電子契約で代理署名は可能?代表から代理人への権限移譲含めて解説!
電子契約で代理署名は可能?代表から代理人への権限移譲含めて解説!

代理署名とは?電子契約における有効性やリスクについて解説!

「電子契約利用時に代理署名は可能?」

「代理署名をする際のリスクと対応方針は?」

と疑問に感じていませんか。

電子契約を利用する際に代表者以外の従業員が代理署名するケースが一般的にあります。しかし、代理署名は契約書の真正性をおびやかすリスクもありますので、リスクへの対応が必要です。

当記事では代理署名の概要、代理署名を実施する2つのパターン、代理署名に生じるリスクへの対応方針を紹介します。

目次

代理署名は一般的に実施される

代理署名は一般的に実施される

契約書への署名には代表者の氏名で署名がされる場合が多いです。しかし、実務上では代表者は多忙であるため、代表者以外の従業員による代理署名をするケースが一般的にみられます。

以下では電子契約における代理署名の法的有効性や電子署名の考え方について解説をします。

真正性の証明には本人の押印や電子署名が必要

そもそも、契約書を裁判時に証拠として利用しようと考える場合、民事訴訟法228条1項にあるように真正性を証明する必要があります。

書面契約の場合、本人の押印がされていれば、民事訴訟法228条4項により真正性を証明可能です。では、電子契約においてどのように真正性を証明するかというと、電子署名を付与することで証明します。

電子署名を付与することで真正性を証明可能な旨を電子署名法3条で確認ができるのです。

実際に電子署名付きの電子契約が証拠として利用された判例が少なからず存在するため、電子契約に電子署名を付与すれば書面契約と同様に裁判時の証拠として利用できると考えてもよいでしょう。

実務上では代理人による署名が一般的

実務上では、代表者に代わり従業員が代理署名するケースが一般的なようです。なぜなら、ある程度大きな組織の場合、代表者がすべての電子契約に目を通すことが物理的に難しいからです。

したがって、代理署名にあたり、無権代理(契約締結権限のない人物による契約締結)のリスクが発生します。このリスクに対応するために多くの企業では契約締結権限を委譲し、契約締結をする業務フローを実施しているようです。

一方で、中には明確に契約締結権限を委譲せず、あいまいな取り決めの中で契約締結をしている企業もあります。

押印や電子署名が付与されていれば代表者の意思が反映されているとみなされる

権限委譲を明確に実施するにしろ、しないにしろ、電子契約に電子署名が付与されていれば、だれが署名したかまでが問われるケースは多くありません。

なりすましリスクや無権代理のリスクはあるものの、電子署名が付与されていれば電子契約は真正に成立していると判断されることが多いです。

極論を言えば、仮に契約締結権限を持たない従業員によって、無承認で契約を締結してしまっても、問題にされることはほとんどありません。

法的にいっても、電子署名が付与されていれば、電子署名法3条により真正性は証明できますので、代表者の意思によって署名されると捉えられるのです。

無権代理のリスクは残る

これまでの実務上では上記のように電子契約に対して無権代理による電子署名であっても見過ごされることが多かったようです。

しかし、そもそも日本においては訴訟数が少ないので、今後無権代理による電子契約への電子署名が有効であるとみなされないケースも出てくることも予想されます。

したがって、もしもの訴訟に備えて無権代理のリスクに備えることは必要であると考えられているのです。

代理署名を実施する2つのパターン

代理署名を実施する2つのパターン

企業で代理署名を実施するパターンは以下の2通りです。各パターンにおける特徴を把握するようにしてください。

  • 代理署名パターン①:権限委譲された代理人が署名する
  • 代理署名パターン②:権限委譲せず代理人が署名する

代理署名パターン①:権限委譲された代理人が署名する

代表者から契約締結権を従業員に委譲して代理署名するパターンです。法的に言えば、会社法14条上で代表者から委任を受けた人物名義による代理署名は認められているので、このような権限委譲も有効であるとされています。

(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)
第十四条 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

契約締結権を委譲する際には、以上内容を明記した委任状の作成が求められます。電子署名を利用する場合には、電子委任状を作成するのがおすすめです。

経済産業省・総務省により電子委任状には以下の項目を記載することが求められています。

  • 委任者(法人の代表者)
  •  受任者(代理権を付与される従業員)
  •  代理権の具体的内容
  •  代理権の制限
  •  代理権の有効期間
  •  その他、委任者または電子委任状取扱事業者が必要と認める事項

上記の内容を電子委任状に明記したうえで、以下3パターンのいずれかの方法で作成することを電子委任状法では求めています。

  • 委任者記録ファイル方式
  • 電子署名方式
  • 取扱事業者記録ファイル方式

とはいえ、電子委任状はまだまだ日本においては普及していないのが実情です。もし、代理署名対応において、電子委任状での対応が難しければ、書面による委任状により対応ください。

