事業者署名型電子契約の法的効力とは?電子署名法の概要や政府見解を解説!
事業者署名型電子契約の法的効力とは?電子署名法の概要や政府見解を解説!

事業者署名型電子契約サービスは法的に有効? 政府見解を含めて解説!

「事業者署名型(立会人型)電子契約サービスは法的に有効?」

と疑問に感じていませんか。

そもそも民法522条により契約はいかなる形式でも成立するため、電子契約は法的に有効です。しかし、事業者署名型電子契約サービスにより電子署名付与をすることで真正性を確保できることができるか、一時期議論がありました。

そんな中、2020/7に事業者署名型電子契約サービスによる真正性の確保は法的効力をもつとの政府見解が公表されています。

当記事では、事業者署名型電子契約サービスの法的効力や電子署名法以外の確認すべき法律までを政府見解を参照しながらご紹介します。

目次

事業者型電子契約は法的効力を持つ?

まず、そもそも事業者署名型電子契約が法的効力を持つか、政府見解を織り交ぜて確認していきます。

そもそも契約はいかなる形式でも成立する

民法522条2項で契約はいかなる形式でも成立すると記載があります。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

つまり、極端な例を出せば、口頭での契約であっても契約は成立するというものです。しかし、契約が成立するとはいえ、口頭など証跡が残らない形式での契約では係争時に証拠の信頼性を疑われかねないので、多くの契約では契約書を残しています。

電子契約は法的に有効だが、かつては真正性に疑いがあった

書面契約では、確実に本人により契約され、改ざんがされていないこと(真正性)の証明として印鑑の付与を実施しています。

この書面契約による印鑑の役割を電子契約では電子署名によって代替しています。一方で、電子契約サービスのタイプによって、この電子署名を付与する方法に違いがあるため、注意が必要です。

電子契約には大きく2つのタイプがある

電子契約サービスには電子証明書を利用者本人が発行する必要があるか否かによって、以下の2タイプがあります。

  • 事業者署名型
  • 当事者署名型

当事者署名型は読んで字のごとく、利用者本人が電子証明書を発行し、電子署名を付与するタイプです。利用者自身で電子証明書を発行するため、万が一、係争になった場合に、事業者署名型よりも信頼性に優れると見込まれています。しかし、電子証明書の発行に手間とコストがかかる点が課題です。

一方、事業者署名型は、利用者が発行した電子契約に事業者が代理で電子署名を付すタイプです。利用者は電子証明書を発行する必要がないため、簡単に電子契約サービスを利用できる点にメリットがあります。多くのユーザは事業者署名型を利用しているようです。

事業者署名型は利用者本人により電子署名が付与されない為、真正性に疑いがあった

事業者署名型は利用者自身が電子証明を発行しないため、便利である反面、事業者による電子署名が、電子署名法に定められる電子署名の要件を満たすのかというポイントを疑われていたことが過去にありました。

電子署名法第2条では以下の通り、「当該措置を行った者」による署名を求めていますが、事業者署名型は該当しないのではないかという論争です。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。   
一 当該情報が
当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。   
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

2020/7に公表された政府見解により事業者署名型の真正性が証明された

上述したような事業者署名型電子契約サービスにより付与される電子署名の真正性について、2020/7に政府見解が公表されています。

結論、事業者署名型により付与された電子署名は、電子署名法第2条で求められるような「当該措置を行った者」による電子署名として認めると政府見解が公表されています。該当の政府見解は以下の通りです。

利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。

この政府見解を解釈すると以下の理由から、事業者署名型電子契約サービスによる電子署名は真正性を確保すると考えることができるでしょう。

  • 技術的・機能的にみて事業者署名型電子契約サービスによる電子署名は、サービス事業者の意思が介在する余地がない。
  • また、利用者の意思に基づいて機械的に署名が付与されている。

電子署名法以外に注意したい政府見解

上述で電子署名法に対する政府見解を紹介しましたが、電子署名法以外にも政府見解が提供され、確認が必要な法律がいくつかあります。以下では電子契約を利用するのであれば、確認したい政府見解が出されている法律を紹介します。

