総務省などによる電子契約サービスに関するQ&Aで紐解く電子署名の有効性と選び方
総務省などによる電子契約サービスに関するQ&Aで紐解く電子署名の有効性と選び方

総務省などによる電子契約サービスに関するQ&Aで紐解く電子署名の有効性と選び方

社員のテレワークが急速に普及しています。オフィスの外では社印の管理が難しいことに伴い、印鑑が不要な電子署名・電子契約を導入する企業も増えています。

ただし、たしかに便利にはなるけれども、電子契約で本当に、法律的に有効な契約書が作成できるのかどうか、心配する方もいらっしゃるでしょう。

長い間、契約書を紙に印刷して製本し、そこへ当事者が署名をしたり、印鑑を押したりして、その内容を確認した証拠としてきたはずだからです。電子契約は、そうした手間を大幅に簡略化し、オンライン上で完結させることができます。

この記事では、電子契約・電子署名に関心のある方々が、その法的な有効性について総務省などの公式の見解に触れる機会を提供しています。

電子署名法の主務官庁である、総務省・法務省・経済産業省の三省が連名で公表している『利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A』(※以下、「Q&A」として記載)[ https://www.soumu.go.jp/main_content/000711467.pdf ]の記載をもとに、電子契約が持っている法律上の効力について紐解きます。

また、総務省などの公式見解に基づいて、各社からいくつもリリースされている電子契約サービスの中から、自社にふさわしいものを選択するためのヒントについても解説しています。

目次

総務省などが制定した電子署名法

電子署名が法律上、手書きの署名や押印などの認証手続きと同じ効力を持つことを根拠づけているのが、電子署名法という法律です。

正式名称を「電子署名及び認証業務に関する法律」と呼ぶ電子署名法は、総務省などの法案提出により、国会で2000年に成立し、2001年に施行されました。

1995年頃から、インターネットが急速に普及したことに伴い、オンラインで契約手続きを完結させる需要が高まる将来を見越して、欧米諸国でも西暦2000年頃を境に、相次いで電子署名・電子契約書の法制化が行われていました。日本の電子署名法も、総務省などの主導によって、まさにその時期に成立したのです。

20年以上も前から、総務省が将来を見越して電子署名の有効性を法律的に裏付ける制度を定めていた事実に、驚く方も少なくないでしょう。

総務省は、実印などを役所に届ける印鑑証明制度などを運営しているため、押印廃止の方針についても総務省などリーダーシップを取っています。もちろん、電子署名も同様に総務省が管轄しています。

電子契約普及の経緯

総務省の官僚など、法案の作成担当者は当初、印鑑の代わりに、ICカードやUSBメモリなどで本人の契約意思を認証することを想定していました。

ただ、このようなツールで認証するのでは、今までどおりに印鑑を管理するのと変わり映えがせず、依然として手間がかかります。加えて、カードリーダーなども新たに導入するコストがかさんでしまいます。

そのせいで、総務省などが定めた法的根拠があるにもかかわらず、電子署名はほとんど普及しないまま歳月が流れていきました。

しかし、2015年頃から、電子署名の専門企業が仲介となって、契約当事者がクラウド上で電子契約を取り扱うことができる事業者署名型(立会人型)のサービスが次々と現れました。

認証ツールが不要となったことで、電子署名を導入するハードルが下がり、総務省などの思惑通り、電子契約サービスが一気に普及したのです。

電子契約の法的効力

契約書には、契約締結が有効に成立したかどうか、その契約内容がどのようなものか、誰にでもわかるかたちで証拠として残す機能があります。契約をめぐってトラブルが生じた場合でも、署名や押印のある契約書を提出すれば、裁判所が契約の証拠として扱います。

ただ、電子署名がなされた電子契約書でも同じように、裁判所が契約の証拠として扱ってくれるのかが問題です。

総務省などが法案作成に関係した電子署名法3条は「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(中略)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(中略)が行われているときは、真正に成立したものと推定する」と規定しています。

