「電子契約サービス導入によってどのような課題が生じるのか」
「課題に対応する電子契約サービス上の機能とは?」
と疑問に感じていませんか。
電子契約サービス導入後、相手方との調整や法対応などいくつか課題が生じますので、各課題への対応が求められます。特に法対応では対応が漏れると、国税調査時にペナルティを課される場合があるため注意が必要です。
当記事では、電子契約サービス導入時に生じる課題4つ、課題に対しての解決策を解説します。
電子契約サービス導入時に生じる課題4つ
電子契約サービスを導入する場合、以下の4つの課題が生じます。各課題について解説をします。
- 課題①:相手方との調整が必要
- 課題②:電子契約の法対応が必要
- 課題③:電子契約の真正性の証明が必要
- 課題④:すべての契約書を電子契約化できるわけではない
課題①:相手方との調整が必要
電子契約サービスを導入する際、相手方に導入の承諾を得る必要があります。この際に、業務上の調整次第では電子契約サービスを導入せず、書面契約の利用を継続する場合がありますので、丁寧な調整が必要です。
相手方から電子契約サービス導入の承諾を得る必要がある
電子契約サービス導入時には、相手方に導入する予定の電子契約サービスを業務上で紹介する必要があります。この時、相手方が電子契約サービスを既に導入しておらず、電子契約の使い方に不安を感じる場合には丁寧な説明が必要です。
相手方が不安に感じるポイントは以下の通りです。各ポイントに対して、相手方の不安を消すように説明をするようにしてください。
- 電子契約の法的な有効性
- 電子契約サービスの業務上の利用方法
- 電子契約サービスを業務上で利用する際の手間とコスト など
相手方も電子契約サービスを利用している場合、どちらのサービスを利用するか決める
相手方がすでに電子契約サービスを導入している場合、自社/相手方いずれの電子契約サービスを導入して電子契約を締結するかを調整する必要があります。
調整する際の比較ポイントとしてよく利用されるのは以下の通りです。
- 比較ポイント①:登記可能な電子証明書を保持するサービスか
- 比較ポイント②:システム上で税法対応ができるか
- 比較ポイント③:グレーゾーン解消制度により認められたサービスか
特に比較ポイントとして利用されるのは、登記可能な電子証明書を保持するサービスであるかどうかです。電子文書を登記に利用する場合、法務省が指定する電子契約サービスを利用する必要があります。
この時、法務省によって認可された電子契約サービスが以下に列挙されていますので、利用予定のサービスが該当するかが確認ポイントとなるでしょう。
法務省が認可したサービスであれば、業務上で問題なく導入してよいだろうという合意を得やすい方法です。
書面契約の利用を継続する場合もある
もし、双方で折り合いがつかない場合、書面契約による契約締結を継続するケースがあります。このケースになった場合、せっかくお互いに電子契約サービスを利用しているのに、効率化のメリットを受けることができません。
調整時のポイントを押さえることで、電子契約サービスを最大限利用する方向で調整をすすめましょう。
課題②:電子契約の法対応が必要
契約書は税法上の国税関係書類に該当します。したがって、各種税法に基づいた保存が必要です。
電子帳簿保存法への対応が必要
電子契約は相手方と電子契約をデータとしてやりとりしますので、以下の電子帳簿保存法電子取引要件を満たした保存・管理が必要です。
- 電子計算機処理システムの概要を記載した書類を備付けること
- 見読可能装置を備付けること
- 検索機能を確保すること
- 真実性を確保すること
このうち、システム導入時に課題となりやすいのが以下です。
- 検索機能を確保すること
- 真実性を確保すること
システム上において主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)で検索ができるのか、タイムスタンプを付与して保存・管理することができるのかが導入時のポイントとなるでしょう。
法人税法への対応が必要
法人税法上で7年間(繰越欠損金や特例を踏まえると最大で11年4か月間)保存・管理する義務があります。したがって、電子契約サービス上で長期間保存・管理することが可能であるか課題になる場合があります。
導入する電子契約サービスによっては、保存・管理する電子契約の容量に応じて課金される従量課金制を料金プランにとっているサービスもありますので、導入時に確認をしておきましょう。
想定よりも保存・管理にコストがかかってしまったといった事態になりかねません。
対応が漏れるとペナルティの可能性がある
電子契約に税法上で求められる要件を満たさずにシステム上で保存・管理して、国税調査時に指摘をされた場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので注意が必要です。確実な保管対応が求められています。
