件の保存要件に加えて相互関連性などの要件があるため、より対応難易度が高い点が特徴的です。
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件
電子帳簿保存法スキャナ保存要件では、対象の文書が資金やモノの流れに直結連動するか否かにより以下2種類の文書に分けて、要件を定義しています。
- 重要書類
- 一般書類
また、重要書類はこれから電子化するものと、過去分を電子化するものでも保存要件が異なる点に注意が必要です。以上を総括すると、電子帳簿保存法は以下のように3つの保存要件があることになります。※2022年1月改正の要件です。
電子化した紙文書の保存期間
2022年1月に改正された電子帳簿保存法 スキャナ保存要件では、電子化した紙文書自体の廃棄が認められています。改正前までは紙文書の定期検査が必要であったため1年程度の保存期間が必要でしたが、不要になっているのです。
とはいえ、ヒューマンエラーなどによって誤ってスキャニングするリスクに備えて、改正後も3か月程度の保存期間を設けて対応している企業が多いのが実態のようです。
各種税法に準拠して保存期間中、保存するなら法対応したシステムに保存するのが楽
以上のように文書を保存するだけですが、法人税法で定められた保存期間保存し、なおかつ、電子帳簿保存法に基づいて保存する必要があるなど、対応難易度は実は高めです。
この保存期間中の保存を自社のファイルサーバー上での保存で対応しようと考えると、現実的に厳しいのが実情ではないでしょうか。
したがって、各種税法対応し、かつ長期の保存期間中、保存するのであれば、JIIMA認証などを取得したシステム上で保存するのがもっとも効率的な方法であるかもしれません。
まとめ 要件を満たして保存期間を過ごそう
電子帳簿保存法の対象文書である国税関係書類の保存期間は最低7年間です。
しかし、実務上は最低8年2か月、そのほかオプションも含めると最大で11年4か月保存する必要がありますので、長期の保存期間に対応ができる仕組みづくりが重要になります。
また、保存期間を満たして保存するだけでなく、電子的に保存する文書は電子帳簿保存法の各要件を満たした保存が求められる点にも注意が必要でしょう。
したがって、最も簡単に対応する方法は電子帳簿保存法など各種法律に対応した文書管理ツールなどで保存する方法です。この機会にシステムの導入を検討してみると対応が楽かもしれません。