契約書を締結する際は、金額に応じた収入印紙を貼付しなければいけません。しかし、紙に文書を印刷せずに電子契約で話を進めた場合、印紙税は課税されないルールになっています。
本記事では、電子契約を利用したことがない人向けに、電子契約で印紙代がかからない理由を詳しく解説します。非課税となる根拠もきちんと解説するので、ぜひ明日からのビジネスに役立ててください。
そもそも印紙税とは
印紙税とは、契約書や領収書などの文書を作成した場合に課税される税金のことです。税額は文書に記載する金額などによって決められます。
日本に導入されたのは、1870年代頃と歴史が古いです。
関連:印紙税の税額一覧
普段収入印紙を貼付している人ならすでにご存じかもしれませんが、印紙税の課税額は文書に記載する金額や文書の種類によって異なります。
以下では、印紙税の課税額を簡単にまとめているので参考程度に確認しておきましょう。
消費貸借・不動産などに関する契約書 | 請負に関する契約書 | |
---|---|---|
50万円超 100万円以下 |
1,000円 | 200円 |
10万円超 50万円以下 |
400円 | 200円 |
10万円以下 | 200円 | 200円 |
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
なお、消費貸借・不動産などに関する文書の例は、以下の通りです。
- 金銭消費貸借契約書
- 不動産売買契約書
- 不動産売渡証書
- 土地賃貸借契約書 など
請負契約に関する文書の例としては、次のようなものがあります。
- 工事請負契約書
- 工事注文請書
- 請負金額変更契約書 など
なぜ電子契約は収入印紙が不要?根拠・理由を解説
冒頭で触れたとおり、電子契約の場合は収入印紙を貼付しなくてすみます。契約書の内容が同じであっても紙にプリントアウトして文書にしただけで、なぜ印紙税の課税対象になるのでしょうか。
この章では、電子契約に収入印紙がいらない理由を解説します。
収入印紙が不要な理由:課税対象は書面だけ
前提として、印紙税の課税対象は書面に限定されています。事実、印紙税法の第2条には、次のような記述があります。
第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
別表第一には課税物件として、不動産や無形財産権の譲渡に関する契約書などが記載されています。
このことから、印紙税法では書面の文書だけが課税対象として定められていることが分かります。したがって、電子契約を進める場合は、印紙税が課税されないのです。
収入印紙が不要な根拠:国税庁の見解を紹介
法律上、電子契約は印紙税の課税対象でないことを理解できても、不安を感じている人もいるかもしれません。こうした人たちへ向けて、ここでは国税庁のホームページに掲載された見解を紹介します。
注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える
上記から、紙にプリントアウトすると印紙税の課税対象になる注文請書でも、電子化してやり取りすれば課税文書を作成したことにならないため、印紙税は課税されないことが分かります。
当たり前ではありますが、法律だけでなく、税法に則って業務を進める国税庁でも電子契約であれば印紙税が課税されないというルールが浸透していると言えるでしょう。
収入印紙が不要な根拠:国会答弁の内容を紹介
国会の答弁でも、電子契約の印紙税について話題になったことがあります。少し前の情報になりますが、平成17年3月15日に作成された答弁書には、次のような記載があります。
事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである
国会の答弁からも、電子化した契約書であれば印紙税は非課税になることが分かります。
電子契約システムを導入すればコストカットにつながる
ここまでの説明で、電子契約すると印紙税が発生しないことは十分理解できたと思います。
会社としては、電子契約システムを導入するだけで印紙税の削減が可能です。また、印刷のための用紙代もかかりませんし、保管スペースも必要ありません。
このことから、電子契約システムの利用は大きなコスト削減につながることが分かります。
しかし、電子契約システムを使ったことがない人は、メリットは理解できてもどのように会社に導入すれば良いか分からず困ってしまうでしょう。
そこでこの章では、電子契約システムの導入方法や利用時の注意点をあわせて解説します。
電子契約システムの導入方法
電子契約システムの導入方法は利用するサービスによって多少異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。
- 電子契約システムを使用する範囲を決定する
- 利用する電子契約システムを選ぶ
- 電子契約システムの運用ルールを設定する
- 導入
- 社内で活用状況を共有・適宜ルールの見直しを行う
国内で使用されている電子契約システムとしては、Docusign(ドキュサイン)やクラウドサインなどがあります。それぞれ利用プランやサービス内容、使える機能などに違いがあるので自社にあうものを探すことが大切です。
電子契約システムを導入する場合の注意点
電子契約システムを新たに会社に導入する場合に、気を付けたいポイントを3つ解説します。
あらかじめ取引先から理解を得る
取引先の中には、大切な契約書を電子化することを受け入れられないところもあるでしょう。そのため、電子契約システムを導入する場合は、あらかじめ取引先と話をしておく必要があります。
紙の商習慣が根強い会社も多いので、電子契約システムを導入するメリットや取引先への影響・対応方法などを事細かに説明することをおすすめします。
社員に対してきちんとした説明が必要
電子契約を導入する場合は、実際にシステムを使うことになる社員に対してメリットをしっかり伝えなければいけません。
電子契約システムを導入することにばかり目が行って、内部への伝達がおろそかにしていると社員が電子契約を活用してくれない可能性があります。
電子契約システムを使った場合の会社のメリットだけでなく、現場への影響も交えて詳細に説明することが大切です。
すべての契約が電子化できるわけではない
契約書を電子化すれば印紙税が課税されないのは事実ですが、すべての契約書が電子化に対応しているわけではありません。中には、法律上、電子化が認められていないものがあるので注意が必要です。
例えば、以下の契約書は電子化が許されていないので、自社で取り扱いがある場合は電子契約システムの導入を慎重に検討すべきでしょう。
- 定期借地契約書
- 定期借家契約書
- マンション管理等の委託契約書
- 不動産売買における重要事項証明書
- 任意後見契約書
- 訪問販売等で交付する書面 など
まとめ
紙に契約書などをコピーせずに電子契約にすれば、印紙税が課税されません。そのため、収入印紙代や用紙代、文書の管理スペースの削減につながります。
電子契約を会社に導入する場合は、自社にあったシステムを選ぶことが大切です。Docusign(ドキュサイン)やクラウドサインなど、いろいろな電子契約システムがあるので、機能やサービスをよく比較検討してみましょう。
今回解説した内容を参考に、電子契約システムの導入を前向きに考えてみてください。