電子契約・電子署名を新たに導入する際の方法、メリット、注意点
電子契約・電子署名を新たに導入する際の方法、メリット、注意点

電子契約・電子署名導入の準備とリスク

業務上の契約書で署名や印鑑が不要となる「電子契約」をご存知でしょうか。

新型コロナウイルスによる感染拡大によって、オンラインコミュニケーションが充実するにつれ、オンラインで契約締結手続きを全て完結できる電子契約サービスを業務に導入する企業が増えています。

目次

そもそも電子契約とは?

そもそも電子契約とは?

電子契約とは、デジタル化した契約書にインターネット上で電子署名を行い、ストレージなどにそのデジタル契約書を保管することをいいます。

契約条文を印刷・製本した紙の契約書に署名捺印・記名押印し、ファイリングして保管する方法が、今までの主流でした。電子契約は、その主流に代わって登場した、新たな契約形式です。

電子契約では、契約当事者本人が確かに契約内容を了承した事実を示す「電子署名」に加えて、契約書データ原本の内容が改ざんされていない裏付けとなり、電子署名が行われた日時などを裏付ける「タイムスタンプ」を組み合わせます。

そうした客観的証明に関する一連のデジタル技術によって、電子契約は紙の契約書に署名捺印・記名押印することと、同等以上に強い証明力が担保されるのです。

電子契約は、2001年に始まった電子署名法によって、法律的に有効なものとなりました。

初めのうちは、契約当事者のみでお互いに電子署名の手続きを行う「当事者型」の電子署名が一般的でしたが、導入コストが嵩むなどの理由であまり普及しませんでした。

ところが、2015年頃から電子契約の専門業者が「立会人」となって、クラウドストレージ上で契約当事者同士の電子署名を行う「事業者型(立会人型)」が普及しています。

たとえば、PDFファイルを初めて開発した世界的なアプリ企業であるAdobe(アドビ)が提供している「Adobe Sign」や、弁護士ドットコムが提供し、国内シェア1位を誇っている「CLOUD SIGN(クラウドサイン)」など、現在では様々な電子契約事業者が、国内外の電子契約サービス導入企業の契約締結を支えています。

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の調査によれば、2020年の時点で、すでに電子契約システムを導入している企業(従業員50名以上の規模)が43.3%、電子契約システムの導入を検討している企業が27.5%となっています。国内企業の過半数が導入するのも時間の問題といえるでしょう。

また、「ITR Market View」の市場調査によれば、電子契約サービスの市場規模は2020年の時点で売上金額ベースにおいて100億円を超えていて、わずか3年間で成長率が5倍にまで拡大しています。

このような急速な普及は、事業者型の電子契約サービスが一般的になり、導入やシステムメンテナンスがより簡単になっていることが理由として挙げられます。

電子署名導入のメリット

電子署名導入のメリット

もし、御社が新たに電子契約を導入するとき、従業員の日常業務にもたらすメリットとして考えられる事例は次の通りです。

労働生産効率の向上

日本は先進諸国の中でも業務の労働生産性が低いと指摘されて久しい国です。企業の生産効率を下げている原因のひとつとして「ハンコ文化」があるのかもしれません。

会社の印鑑が乱用されないように管理者を決めたり、必要な従業員にそのつど貸し出したりする手続きも、煩雑で手間がかかります。それだけでなく、契約書の内容を印刷、製本し、相手方へ郵送する手間も無視できません。

その点、電子契約を導入すれば、印鑑を用意したり探したりする必要がなくなり、PCの操作のみで完結します。よって、普段のオフィス業務の延長上で契約締結を済ませることができます。

新型コロナウイルスによる感染拡大が起き、外出自粛の一環で会社従業員の間でテレワークが広まっている状況が2020年から2021年にかけて続いています。

にもかかわらず、「契約書に捺印しなければならない」という業務ひとつだけで、出社しなければならない従業員もいたようです。

電子契約を導入すれば、テレワークでも契約締結業務を行うことができますので、緊急の出社で従業員をむやみに感染リスクにさらすこともありません。

契約締結手順の管理がしやすくなる

たとえば営業部などが進めているそれぞれの契約についての進捗状況を、総務部や経理部などのバックオフィス部門が把握することがあります。

従来型の紙の契約書を使っていれば、契約締結の進捗状況・スケジュールの把握業務は、個別にメールを送ってもらうなどの連絡を待つ必要があります。ときにはその連絡が漏れる可能性もあるでしょう。

