「電子契約利用時にトラブルを避ける方法は」
「電子契約に想定されるリスクを知りたい」
と疑問に感じていませんか。
電子契約は利用するメリットが大きい一方で、なりすまし承認や無権代理のリスクなど、業務上でトラブル回避のためにいくつか利用時に注意したいリスクがあります。
リスクを放置していると思いがけないトラブルに合う可能性がありますので確実に対応をしておきましょう。
当記事では電子契約利用時にトラブルにつながりやすいリスク、リスクへの対応方法までをご紹介します。
電子契約を利用する際にトラブルにつながるリスク
電子契約を利用する際にトラブルに繋がりやすいリスクを解説します。
電子契約の真正性が脅かされるリスク
電子契約を訴訟時の証拠として利用するためには真正性を確保する必要があります。ただし、何も対策をせずに電子契約を導入していると真正性が確保できないトラブルに合う可能性がありますので注意が必要です。
以下ではそもそも真正性とは何かから順を追いながら解説します。
契約はいかなる形式でも成立する
そもそも、契約は民法522条2項によりいかなる形式でも成立します。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
つまり、電子契約も書面契約と同様に法的に有効に成立します。しかし、ここで法的に有効に成立することと、万が一の訴訟時に証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。
係争時の証拠として利用するために真正性の確保が必要
民事訴訟法228条2項では係争時の証拠として利用するためには真正性の確保が必要であるとしています。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
書面契約では二段の推定により、書面上に押印があれば真正性を確保することができていました。電子契約の場合には電子署名法3条により電子署名を付与することで真正性の確保をすることができます。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
電子署名を付与していても真正性が脅かされる場合がある
では、電子契約に電子署名が付与されていれば100%真正性が確保できるかというとそうではありません。ここにトラブルの火種があります。例えば、第三者によるなりすまし署名や契約締結権限のない人間による署名などがトラブルの火種です。
これらのトラブルにつながりうるリスクに対応するために、リスクに対応可能なシステム導入が重要といえます。
法律対応をし損ねるリスク
電子契約は電子とはいえ、契約書ですので各種税法に基づいた保存が必要です。法律の中には要件を満たして保存をしていなかった場合、青色申告の承認取り消しのリスクがあると明記している法律もありますので注意が必要です。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは読んで字のごとく、電子的に帳簿や書類を保存してもよいと認めた法律です。2022/1に改正が実施されたことで、電子契約のような電子取引に該当する書類の電子保存が義務化されました。
電子契約のような電子取引に該当する書類は以下の要件を満たした保存をする必要がああるため注意が必要です。
- 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- 見読可能装置の備付け等
- 検索機能の確保
- 真実性の確保
もし国税調査時に電子取引要件を満たした保存をしていない旨が指摘された場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので、必ず対応をしましょう。
法人税法
法人税法上で契約書は最低7年間(繰越欠損金がある場合には10年)の保存義務があります。こちらも国税調査時に指摘を受けた際には青色申告の承認取り消しのリスクがありますので対応が必要です。
契約内容が改ざんされるリスク
契約書の内容情報が改ざんされ、不正やコンプライアンス、監査上のトラブルにつながります。例えば、契約内容が改ざんされることで以下のようなトラブルの懸念がありますので対応が必要です。
- 決算期中に売上が足りず、本来は翌期計上される売上を当期計上するために契約締結日を不正に操作するケース(バックデートのリスク)
- 社内稟議で未確定の契約書を契約締結用の契約書として利用するケース
真正性を確保するためには
係争時の証拠として利用するために真正性の確保が必要です。以下では真正性を確保するためにリスクを低減しトラブルを予防する方法を解説します。
電子署名を確実に付与する
電子契約をExcelなどのツールで作成していると、契約データに電子署名を付与し忘れているケースがあります。この場合、民事訴訟法228条で求められている真正性を確保することができません。
電子契約を係争時の証拠として利用するためにまず必要なのは確実に電子署名を付与することです。この点、電子契約サービスを利用すると契約締結時にUI上で簡単に電子署名を付与できますので、リスク低減のために電子契約サービスの導入は有効です。
本人確認をする