これは、民事訴訟法228条4項の「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」という規定の効力を、本人等の署名や押印がない電子署名・電子契約にも拡張させる意味を持っています。

「真正に成立したものと推定する」とは、ある文書や情報を、証拠として裁判で提出した場合、別の証拠で反証しない限り、裁判所は真正に成立したものとして取り扱うことを指します。

つまり、契約が成立した証拠を裁判で示す場合、署名や押印のある契約書だけを提出すれば足りるのですが、総務省が制定に関わった電子署名法3条の定めにより、電子署名・電子契約が行われた電磁的記録(デジタルデータ)を提出することでも同じ効果があるのです

電子契約に関する総務省などの正式見解

総務省・法務省・経済産業省が連名で発表している、前出の「Q&A」によれば、電子契約書が裁判で「真正に成立したものと推定」されるためには、次の条件が満たされる必要があると説明しています。

  • 電子文書に電子署名法第3条に規定する電子署名が付されていること。
  • 上記電子署名が本人(電子文書の作成名義人)の意思に基づき行われたものであること。

電子契約サービスも、総務省などが定めたこれらの条件を満たして初めて、署名や押印のある契約書と同等以上の証明力を持つことになるのです。裁判などでは、電子契約サービスのシステムによってクラウド上に記録・保存された証跡ドキュメントなどを証拠として用います。

電子署名の定義

総務省などが法案作成した電子署名法2条1項の規定によれば、電子契約サービスに用いる電子署名は、

  • 契約をした当事者本人が作成したものであることを確認できる技術
  • 契約情報について改変が行われていないかどうかを確認できる技術

これら2つの組み合わせだとされています。

RSA暗号

契約をした当事者本人(代表取締役など)が作成したことを裏付けるのが、RSA署名(公開鍵暗号)の技術です。IDに関連したパスワードを知っている本人しか電子署名ができない仕組みで、SNSやネットショッピングなど、インターネット上での本人認証に広く使われています。

総務省も、RSA暗号の安全性などに関する研究や監視を続けています。

eシール

また、契約をした当事者の法人(会社)が確かに電子契約書を発行したことを示すのが、eシールです。総務省が主導している物ではなく、欧州連合(EU)の指針に基づきます。

eシールのみでは電子署名として有効になりません。しかし、eシールをRSA署名と組み合わせて認証することで、電子契約の成された電子契約書が、確かに本人が作成し、他人が改ざんしていない事実がより強固に確かめられるのです

タイムスタンプ

そして、ある時点をもってその電子契約書が確かに存在したことを認証するのが、タイムスタンプと呼ばれる技術です。タイムスタンプには、ある時刻以降、契約情報が改変されていない「非改ざん証明」の機能もあります。

タイムスタンプも総務省が制度化しているわけではありませんが、電子署名に印鑑と同等以上の証明力を持たせるため、重要な役割を果たしています

総務省など三省の見解に基づいた、電子契約サービスの留意点と選び方

総務省などが策定した前出Q&Aにおいて、電子契約サービスでは、利用者の身元確認がなされることによって、電子文書の作成名義人と同一人物であることが確認できる点も重要なポイントとしています。その上で総務省その他の主務官庁は、適切な電子契約サービスを慎重に選ばなければならないと警鐘を鳴らしています。

その点、国内外で定評のある電子契約サービスは、総務省など電子署名法の主務官庁が求める条件をクリアしているとみていいでしょう。

たとえば、日本国内でシェアNo.1として定評がある電子契約サービスである「クラウドサイン」は、三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムが合同で提供しています。

クラウドサインは認証タイムスタンプを利用しているサービスで、これで電子契約が改ざんされていないことを裏付けています。

さらに2段階認証を採用して本人確認の精度を高めているほか、法律家集団として総務省などに頻繁に問い合わせながら、擦り合わせを重ねて、電子契約のサービスを支えるシステムと、電子契約に関する法的根拠の整合性を日々高めています。

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