代理署名パターン②:権限委譲せず代理人が署名する

代表者から従業員に権限委譲せずに代理署名するパターンもあります。上述したとおり、権限委譲しないまま代理署名をしたとしても、現状、問題になることは少ないです。

しかし、もし裁判時に契約書の真正性を争うことになった場合、代理人による代理署名が有効でないと判断されるケースが想定されます。有効でないと判断された場合、電子契約は無効になりますので、裁判上不利になるのです。

したがって、権限委譲を回避して、代理署名により電子署名を付与する場合には、代理署名が代表者の意思によって署名されていることを何かしらの方法で証明する必要があるでしょう。

代理署名に潜むリスクの対応方針

代理署名に潜むリスクの対応方針

代理署名をする場合、代表者の意思によって署名していることを証明する必要があります。もし、証明できない場合、裁判時に契約の真正性を疑われかねませんので対応が必要です。対応方針として、大枠で以下の5つがあります。

  • 電子契約の方針①:代表者自身のメールアドレスか確認する
  • 電子契約の方針②:代理承認する場合は委任状を提出してもらう
  • 電子契約の方針③:無権代理を防ぐために社内規定を提出してもらう
  • 電子契約の方針④:メール認証時にCCに代表者を入れるようにする
  • 電子契約の方針⑤:役職者による契約締結のみを認める

電子契約の方針①:代表者自身のメールアドレスか確認する

電子契約サービスを利用する場合、多くの場合で立会人型サービスを利用すると思います。この場合、契約締結時に利用されるメールアドレスが代表者によるものであると確認ができれば、それ以上の確認は不要です。

なぜなら、代表者本人のメールアドレスを従業員が共有していることは実務上考えづらいため、代表者の意思により署名していると考えられるからです。

とはいえ、ITリテラシーの高さによっては代表者のメールアドレスを従業員間で使いまわしているケースもありますので注意が必要でしょう。

電子契約の方針②:代理承認する場合は委任状を提出してもらう

立会人型電子契約サービスを利用して代理署名をする場合、最も手堅い方法は委任状や電子委任状を提出してもらう方法です。

代理する従業員のメールアドレスを明記してもらうことで、代表者の意思による電子契約締結であることを証明できます。実務上では書面の委任状を提出してもらっている企業が多いようです。

電子契約の方針③:無権代理を防ぐために社内規定を提出してもらう

委任状や電子委任状を提出してもらえれば、代理署名対策としては最も手堅いですが、委任状の提出を拒まれる場合があります。その場合に取る方法が社内規程を提出してもらう方法です。

社内規定を提示してもらうことで、電子契約を締結しようと考えている相手方に契約締結権限があることを確認できます。

電子契約の方針④:メール認証時にCCに代表者を入れるようにする

社内規定すら手に入らない場合があります。その場合には電子契約締結時に相手方に送付するメールCCに代表者を含むようにしてください。

代表者をCCに含むことで、もし電子契約を締結している相手方に契約締結権限がなかったとしても、代表者によるみなし追認、または、監督責任があったと主張がしやすくなるとも考えられます。

電子契約の方針⑤:役職者による契約締結のみを認める

もっとシンプルに対応する例として、役職者による契約締結のみを認めるという方針があります。部長や課長などの一定以上の役職者であれば契約締結権限を持っているだろうと仮定して、それ以上の確認をしない方針です。

この方針であれば、業務負荷を上げることなく対応ができるものの、実際に契約締結権限を持っているか不明である点にデメリットがあります。

無権代理を防ぐ際にはクラウド型電子契約が有効

無権代理を防ぐ際にはクラウド型電子契約が有効

ここまで紹介をしてきた代理署名に伴うリスクですが、リスク対応にはクラウド型の電子契約サービスの利用がおすすめです。なぜなら、クラウド型電子契約サービスであれば以下を実現できるからです。

  • 契約締結に至るまでの商談や事実確認連絡をメールアドレスに紐づけが可能
  • 電子署名の日時やプロセスを正確なログとして残すことが可能

上記のメリットがあることで、電子契約の真正性が疑われた場合にも、真正性が有効であると主張がしやすくなるでしょう。

まとめ 電子契約を利用して契約業務を効率化しよう

まとめ 電子契約を利用して契約業務を効率化しよう

電子契約を利用する場合にも、従業員による代理署名が主流になる場合が多いです。

会社法上で代理署名が認められているものの、電子署名法上では電子署名に本人性(本人の意思により署名したことを証明する)要件がありますので、代理署名をする際には代表者の意思表示を何かしらの形式で残す必要がある点に注意が必要です。

代理署名に含まれるリスク対応にはクラウド型の電子契約サービスがおすすめです。クラウド型の電子契約サービスであれば、代理署名対策はもちろん、既存の契約業務の効率化もできますので、ぜひこの機会に導入をご検討ください。

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