第三者が契約者になりすまして署名をした場合、電子署名法2条に記載があるような本人性の要件を満たせられないため、真正性の確保が難しくなります。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
したがって、書面契約と同様、なりすましリスクへの対応が必要です。立会人型の電子契約サービスを利用すると、複雑かつ長大な契約締結用のURLが契約の都度生成され、相手方に送付されますので、なりすましリスクを低減できます。
また、相手方が契約締結する時に二要素認証を実施させることができれば、なりすましリスクを大きく低減できます。
契約締結権限を持つか事前に確認する
なりすましでないことを証明したとしても、そもそも署名者に契約締結権限がない場合、そもそもの契約の成立を疑われかねません。したがって、書面契約と同様に署名をする前に相手方の署名者の契約締結権限と関連情報を確認する必要があります。
電子契約サービスの中にはシステム上で相手方の契約締結権限を確認することが可能なシステムもありますので、システム導入時のポイントになるでしょう。
法律対応をし損ねないためには
電子帳簿保存法など各種税法に基づいて保存するためには電子契約サービスの利用が効率的です。以下では各種税法に対して電子契約サービスを利用する際の導入ポイントを解説します。
電子帳簿保存法に対応した電子契約サービスを利用する
電子契約を利用する時に満たす必要があるのは電子帳簿保存法電子取引要件です。電子取引要件の中で、特にシステムに求められる要件は以下があります。
- 検索機能の確保
- 真実性の確保
検索機能の確保については、主要三項目(取引年月日、取引先名、取引日付)でシステム上で検索できるか確認が必要です。
ただし、国税調査時にダウンロードの求めに応じるとの前提付きですので、ダウンロードの求めに応じる自信がなければ範囲検索、複数条件検索もできる必要があります。
真実性の確保については、タイムスタンプを付与できるか確認が必要です。真実性の確保方法はタイムスタンプだけではありませんが、最も簡単に真実性の要件を満たせられるのはタイムスタンプの付与ですので、システム上でタイムスタンプを付与できるか確認してください。
また、電子帳簿保存法対応は必ずしも電子契約サービス上で実施する必要がない点に留意が必要です。
利用する電子契約サービスによっては、サービス上で電子帳簿保存法対応が難しい場合がありますので、その場合には他システムに帳票を連携して対応をするようにしてください。
ただし、電子契約サービスから電子契約をダウンロードして他システムに連携する場合、訂正削除履歴が担保されたシステムによる真実性の確保ができませんので注意が必要です。
法人税法対応のためにシステム上で長期保存できるか確認する
法人税法上、契約書の7年以上の長期保存が必要です。電子契約サービス上で文書を長期保存することができるか確認をしましょう。電子契約サービス上の中にはシステム上に保存する帳票の数に応じての従量課金をとっているサービスもあります。
つまり、大量の帳票を電子契約サービス上で保存する場合、その分だけコストが発生するため注意が必要です。
法人税法で求められる帳票の長期保存は必ずしも電子契約サービス上で実施する必要はなく、他システムに帳票を連携させて対応することもできますので、保存する帳票を確認して対応をご検討ください。
契約内容を改ざんされないためには
契約内容が改ざんされることで、不正やコンプライアンス、監査上のトラブルが起きる場合があります。以下ではこのようなトラブルを回避するための方法を解説します。
タイムスタンプを付与する
電子署名だけでは、署名がいつ付与されたのかまでは検知できません。この課題に対してタイムスタンプの付与がおすすめです。タイムスタンプを付与することで署名がいつ実施されたのか時間を検知できるようになります。
監査上のよくあがるリスクとして、決算期中に売上が足りず、本来は翌期計上される売上を当期計上するために契約締結日を不正に変更するケース(バックデートのリスク)がありますが、このリスクに対してもタイムスタンプは有効です。
バックデートだからといって、必ずしも不正であるというわけではありませんが、タイムスタンプを付与しておくことで不正であるバックデートを検知しやすくなります。
バージョン管理をする
社内稟議で未確定の契約書を契約締結用の契約書として利用して、相手方とトラブルになるケースがあります。このようなトラブルを未然に防ぐ手段としてバージョン管理機能が有用です。
相手方に提出できる電子契約はバージョン管理上、最終版に限定するような運用をすれば相手方とのトラブルを未然に防げます。
まとめ 電子契約をうまく活用してトラブルを回避しよう
電子契約はとても便利である反面、気を付けなければトラブルにあるリスクが多数潜んでいます。特に電子帳簿保存法などの法律対応の漏れは青色申告の承認取り消しなどの重大なトラブルの元ですので確実に対応をするようにしてください。
最も簡単にリスクを低減する手段は電子契約サービスを導入することです。ここまで紹介したリスクに対応した機能が搭載されているか確認の上、トラブルを回避しやすい電子契約サービスをぜひ導入ください。