「電子契約においてバックデートって問題になる?」
と疑問に感じていませんか。
電子契約サービスを利用する場合、タイムスタンプの付与設定が可能ですので、バックデートを見つけやすくなります。
バックデートと聞くとすべてが違法行為のように聞こえますが、そうではありません。バックデートは不正になる場合とならない場合がありますので見極めが重要です。
当記事では、そもそもの契約締結日の定義やバックデートが問題になる/ならない場合、バックデートへの対応方法までご紹介します。
そもそも、契約締結日とは
本題に入る前に、そもそもの契約締結日の定義について解説します。
契約締結日とは
契約締結日とは、契約の相手方と契約内容について合意をした日です。特に事前の取り決めがない場合、契約開始日と契約締結日は同一になります。
ただし、契約実務においては、契約締結日とは別に効力発生日を定義する場合があるため、必ずしも契約締結日と契約開始日は同一にならない点に注意してください。
契約締結日と契約書作成日はズレる場合がある
原則的には契約締結日と契約書作成日は同一であることが好ましいですが、契約締結日と契約書作成日に違いがでる場合があります。例えば、3/31が契約締結日であった場合に、内部的な事情で契約書作成日が4/2になる場合などがあります。
したがって、事前に契約の相手方と契約締結日をいつにするかのすり合わせが必要です。契約締結日の決め方は例えば以下があります。
- 契約書に記載した契約開始日を締結日とする
- 最初に署名・押印した日付を締結日とする
- 最後に署名・押印した日付を締結日とする
- 合意形成のあった時点の日付を締結日とする
- 全当事者からの報告を受けた時点の日付を締結日とする
実務上で採用される場合が多いのは「最後に署名・押印した日付を締結日とする」パターンです。ただし、このパターンは最後の署名者が日付を自由に変更することができる点にリスクがあります。
そこで、リスクを嫌う大企業などでは、「全当事者からの報告を受けた時点の日付を締結日とする」パターンを採用する場合が多いようです。各担当者の社内稟議が完了した時点を契約締結日とすることでリスクの低減を図っています。
バックデートが問題になる/ならない場合とは
上述で紹介した、「最後に署名・押印した日付を締結日とする」のパターンの場合、何かしらが原因で、相手方の押印や署名が遅れ、契約締結日より前に契約が開始されてしまう場合があります。
この、契約締結日よりも先に契約開始日が来てしまう状況をバックデートと呼んでいます。ただし、このバックデートは必ずしも不正に該当するわけではありません。以下ではバックデートが不正になる場合、ならない場合について解説します。
バックデートが問題にならない場合
バックデートが問題にならない場合とは、契約締結日に関わらず契約開始日が特定日付であると合意が取れている場合です。
例えば、以下の場合が該当します。
- 決算処理で忙しい3/30に相手方から3/31の製品の納品を求められたため、製品を納入。しかし、内部的な処理が間に合わなかったことから、「3/30を契約締結日にする」ことで合意をしたうえで、4/2に契約書を作成。
上記の場合、実際に契約書を作成した日付以前に、納品をしてしまっているのでバックデートに該当します。
とはいえ、事前に契約締結日を3/30とすると合意を取っているうえ、内部の処理上、不正の意図はないので、不正なバックデートに該当しません。良いバックデートに該当します。
しかし、バックデートと判断されるのではと不安がある場合は契約の末尾に例えば、以下のような文言を記入するとよいです。
「本基本契約は、契約締結日にかかわらず、2021年3月30日に遡求して適用する/2021年3月30日から効力を有するものとする」
バックデートが問題になる場合
バックデートが問題になる場合がいくつかあります。
意図的に不正を意図して実際の契約日をずらしている場合
決算期の売上を大きく見せるために、本来であれば来期に計上すべき売上を今期の売上とすべく、契約書上の契約締結日を当期に変更するようなバックデートは不正に該当しますので注意ください。
このようなバックデートが不正でよく利用されるため、会計監査時などでは主な確認ポイントとなっています。
契約締結日に契約権限を持たない人間によって契約締結されている場合
法人で代表が入れ替わることがよくあります。新代表が入れ替わる前の日付(3/30)を契約締結日として、新代表が就任する日(4/1)と前後してしまう場合、契約締結日において、新代表は契約締結権限を保持していないため、証拠力に疑義が生じる点に注意ください。
暦上存在しない日付を契約締結日とする場合
月末にまとめて契約書を作成するなどの運用をしていると、暦上存在しない日付を契約締結日とする契約書が作成される場合があります。
例えば、2/29(閏年)が存在しない年度に2/29を契約締結日とした契約書が作成されるケースなどが該当するでしょう。この場合も契約書の証拠力に疑義が生じるため注意が必要です。
不正なバックデートを防ぐには電子契約サービスの利用がおすすめ
上記の通り、バックデートだからといって必ずしも不正につながるわけではありません。とはいえ、不正につながるバックデートは早期に検知する必要がありますので、電子契約サービスの利用がおすすめです。
電子契約サービスは不正でないことを証明しやすい
書面契約の場合、バックデートにつながる以下の課題があります。
- 作成日時に対する客観性が保たれていない
- 日付の改変が容易
- 契約書作成までに日時がかかる
この点、電子契約サービスを利用すると、タイムスタンプを付与することで客観的、かつ、改変が難しい作成日時の付与することができるため、上記の課題を解消できます。
また、電子契約サービスには、契約書テンプレート登録機能なども搭載されているため、契約書作成日時の短縮も期待することができるでしょう。
つまり、電子契約サービスを利用すれば、正しく成立しているバックデート、不正に成立しているバックデートを見極めやすくなる点がメリットです。
電子契約や関連文書の信頼性を向上させられる
電子契約サービスを利用することで、これまで不透明であった契約業務のプロセスを可視化できます。
つまり、任意の日付で契約書を作成できてしまう書面契約と比較して、電子契約は作為的・不正な操作ができないため、企業の契約プロセスそのものの信頼性を向上させることができます。
契約書上に契約締結日が遡る旨さえ記載すれば、実務上は問題ありません。むしろ、電子系やサービスによりタイムスタンプを付与することで、不正なバックデートを防げる点に電子契約サービスの最大のメリットがあります。
電子契約サービス導入によるメリットとは
電子契約は不正なバックデートを防げるだけでなく、以下のメリットを見込めるため、導入がおすすめです。
印紙税の削減などコスト削減が可能
電子契約サービスを導入することで、以下のコスト削減効果を見込めます。
- 印紙税の削減
- 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
- 監査コストの削減 など
電子契約サービスで世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では、1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。この事例からも電子契約サービスによるコスト削減効果は大きいとわかるでしょう。
取引のリードタイム短縮を期待できる
2021/10に郵便法が改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日になりました。したがって取引のリードタイム長期化が懸念されます。
この点、電子契約サービスを利用すると、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで契約締結が完了できるため、取引のリードタイム短縮を期待できます。
また、電子契約サービスには以下のような取引のリードタイム短縮を実現する機能が多数搭載されていますので、書面契約と比較してリードタイム短縮が期待できます。
- ワークフロー機能
- 契約書のテンプレート登録機能
- 一括送信機能 など
まとめ バックデートは不正に該当するとは限らない
バックデートと聞くと、すなわち不正であると誤解されますが、必ずしもそうではありません。とはいえ、バックデートが不正でないことを証明するためには、契約締結日が遡る旨などを契約書上に記載が必要ですので注意ください。
不正なバックデートを防止する以外にも電子契約サービスには、コスト削減効果を見込める点など、いくつかメリットがありますので導入がおすすめです。
電子契約サービスを導入して契約業務を効率化していきましょう!