「電子契約に割印は不要?」
「割印とはそもそもなぜ付与していたの?」
と疑問に感じていませんか。
割印は契約書の非改ざん性を証明するために付与されています。ただし、法的に付与が必須ではありませんので注意が必要です。電子契約では電子署名を付与することで非改ざん性を証明できるので、割印の付与は不要といわれています。
当記事では、割印が法的に付与必須ではない理由、電子契約で割印が必要ない理由、電子契約に割印を押したいときの方法までを解説します。
割印は法的に付与が必須ではない
割印は法的に求められて実施するものではなく、商習慣として非改ざん性を証明するために実施されます。以下では、割印が法的に付与必須ではない理由を解説します。
割印は文書の関連性を示すために押印する
割印は複数枚ある文書の関連性と、関連する文書の非改ざん性を証明するために付与されます。したがって、複数枚ある文書に対して、割印が押印されるため、単体の文書では割印の一部がきれいにかけた状態で付与されます。
実際の使い方としては、契約書で利用されることが多いようです。契約書で利用する場合、原本と写しが対であることを示すために付与されます。
また、割印をする際の印鑑の種類に制限はありません。実印でも認印でも問題がないのです。加えて、契約書に署名した印鑑と同一でなくても問題なく、付与位置にも指定がありませんので、割印は非常に簡単にできることがわかります。
契印は複数ページの書類の関係性を示す役割として押印される
契印は複数枚ある文書の連続性と、連続した文書の非改ざん性を証明するために付与されています。割印とは実施目的・意味が異なるため、注意が必要です。割印は複数枚ある文書が関連していて改ざんされていないことを証明します。
一方で、契印は複数ページあるような文書に対してページ間に押印することで、ページの差し替えや改ざんがないことを証明することを目的としているので、明確にこの2つの印とは違いがあるのです。
訂正印や捨印とも異なる
割印と似たものとして、訂正印や捨印がありますが、いずれも実施目的が異なります。訂正印は文字通り、契約書上で修正点が発生した際に、付与をする印鑑です。
訂正箇所を二重線で消したうえで、その上部に正しい記載を行い、その付近に訂正印を付与します。
一方で、捨印は契約書上の内容に修正が起きるであろうことを念頭に、相手方に送付する文書の欄外にあらかじめ、押印をしておく印鑑です。
相手方と信頼関係がある場合に利用され、捨印が付与された契約書であれば、契約書の受領後にいくらでも契約内容の変更が可能となります。
以上から、割印と捨印、訂正印は明確に異なることがわかりますね。
割印がなくても契約書の法的効力には影響しない
割印は「自社と相手方もっている契約書が改ざんされておらず、同一のものである」ことを証明する効力を持っていると考えられるにすぎないので、契約そのものの法的効力には影響しません。
契約は民法522条2項の契約方式の自由によって、口頭などの目に見えない形式であったとしても、成立します。とはいえ、割印があることで、万が一訴訟が起きた時に、証拠となる契約書の信頼性が向上するとも考えられます。
電子契約では割印は必要ない
では、電子契約において、文書間の関連性と非改ざん性を証明する割印は必要となるのでしょうかか。結論、電子契約においては、割印は不要です。
書面契約では真正性を記名押印によって証明する
書面契約において、その文書が係争時の証拠として利用するためには真正性を確保する必要があります。民事訴訟法228条2項に以下の記載があるのです。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
では、この真正性を書面契約の場合、どのように満たしているかというと、記名押印をすることによって満たしています。民事訴訟法228条4項を確認すると以下のように記載があるのです。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
上述の民事訴訟法228条4項の内容と、「本人の印鑑によって押印されていれば、本人の意思によって押印されたのだろう」という、二段階の推定を経ることによって、本人の印鑑によって押印された文書は真正性を確保できることになっています。
以上から、書面契約において、割印の付与が法的に必須ではないことがわかりますね。
電子契約では真正性を電子署名が証明する
では、電子契約においてどのように真正性を確保するかというと、電子署名を付与することで確保します。電子署名法3条に以下の記載があるのです。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
以上から、電子契約において電子署名が真正性を確保するため、押印は不要であることがわかります。もちろん、同様の理由で電子契約に割印は不要です。
電子契約が改ざんされても検知可能
法的に割印や契印が不要とはいえ、実務上で問題がないのだろうか、と疑問に感じる方も多いです。結論、電子契約に割印や契印が押されていなくても全く問題がありません。
なぜなら、電子署名が付与された電子契約は非改ざん性を担保されているからです。電子署名が付与された電子契約が改ざんされた場合、検知可能ですので、改ざんができないのです。
