新型コロナの感染拡大や働き方改革といった世の中の動きに伴い、電子契約を導入する企業が増えています。
しかし一方で、電子契約の導入には手間や初期コストがかかることから、いまだ導入に踏み切れていない企業が多いのも現状です。
そこでこの記事では、電子契約の導入率と、導入率が伸び悩んでいる理由を解説しています。
従来の書面契約と比較した場合のメリットなどもまとめているので、電子契約の導入で迷っている企業様はぜひ参考にしてみてください。
電子契約の導入率は2021年9月時点で約3割
まずは、インフォマートが実施した調査記事を基に、日本国内における電子契約の導入率と、業種別の導入率について詳しく見ていきましょう。
また世界トップシェアを誇る大手電子契約サービス「DocuSign」が独自に実施した、電子契約に対するニーズ調査の結果も紹介していきます。
電子契約の市場規模
新型コロナ感染拡大などの影響を受け導入が進む電子契約ですが、実際の導入率はどの程度なのでしょうか。
BtoBにおける企業間電子商取引プラットフォームを運営するインフォマートが2021年9月に行った調査では、電子契約の導入率について以下のような結果が出ています。
電子契約の導入状況 | 割合 |
---|---|
導入済み | 27.9% |
検討中(導入サービス決定済み) | 2.1% |
検討中(導入サービス未決定) | 10.5% |
未導入(興味あり) | 18.0% |
未導入(興味なし) | 41.4% |
2020年9月に行われた同調査では、導入済みの割合が18.0%であったことから、導入率は1年で約1.5倍まで増加していることが明らかになりました。
とは言え、全体としてはいまだ約3割の導入率にとどまっており、急速な導入率アップには繋がっていないのが現状です。
業種別の普及率
業種別の導入率は以下のような結果となっています。
業種 | 導入済み企業の割合 |
---|---|
製造業(電子機器) | 35.2% |
製造業(消費財) | 46.1% |
サービス関連 | 26.9% |
不動産・金融 | 28.3% |
出版・通信・小売 | 50.0% |
教育・医療 | 21.2% |
その他 | 24.8% |
各業種の中で最も導入率が高いのが出版・通信・小売業界、次いで製造業(消費財)という結果でした。
また全体を通して2020年4月以降の導入率が高くなっており、コロナ禍をきかっけに電子契約を導入する企業が増えたことが分かります。
より詳しい調査結果については、コチラをご参照ください。
電子契約を利用したいというニーズは高い
世界的に高い導入率を誇る電子契約サービス『DocuSign』が実施した調査では、電子契約・署名サービスの利用意向について以下のような割合が示されています。
大変利用したいと思う | 22% |
---|---|
利用したいと思う | 26% |
どちらかというと利用したいと思う | 23% |
どちらかというと利用したいとは思わない | 8% |
利用したいと思わない | 6% |
全く利用したいと思わない | 15% |
(参照:https://www.docusign.jp/blog/the-state-of-esignature-in-japan-2021)
回答者の約7割が利用意向を示していることから、日本国内における電子契約の導入率は現状3割程度となっているものの、電子契約に対するニーズ自体は高いと言えるでしょう。
また電子契約を利用したことがある方に対する調査では、約9割の方が「大変便利だと思う」と回答しており、導入企業からは好評を得ていることが伺えます。
電子契約の導入率が伸び悩んでいる理由
電子契約の利用意向を示す企業の割合や、実際に利用した企業の満足度は高いにもかかわらず、思うように電子契約の導入率が伸びないのはなぜでしょうか。
電子契約の導入率が伸び悩んでいる理由としては、主に以下の2つの要因が考えられます。
導入準備にかかる手間
インフォマートが実施した調査によると、電子契約を導入する際の課題として以下のような点を挙げている企業が多いことが分かりました。
- 電子契約の仕組みや安全性に関する調査の実施(34.6%)
- 自社の稟議フローや関連規定などの確認と整理(33.8%)
- 電子契約導入による費用対効果の算出(32.3%)
- 自社の契約書の実態把握(30.0%)
- 起案にあたっての社内への説明や理解促進(28.5%)
- 複数ある電子契約の調査や比較項目の検討(28.5%)
また、実際に電子契約を導入した企業においても、社内からの質問対応や操作トラブル、取引先への周知などに負担を感じている企業が多いという結果が出ています。
導入時の課題やトラブルへの対応
導入率が伸びない2つ目の要因として、電子契約導入時・導入後に生じた課題解決の負担が挙げられます。
トラブルへの対処方法は主に「自社で解決する」場合と、「ベンダーのサポートを活用して解決する」場合の2種類があり、約4割が「自社で解決した」と回答していました。
このことから、電子契約ベンダーのサポートを活用している企業が少ないという現状が明らかとなり、今後はベンダーサポートの活用方法の周知が大きなポイントになると考えられます。
企業の総務・法務を担当する従業員がベンダーサポートをフル活用することで、スムーズな電子契約の導入や脱ハンコ・ペーパーレス化に繋がっていくと言えるでしょう。
従来の書面契約と比較した場合のメリット
ここからは、従来の書面契約と比較した場合の、電子契約のメリットについて解説していきます。
収入印紙代などのコスト削減
従来の書面契約では、契約書類の印刷代(プリンター・インク・用紙)や郵送代(封筒・切手)、またこれらの作業に伴う人件費といった様々なコストが生じていました。
電子契約の場合は一連のやり取りがオンライン上で完結するため、上記の費用を大幅に削減することができます。
また電子契約なら収入印紙も不要となることから、高額な契約を必要とする企業においては更なるコスト削減メリットを得られるでしょう。
契約に関連する業務の効率化
書面契約の場合、書類の作成から郵送に至るまで、印刷や製本などの様々な作業が必要となり、最終的な契約締結までに1週間以上かかるケースも少なくありません。
一方、電子契約であれば作成データをそのままシステム経由で送受信できるため、早ければ数分程度で契約を完了させることができるのです。
また書類作成に充てていた時間を別の業務に回せることで、業務効率化・生産性向上にも繋がります。
コンプライアンス強化
デジタル署名・タイムスタンプ機能を用いた電子契約の場合、アクセスログや操作ログが全て記録されます。
そのため、従来の書面契約と比較してなりすましや改ざんのリスクが低いのが特徴。
またクラウド上で契約書類を管理できることで、BCP対策という観点においてもメリットのあるシステムと言えるでしょう。
まとめ
- 日本国内における電子契約の導入率は、2021年9月時点で約3割
- 導入率を上げていくためには、総務・法務の従業員がベンダーのサポートをフル活用していくことが大切
- 電子契約にはコスト削減や業務効率化といったメリットがあるため、DXやBCP対策の面でも早期の導入が推奨される
電子契約の導入率はコロナ禍をきかっけに上昇傾向となっていますが、社内フローの変更や周知対応などに負担を感じて足踏みしている企業が多いのも現状です。
今後はベンダーサポートの充実を図り、導入に対するハードルを下げていくことが重要になっていくでしょう。