2022/1改正電子帳簿保存法

電子契約は電子とはいえ契約書ですので、税法に基づいた保存が必要です。税法上では、電子的な国税関係帳簿書類の保存方法に対して電子帳簿保存法という法律を定めています。

電子契約は電子取引に該当しますので、電子帳簿保存法電子取引要件に基づいた保存が必要です。2022/1に電子帳簿保存法は改正され、電子的なやり取りをしている文書の電子保存が必須になっています。

もし、電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存をしていない旨が国税調査時などで指摘された場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので、対応が必要です。

電子帳簿保存法電子取引要件では、以下の要件を満たした保存を要求しているので、いまだ対応をしていない場合には早期に対応ができるように確認を進めてください。

  • 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
  • 見読可能装置の備付け等
  • 検索機能の確保
  • 真実性の確保

ただし、2021/12に公表された税制大綱上で、電子取引要件の紙保存措置廃止の2年宥恕(ゆうじょ)が政府見解として公表されています。したがって、すぐに電子取引要件の保存ができていなくても、一旦は紙での保存が2023/12まではOKです。とはいえ早期に対応が必要な事実は変わりませんので、注意しましょう。

2021/9施行デジタル改革関連法

そもそも、すべての契約書を電子契約化できるわけではありません。不動産業で利用する一部の契約書などでは、現行、原本の電子契約化を法的に禁じています。一方、昨今流行している新型コロナウイルスの影響で、社会的にリモートワークを求められる背景もあり、契約書の電子化も強く求められています。

このような背景もあり、2021/9にデジタル庁により公表されたデジタル改革関連法の中の政府見解で、これまで電子契約化が禁止されていた契約書の電子化が認められつつあります。

例えば、以下の文書は遅くとも2022/5までに電子化可能な見込みです。自社で電子化予定の契約書がある場合はデジタル改革関連法も含めてご確認ください。

  • 売買の媒介契約書(宅建業法34条)
  • 賃売の重要事項説明書(宅建業法35条)
  • 賃貸借契約書(宅建業法37条)
  • 売買契約書(宅建業法37条)

事業者署名型電子契約サービス導入のメリット

事業者署名型電子契約サービスによる真正性確保の政府見解を紹介してきましたが、事業者署名型電子契約サービスの導入メリットとは何でしょうか。以下で確認します。

簡単に電子契約サービスを始められる

上述で紹介したとおり、事業者署名型電子契約サービスであれば電子証明書の発行が不要ですので、当事者型と比較して簡単に電子契約サービスの利用開始できる点が最大のメリットです。

実際に、大多数のお客さんは事業者型電子契約サービスを導入しているようです。世界No1シェアを誇る電子契約サービスがDocuSign(事業者署名型)であることからも、事業者署名型のシェアが大きいことがわかります。

印紙税などコストの削減効果

電子契約サービスを導入することで以下のコスト削減効果を見込めます。

  • 印紙税の削減
  • 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
  • 監査コストの削減 など

世界No1シェアを誇るDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では1通あたり2,500円のコスト削減効果を確認・公表していることからも、電子契約サービス導入によるコスト削減効果を見込めるといえるでしょう。

取引のリードタイム短縮

郵便法が2021/10に改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日と、書面契約の取引リードタイムの長期化が懸念されています。この点、事業者署名型電子契約サービスであれば、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付することで、取引のリードタイム短縮を期待できます。

加えて、多くの電子契約サービスでは、契約書のテンプレート登録や一括送信機能などがクラウドシステム上に搭載されている場合も多いですので、契約書の作成・送付・管理工数の圧縮、リードタイムの短縮を期待できます

まとめ 事業者署名型電子契約サービスを利用して契約業務を効率化しよう!

2020/7に公表された政府見解により事業者署名型により付与された電子署名の真正性が証明されました。したがって、政府見解を元に安心して事業者署名型電子契約サービスを利用していただいて結構です。

一方、電子署名法以外にも電子帳簿保存法など政府見解が出ていて、かつ、電子契約サービスユーザであれば確認が必要な法律や政府見解がいくつかありますので、漏れなく確認するようにしてください。

当事者型と比較して事業者署名型の方が簡単に利用できます。事業者署名型を利用して契約業務を効率化していきましょう!

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