割印や契印を付与する目的は非改ざん性の確保ですから、電子署名によって非改ざん性が担保されているのなら、割印や契印の付与は必要ないとわかります。
印鑑は法的に不要でも押したい!そんな時は電子印鑑がおすすめ
電子契約に割印や契印の付与が不要であるとしても、これまでの商習慣上で、割印や契印の付与が求められる場合があります。そのような場合には電子印鑑をご利用ください。
商習慣から電子契約に押印を求められる場合がある
これまでご紹介してきた通り、電子契約に割印や契印は法的に必須ではありません。しかし、以下のようなこれまでの書き方の理由で割印などの押印が電子契約上に求められる場合があるのです。
- 契約書上に押印があった方が雰囲気が出る
- 契約書上に押印があると、一目で契約締結がされていることがわかる
非論理的な意見であると一蹴せずに一度対応の検討が必要です。なぜなら、電子契約を相手方や社内の人間に利用してもらい、業務効率化を目指すためには、彼らの感情面にも配慮して、納得して動いてもらう必要があるからです。
電子印鑑とは
電子契約上に押印する手段として、印影画像をデータ化して利用する電子印鑑があります。電子印鑑とは、読んで字のごとく、電子文書に押印をする技術です。
印影画像を利用した電子印鑑を付与することで、これまでの書面契約のような見た目にすることが可能になります。
電子印鑑の作成方法は2通りある
電子印鑑を作成する手段は以下の2通りあります。
- 印影画像を電子契約にそのまま付与する
- 印影画像に識別情報を持たせて電子契約に付与する
印影画像を電子契約にそのまま付与する
印影画像をスキャニングして、画像データにすることで電子印鑑として利用ができます。ExcelやWordなど既にお持ちのツールで簡単に印影の画像化、および、電子印鑑を作成できる点がメリットです。
しかし、画像データですので第三者によるコピーが容易である点に課題があります。
印影画像に識別情報を持たせて電子契約に付与する
スキャニングした印影画像に識別情報を持たせることで、コピーの難しい電子印鑑を作成できます。この方法であれば、電子印鑑を付与することで「誰に」よって、電子印鑑が付与されたか証明ができますので、電子文書の信頼性を底上げできるのです。
電子契約サービス導入のメリット
割印など押印が不要な電子契約ですが、電子契約を作成する際には電子契約サービスの活用がおすすめです。
契約書1通あたり2,500円のコスト削減をした事例もある
電子契約サービスを導入することで以下のコスト削減を実現できます。
- 契約書ごとに課税される印紙税の削減
- 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
- 書面契約の検索・監査コストの削減 など
世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果を実現しています。この事例からも明らかであるように、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は非常に大きいです。
契約業務にかかる時間を即日まで短縮できる
書面契約の場合、契約書を作成後、相手方に送付し、相手方から記名押印済みの契約書を返送してもらうまでに2-3週間程度の期間がある場合が多いです。
一方で、立会人型の電子契約サービスを利用する場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付すれば、契約業務を完結できますので、リードタイムの短縮を期待できます。
また、電子契約サービス上には以下のような機能が搭載されている場合が多いですので、リードタイムの短縮と同時に業務の効率化を期待できる点がメリットです。
- ワークフロー
- 契約テンプレート登録
- 顧客別のステータス管理
- 一括送信
- 契約書の一元管理、関連文書管理
- 契約書への属性付与、属性による項目検索、範囲検索、複数条件検索 など
識別情報付きの電子印鑑を作成できる
電子印鑑GMOサインなど、一部の電子契約サービスではシステム上で識別情報付きの電子印鑑を作成することができます。
上述でも紹介した通り、印影画像をただコピーしただけの電子印鑑を利用した場合、証拠の信頼性向上にも寄与しない上に、第三者による不正コピーの懸念もあるため、あまりおすすめができません。
電子印鑑GMOサインなどの電子契約サービスを利用すれば、登録した印影画像に対して簡単に識別情報を付けることが可能ですので、相手方からの要望にも簡単に対応ができる点がメリットです。
まとめ 割印が不要な電子契約サービスを利用しよう
書面契約への割印の押印は法的に必須ではありません。しかし、非改ざん性を証明するために商習慣上のルールとして割印は付与されてきたようです。
一方で、電子契約においても割印の押印は不要です。電子契約においては電子署名を付与することで、電子署名法3条によって、真正性が担保され、非改ざん性も担保できます。
電子契約において、割印は法的にも、実務上でも不要とはいえ、商習慣上で印鑑の押印を求められる場合があります。その場合は印影画像をデータ化した電子印鑑の活用をご検討ください。