「国や地方自治体との契約に電子契約サービスを利用できるのか」
と疑問に感じていませんか。
2021/2にグレーゾーン解消制度に基づき、弁護士ドットコム株式会社がデジタル庁など関係4省に回答を求めました。結果、国や地方自治体との契約書などでの電子契約サービスの利用について問題なく適法で利用できることを確認しています。
以下では、国と民間企業の間で電子契約サービスを利用できる理由を紹介していきます。
国と民間企業間で電子契約サービスを利用可能
国や地方自治体との取引で電子契約サービスの利用が容認されるまでにはいくつか課題がありました。以下ではその過程をご紹介します。
2020/7に国により事業者署名型の法的効力が確認された
2000年に成立した電子署名法に対して2020/7に解釈の整理が実施されています。リモートワークの普及に伴い、電子署名のさらなる活用促進が社会的に求められたためです。
同年に「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」が公表され、事業者署名型電子契約サービスも電子署名法第2条で定める電子署名に該当することが公表されました。
国の見解では認めているが、会計法令では民間の電子契約サービスの利用を認めていなかった
上記の電子署名法の整理により、国や自治体との契約に電子契約サービスを利用がすぐに利用できるわけではありませんでした。なぜなら、会計法令で定める「契約事務取扱規則」が弊害となっていたためです。
二十八条 次の各号に掲げる書類等の作成については、次項に規定する方法による法第四十九条の二第一項に規定する財務大臣が定める当該書類等に記載すべき事項を記録した電磁的記録により作成することができる。
一 契約書
二 請書その他これに準ずる書面
三 検査調書
四 第二十三条第一項に規定する書面
2 前項各号に掲げる書類等の作成に代わる電磁的記録の作成は、 総務省に設置される各省各庁の利用に係る電子計算機と各省各庁の官署に設置される入出力装置並びに契約の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用して当該書類等に記載すべき事項を記録する方法 により作成するものとする。
3 第一項第一号の規定により契約書が電磁的記録で作成されている場合の記名押印に代わるものであつて法第四十九条の二第二項に規定する財務大臣が定める措置は、電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項の電子署名をいう。)とする。
上述の通り、28条2項に「総務省に設置される~」と記載があり、国や地方自治体の電子契約を実施する場合、総務省が管理する政府電子調達システム「GEPS」を通した契約しか認められていませんでした。
この政府電子調達システム「GEPS」を利用する場合には、マイナンバーカードまたは電子証明書の発行が求められたため、契約するまでに手間とコストがかかる点が課題とされていました。
国だけでなく、地方自治法においても利用可能な電子証明書を厳格に規制していた
「契約事務取扱規則」と同様に地方自治法においても、利用可能な電子証明書を厳格に規制していたため、民間の電子契約サービスの利用は難しい点に課題がありました。
電子署名法第2条に定義されるような電子署名では、地方自治法で求める電子署名の要件を満たせられず、地方自治法が求める電子証明書を利用可能な電子署名の利用が求められていたのです。
2021/2に政府より公式に国・地方自治体の契約で電子契約を利用できることが公表された
上述のような課題を解消するために、2020/11に内閣府内で検討が開始され、契約事務取扱規則を民間の電子契約サービスも利用できるように改正していくことが公表されました。
その後、2021/2に弁護士ドットコム株式会社により、国や地方自治体との契約において民間の電子署名や電子契約サービスを利用できることをグレーゾーン解消制度を通じて、デジタル庁など関係4省に問い合わせを実施しています。
結果、国や地方自治体との電子契約に民間の電子契約サービスを利用することは適法であると回答を得ています。
この問い合わせ結果により、弁護士ドットコム株式会社が提供するクラウドサインに限らず、民間の電子契約サービスを国や地方自治体との契約に利用して良いことがわかるでしょう。
電子契約を利用するメリット
電子契約サービスを利用するメリットをご紹介します。
印紙税などコスト削減効果がある
以下のコストメリットがあります。
- 印紙税の削減効果
- 書面契約の作成、郵送、管理コストの削減
- 監査コストの削減 など
電子契約サービスで世界No1シェアを誇っているDocuSignを利用するソフトバンク株式会社では、1通あたり2,500円のコスト削減効果を公表しています。
この事例からもわかるように、電子契約サービス導入によるコストメリットは大きく、利用する電子契約の数が多いほどコストパフォーマンスに優れるといえるでしょう。
取引のリードタイム短縮を期待できる
2021/10に郵便法が改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日と取引のリードタイム長期化が懸念されます。特に海外企業とのやり取りや、個人事業主とのNDA締結など修正が多数発生する契約業務を抱える企業にとっては取引のリードタイム長期化は課題でしょう。
この点、電子契約サービスであれば契約締結用のURLを記載したメールを相手方に送付するのみで契約の締結を完了できますので、取引のリードタイム短縮を期待できる点がメリットです。
インボイス制度などで求められる帳票のレイアウト変更も容易
2023/10にインボイス制度が施行されますが、その中で売り手側の事業者は適格請求書の発行が義務化されます。賃貸契約など、一部の契約では契約書に事業者番号など、必要とされる記載を追加することで適格請求書の代わりとすることができますので、利用がおすすめです。
電子契約サービスを利用する場合、容易に契約書の文言を変更できますので、インボイス制度に求められるような書式に変更することも簡単です。
電子帳簿保存法など法対応も簡単
電子契約を相手方に交付した場合、電子契約は電子取引に該当しますので、電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存が必要です。
電子契約サービスを利用しないで、電子契約を交付する場合、電子取引要件に求められる検索性や真実性を手持ちの文書管理ツールやファイルサーバー上などで対応する必要があるでしょう。
一方で、電子契約サービスであれば、システム上で検索性を担保し、また、文書へのタイムスタンプの付与ができるタイプのシステムが多いですので、電子帳簿保存法対応は簡単です。
また昨今では電子帳簿保存法に対して2022/1より改正が公表されましたが、2021/12の直前になって国税庁より電子取引要件に対して2年間の宥恕(ゆうじょ)措置が公表されています。突然の国による方針変更に対応するためにも、利用がしやすい電子契約サービスはおすすめです。
まとめ システムを導入して国との契約関連業務を効率化しよう!
国や地方自治体とのやり取りは民間の電子契約サービスを利用してしまって大丈夫です。国や地方自治体とのやり取りのみならず、他取引においても電子契約サービスを利用することで、印紙税の削減や取引のリードタイム短縮などの効果を期待できますので、導入をおすすめします。
電子契約サービスを利用して国や地方自治体とのやり取りを含めすべての契約業務を効率化していきましょう!