「金銭消費貸借契約書って電子契約サービスを利用できる?」
「金銭消費貸借契約書を電子契約化した場合の法的有効性は?」
と疑問に感じていませんか。
金銭消費貸借契約書は電子契約化可能です。また、電子契約化したときに電子署名を付与することで書面契約と同様に係争時の証拠として利用ができます。
また、金銭消費貸借契約書を電子契約化することで印紙税の削減や取引のリードタイム短縮などが期待できるため、電子契約化がおすすめです。
ここからは、金銭消費貸借契約書を電子契約化できる理由や金銭消費貸借契約書を電子契約化した場合のメリットまでをご紹介します。
金銭消費貸借契約書は電子化できる?
冒頭でご紹介した通り、金銭消費貸借契約書を電子契約化できます。以下では電子契約かできる理由をご紹介します。
そもそも、金銭消費貸借契約書とは
金銭消費貸借契約書とは、お金の貸し借りの際に利用される契約書です。一般的に借用書と呼ばれることが多く、住宅ローンなども金銭消費貸借契約書といえます。
書面で金銭消費貸借契約書を作成する場合、借入金額や利息、返済期限など、具体的な債務の内容を記載した上で、貸主・借主双方の署名・押印した文書を2通作成し、お互いに1通ずつ所持するのが一般的なようです。
銀行などの金融機関から借り入れをする場合には必ず金銭消費貸借契約書が作成されます。
金銭消費貸借契約書の電子契約化は可能
そもそも、契約は民法522条2項に記載の契約方式自由の原則によって、いかなる形式でも成立します。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
つまり、口頭などの目に見えない形式であっても成立するのです。したがって、電子契約も有効に成立します。ただし、契約が成立することと、万が一の係争時に証拠として利用できることは別問題である点に注意が必要です。
電子署名を付与することで真正性の確保も可能
民事訴訟法228条1項では、係争時の証拠として利用するためには真正性が確保される必要があるとしています。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
では、電子契約でどのように真正性を確保しているかというと、電子署名を付与することで真正性を確保しています。電子署名を付与して真正性を確保できる旨が電子署名法3条に記載があります。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
したがって、金銭消費貸借契約書は電子契約化可能です。また、電子署名を付与すれば係争時の証拠として提出することもできます。
民法587条2項でも電子化可能な旨の記載がある
上述のように、金銭消費貸借契約書は電子署名を付与して電子契約化することで、書面契約と同様に利用できます。一方で、契約書の中には、個別の法律上で電子契約を禁止しているものもあります。
このため、金銭消費貸借契約書は個別の法律の中で電子契約化を禁止しているのでは?と疑問に感じる方もおられると思います。この点について、結論、個別の法律上でも金銭消費貸借契約書の電子契約化を認める記載がありますので、安心してください。
民法587条4項 を参照すると以下の記載があります。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
つまり、消費貸借契約書を電子契約化しても、書面契約と同様に扱いますよと記載がされています。
電子契約化するメリット
消費貸借契約書を電子契約化するとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では電子契約化した際のメリット・ポイントをご紹介します。
印紙税などを削減できる
書面で消費貸借契約書を作成する場合、契約書上に記載のある金額に応じて印紙税が課税されるため、収入印紙を契約書上に添付する必要があります。例えば、500万円~1,000万円の契約金額であれば、10,000円が課税されます。
金融機関の場合、日常的に金銭消費貸借契約書が作成されますので、印紙税によるコストは大きいでしょう。この点、電子契約サービスを導入・利用すれば印紙税を非課税にできます。
印紙税は課税文書に課税される
印紙税が課税される文書を課税文書と呼んでいます。課税文書は文書のタイトルから識別されるのではなく、文書の内容によって判断可能です。この課税文書に対して課税される旨が印紙税法2条の記載からわかります。
文書(略)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある
電子契約は非課税
課税文書の例が印紙税法第2条別表第1に記載されており、こちらを参照することで課税文書であるか判断できます。この別表第1を参照する限り、電子契約の記載がないため、非課税であると予想ができます。
また、印紙税法2条でいうところの課税文書とは、印紙税法44条を参照すると”書面”を対象としていることがわかります。
第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
つまり、電子契約は書面ではないので、印紙税が非課税であると判断できるでしょう。
印紙税削減以外にもコスト削減を見込める
電子契約は非課税であるのに加えて、電子契約サービスを導入して契約業務を効率化することで契約業務のコストを大きく削減できます。電子契約サービスを導入することによるコストメリットは以下の通りです。
- 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
- 監査コストの削減
- 内部承認フローの削減 など
電子契約サービスで世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果を実現したと公表しています。
この事例からもわかる通り、電子契約サービスを効果的に導入することで印紙税の削減効果のみならず、電子契約のコスト削減効果を最大化できることがわかるでしょう。
住宅ローン融資手続きなどの取引のリードタイムを短縮できる
金銭消費貸借契約書を書面でやり取りする場合、取引のリードタイムが長期化する場合があり、企業、消費者両方にとって課題になる場合があります。この点、金銭消費貸借契約書を電子契約化することで取引のリードタイム短縮を期待できます。
金銭消費貸借契約の中の住宅ローンを例としてリードタイム短縮の効果を紹介します。書面で住宅ローンの金銭消費貸借契約書を締結する場合、以下の流れを取る場合が多いようです。
- 内覧などを完了させ契約の意思を消費者が企業に示す
- 消費者の年収や他社からの借り入れ情報などから住宅ローンの融資が可能か企業が事前審査を実施する(事前申し込み:1週間程度)
- 事前申し込みを完了させた消費者の収支状況や購入する物件の詳細状況から厳密な審査を実施し、住宅ローンの融資可否を決定する(本申し込み:2週間程度)
- 本申し込み後、消費者と企業で消費貸借契約書を締結する。
- 企業が住宅ローンの融資を実行する。
電子契約を利用する場合も、住宅ローン融資は基本的には上記と同様の流れをとります。ただし、電子契約サービスを利用する場合には事前申し込みや本申し込みにかかる住宅ローン融資のリードタイムの短縮を期待できます。
なぜなら、書面契約では契約書の物理的なやり取りに時間がかかりますが、電子契約サービスを利用すればメールのやり取りで契約を締結できるからです。
事前申し込み、本申し込みで延べ3週間程度のリードタイムを短縮できることで、企業からすると消費者の心変わりをある程度予防できるメリット、顧客からしても負担なく契約を締結できる点にメリットがあります。
法対応を容易にできる
金銭消費貸借契約書は国税関係書類に該当しますので、各種税法に基づいた保存が必要です。特に金融機関の場合、税務対応不備によるレピュテーションリスクの懸念が強いですので、税務対応の厳格化が必要です。
この点、電子契約サービスを利用して金銭消費貸借契約書を作成することで、法対応を容易に実施できます。
電子契約サービスの中には電子帳簿保存法や法人税法など、各種税法に対応した以下のような機能を搭載している場合が多いため、システム上で容易に税法対応ができるでしょう。
- 電子契約サービス上でのファイルの長期保存
- タイムスタンプの付与
- タイムスタンプの一括検証
- 主要三項目(契約日、契約金額、取引先名)による検索 など
まとめ 電子契約サービスを導入して金銭消費貸借契約書を電子化しよう!
金銭消費貸借契約書は電子契約化できます。金銭消費貸借契約書を電子契約化したとしても、電子署名を付与して作成することで書面契約と同様に法的に有効である上、係争時の証拠として利用できますので、安心して電子契約の導入が可能です。
金銭消費貸借契約書を電子契約化する際には電子契約サービスの利用がおすすめです。電子契約サービスを導入して金銭消費貸借契約書を電子契約化することで、印紙税削減のほか、コスト削減や取引のリードタイム短縮など多数のメリットを見込めます。
金銭消費貸借契約書を電子契約化するのであればぜひ電子契約サービスの導入をご検討ください。