その点、電子契約を導入していれば、電子契約事業者が提供しているサービス上で、進捗状況をリアルタイムに共有できます。法務や総務、経理と、営業部門との間で、業務上の連携を強めることもできます。

契約書の保管場所の削減

法律では、契約が締結された後、契約書を一定期間(7~10年)保管しなければならないと義務付けられています。従来の紙の契約書では、一連の関連書類とともに製本・ファイリングを施した上で保管しておかなければなりません。

よって、そのために棚を設置しなければならず、業務が発展するにつれて、オフィスもそのぶん狭くなってしまいます。

その一方、電子契約を導入した契約書の内容はデータとしてクラウドストレージ上に保存されます。オフィスの空間を別の目的で有効に活用できます。多くの契約書の中から目的のものを探すのも、検索機能で簡単にできます。

印紙税の削減

契約書を作成するときは、契約の目的物の額や種類に応じて、それに見合う額面の収入印紙を貼らなければなりません。

しかし、電子契約サービスを利用すると、収入印紙を貼らずに済み、印紙税を節約することができます。契約1件あたりの印紙税額は多くないかもしれませんが、契約件数が多い企業ほど、印紙税の削減効果は大きいのです。

導入の方法・準備

導入の方法・準備

電子契約を導入するためには、電子契約サービスの提供業者とオンラインで契約して、専用のアカウントを作成すれば、基本的にすぐ使い始めることができます。

契約の本数に応じて費用が課金される従量制の場合や、月々一定額の費用を支払えば使い放題のサブスクリプション型などがあります。

お試し無料プランを提供している業者がありますので、複数の業者が提供する電子契約システムの間で比較検討した上で導入するといいでしょう。

基本的には、他の一般的なWebサービスの導入方法と変わりません。

導入する際に、社内ないし社外に前もって相談・告知をしておくことが望ましいです。特に業務上の調整が必要なのは、日常的に契約を結んでいる取引先企業に電子署名の導入を打診し、準備を万全にしておくべきでしょう。

まだ電子契約サービスを導入していない取引先であれば、前もって利用法を説明しておかなければなりません。企業の業務の性質上、どのような契約が多いのかで、いくつかある電子契約サービスの中からどれを導入するのかを社内で調整して決めなければなりません。場合によっては、契約書の書面と電子データを併用せざるをえないこともありえます。

すでに電子契約サービスを導入している相手方であっても、お互いに使っているサービスが異なる場合、まずどちらを優先的に使うのか、規程を整備しておく必要があるでしょう。

電子契約の注意点・課題

電子契約の注意点・課題

しかし、電子契約サービスを導入するにあたっては、いくつか注意すべき課題点・問題点があります。

電子契約を導入できない契約がある

たとえば、不動産関連であれば、有効期限の定めがある不動産の貸し借り、具体的には「事業用定期借地契約」「存続期間50年以上の定期借地契約」「更新のない定期建物賃貸借契約」については、電子契約サービスを導入することができません。

これらの契約は、公証役場で公正証書としての契約書を作成しなければ、法的に有効とならないからです。

また、農地の賃貸借契約も、地方自治体が管轄しており、毎月の賃料などの契約条件を明記した署名の作成が農地法などで義務づけられています。やはり、電子契約サービスを導入することができません。

サイバー攻撃を受けるリスク

電子契約を導入した場合、社内外からサイバー攻撃を受けて、遠隔操作で電子署名が改ざんされたり、契約書の内容が差し替えられたりすることによって、思わぬ損害を受ける事例があります。

契約内容が改ざんされるリスクは、電子契約を導入する場合のみに限りません。印鑑が不正使用されるなどで紙の契約書でも改ざんが起きる危険性があります。

しかし、IT技術が悪用されることによって、不正に契約内容が書き換えられたり、外部に情報が漏洩されたりして、しかも不正侵入の痕跡まで残らない事例もありうるのです。

よって、電子契約サービスを導入する場合、印鑑を管理する場合とは全く異なる次元でのセキュリティ対策も並行して導入する必要があり、常に安全性に留意しなければなりません

御社で導入を検討している電子契約サービスにおいて、どのようなサイバー攻撃回避策が設けられているか、あらかじめ確認しておきましょう。

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