課題③:電子契約の真正性の証明が必要
民事訴訟法228条にある真正性を満たすために、電子契約では電子署名を付与することで真正性を証明しています。しかし、電子署名を付与したからといって、真正性を確実に証明できるかというとそうではないので、注意が必要です。
電子署名を付与することで真正性を証明できるがリスクがある
電子署名を付与した後、以下のような真正性が損なわれる課題・リスクがあります。各課題に対応した機能を保持する電子契約サービスの導入が重要です。
- リスク①:なりすましリスク
- リスク②:電子署名の有効期限切れリスク
リスク①:なりすましリスク
一般的に利用されることの多い立会人型の電子契約サービスを利用している場合、相手方に契約締結用のユニークなURLが記載されたメールを送付することで、契約締結を実施できます。
この時、相手方のメールアカウントが第三者によって侵入されるなどして、無関係な第三者によって電子署名されてしまうリスクがあります。このリスクをなりすましリスクと呼んでいます。
この課題・リスクに対応するために有効な手段の一つが二要素認証です。したがって、電子契約サービス導入時には、導入する予定のサービス上で二要素認証を利用できるかが1つの確認ポイントとなるでしょう。
リスク②:電子署名の有効期限切れリスク
電子署名法施行規則6条では、電子署名に5年間の有効期限を設けています。しかし、法人税法上では電子契約を最低7年間の保存が必要です。
つまり、法人税法上で求められる長期間、保存しようと考えると電子署名の有効期限切れが課題になるのです。この有効期限切れ課題に対して、長期署名を導入することで対応ができます。
長期署名とは、電子署名に対してタイムスタンプを重ね打ちすることで、電子署名の有効期限を延長することができる技術です。
したがって、電子契約サービスを導入する際には長期署名が利用できるかが1つの確認ポイントとなります。
課題④:すべての契約書を電子契約化できるわけではない
2022/5に施行された改正宅建業法などによって、ほぼすべての契約書の電子契約化が可能になっているものの、一部の契約書は引き続き書面契約を求められているため、注意が必要です。
デジタル改革関連法施行によりほぼすべての契約書の電子化が可能になった
2021/9に施行されたデジタル改革関連法によって、45の法律に対して、「押印・書面の交付等を求める手続の見直し」が実施されました。結果、ほぼすべての契約書の電子契約化が可能になっています。
不動産業界など、これまで書面契約が義務付けられていた契約を多数抱える業界・業種ではこの法律の施行によって、契約業務DXが進むことが予想されているのです。
一部の契約書は引き続き書面契約による締結が求められている
しかし、公正証書が必要な契約や特商法関連の契約などは引き続き書面契約による契約締結を求められているため注意が必要です。
とはいえ、残る書面契約が義務付けられた特商法関連などの契約についても、電子契約化できる方向で調整が進んでいると公表されていますので、今後も法律改正の動向を見守る必要があるでしょう。
課題に対応した電子契約サービスを導入しよう
ここまで解説をしてきた課題の多くに対して、対応した機能を搭載する電子契約サービスを導入することで対応ができます。
メリット①:法対応に容易に対応できる
電子契約サービスの中には、電子帳簿保存法や法人税法など各種法律に対応した機能を搭載したサービスがあります。法対応に課題感を持つ場合は、以下のような法対応可能な機能を搭載したシステムを導入するようにしましょう。
- タイムスタンプの付与
- 主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)による検索
- タイムスタンプの一括検証
- バージョン管理
- システム上での電子契約の長期保存 など
メリット②:真正性を脅かすリスクに対応がしやすい
電子契約サービスの中には、電子署名の有効期限切れやなりすましリスクなど、各種リスクに対応した機能を搭載したサービスも存在します。したがって、サービス導入時には以下の機能が搭載されているかを確認するとよいです。
- 長期署名の付与
- 二要素認証
- SMSによる認証 など
まとめ 契約業務をシステムよって効率化しよう
電子契約サービスを導入する場合、発生する課題は事前に把握可能です。したがって、事前に導入時に発生する課題を把握しておき、課題に対応可能な電子契約サービスの導入が重要になります。
特に税法対応上の課題などは、対応がもれるとペナルティを課される場合も想定されますので、課題に対応が可能な機能を保持するシステムを導入するようにしてください。各課題に対応したシステムを導入して、契約業務を効率化していきましょう!