「電子契約は税務調査の対象になる?」
「電子契約が満たすべき保存要件とは?」
と疑問に感じていませんか。
契約書は国税関係書類ですので、税務調査の対象になります。契約書が電子になったからといって例外ではありません。また、電子契約を保存する際には各種税法で求められる要件を満たして保存が必要です。
もし要件を満たしていないで保存をしていた場合、税務調査時にペナルティを課される場合もありますので注意しましょう。
当記事では、電子契約が税務調査対象になる理由、税務調査時に電子契約が満たすべき税法上の要件までを解説します。
電子契約は税務調査の対象になる
税務調査の対象は国税関係帳簿書類です。その中で契約書は、物やカネの流れを直接的に示す書類である国税関係書類に該当するので、税務調査の対象になります。
電子契約は電子ですが、国税関係書類であることには変わりはないので、もちろん電子契約も税務調査の対象となるのです。
国税関係書類である電子契約は各種税法に基づいた保存が必要です。例えば、以下の税法に従って保存が税務調査上で求められています。
- 電子帳簿保存法
- 法人税法 など
電子帳簿保存法で満たすべき要件とは
電子契約が満たすべき電子帳簿保存法の要件を解説します。電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類を保存することを認めた法律です。保存対象となる帳簿・書類によって以下4つの要件区分があります。
- 国税関係帳簿の保存区分
- 国税関係書類の保存区分
- スキャナの保存区分
- 電子取引の保存区分
電子取引要件を満たした保存が必要
電子契約は相手方と文書を電子データ(原本)でやりとりしますので、電子帳簿保存法の保存区分の中で、以下の電子取引の保存区分を満たしてファイルの保存が必要です。
- 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け
- 見読可能装置の備付け等
- 検索機能の確保
- 真実性の確保
検索性の要件とは
検索性の要件では税務調査上で最低、以下の主要三項目で原本データを検索できる必要があります。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
ここで最低といっているのは、上記の主要三項目でよいのは税務調査時に国税官からの原本データに対するダウンロードの求めに応じることができるという前提条件があるからです。
ただし、税務調査時にどのような原本データを要求されるか、一問一答上などでも不明確であるため、多くの企業では税務調査への安全策として、上記の主要三項目に加えて、範囲検索および2項目以上の複数条件検索で検索することができるようにしているようです。
真実性の要件とは
真実性の要件では以下の要件の内、原本データに対して自社の都合のよい要件を選択して実施する要件です。
- タイムスタンプが付された後の授受、またた、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すこと
- データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用すること
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けること
最も簡単に原本データの真実性を担保する手段はタイムスタンプの付与ですが、利用コストが懸念されます。コストをかけずに実施したい企業の場合、事務処理規定を作成して真実性を確保する場合が多いようです。
紙保存措置廃止要件とは
2022/1に電子帳簿保存法は改正され、電子取引要件も全体的に要件が緩和されました。一方で、一部担保措置が設けられています。それが、紙保存措置廃止要件です。
2021/12以前までは、電子取引した文書を書面保存しても、電子帳簿保存法電子取引要件を満たしていると見做され、問題ありませんでした。
しかし、2022/1以降は原則、電子取引したデータはデータとして保存することが義務付けられているのです。
要件を満たしていない場合、ペナルティになる可能性もある
ここまで紹介してきた電子取引要件への対応漏れを税務調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しのリスクがありますので注意ください。
とはいえ、2024/1までは電子契約を書面保存していたからといって、税務調査時にただちにペナルティを課されるわけではありません。(宥恕措置による)
しかし、近い将来に対象文書の電子保存が義務化されますので、税務調査への用意の意味でも早期に電子取引要件対応をするようにしましょう。
書面を電子化する場合はスキャナ保存要件への対応が必要
契約文書を電子契約化して、電子取引した電子契約と一元管理したいとの要望がある場合があります。しかし、契約文書を電子契約化する場合、電子帳簿保存法スキャナ保存要件を満たして文書保存をする必要がある点に注意が必要です。
スキャナ保存要件は電子取引要件とは異なるため、別途要件に対応して保存方法を検討ください。
もし書面契約を電子契約化して保存しているのにも関わらず、要件を満たして保存をしていない旨を税務調査時に指摘された場合、こちらも税務調査上のペナルティの対象になりえます。
導入する予定の電子契約サービス上で電帳法対応ができるか確認しよう
電子契約に求められる電子帳簿保存法の要件を満たす最も簡単な方法は、電子契約サービス上で要件を満たしてしまうことです。したがって、導入する予定の電子契約サービス上で要件対応することができるかの確認が必要になります。
例えば、以下の機能を搭載しているか確認が必要です。
- タイムスタンプの付与
- 主要三項目(取引年月日、取引先名、取引金額)の属性情報をデータへ付与および検索
- タイムスタンプの一括検証
- バージョン管理
- 税務調査用のアカウントの払い出し など
法人税法に基づいた保存が必要
電子契約は法人税法上で求められる期間、保存が必要です。
7年以上の保存が必要
電子契約は法人税法上で最低7年間の保存義務があります。繰越欠損金がある場合や特例を受ける場合などを考慮すると、最大で11年4か月の保存義務があるのです。
電子契約が電子帳簿保存法電子取引要件の紙保存措置要件を満たさなければならないことも考えると、税務調査上はシステム上で7年以上の保存が求められる点に留意ください。
法人税法についても、要件を満たして保存をしていない旨を税務調査時に指摘される場合がありますので、税務調査への対応は十分にしておく必要があります。
導入するサービス上で長期保存が可能か確認しよう
もし、電子契約サービス上で法人税法上求められる期間保存をすることを考えるのであれば、利用予定の電子契約サービス上で長期保存をすることができるか確認が必要です。
電子契約サービスによっては、システム上での長期保存をすることができない場合があります。
また、電子契約サービス上で長期保存をすることができても、保存する文書量に応じて課金される、従量課金制をとっている場合もあり、想定以上にコストがかさむ懸念もあるのです。
電子契約サービス上で授受した電子契約は必ずしも電子契約サービス上で保存要件を満たす必要はありませんので、電子契約サービス上に長期保存する場合のコストを鑑みて、他システムに電子契約を移行して保存するかの検討も必要になるでしょう。
まとめ 税務調査に向けて電子契約を保存しよう
電子契約は税務調査の対象になりますので、各種税法に基づいた保存をするようにしましょう。税務調査時に思わぬ指摘を受けてペナルティを課されないためにも、事前に求められる要件の把握がポイントです。
もっとも簡単に税務調査に対応ができるのでは、法対応可能な電子契約サービスの利用です。法対応をすることができる電子契約サービスを利用して、税務調査に対応し、かつ、契約の関連業務を効率化していきましょう!