「電子契約書を作成する方法が知りたい。知っておくべき法律や注意点は?」
「電子契約サービスを導入メリットは?サービス選定時のポイントが知りたい」
と疑問に感じていませんか。
電子契約書を作成する場合、民法や税法など確認すべき法律があります。office365のWordなど文書作成ツールで対応する方法でも契約書は作成できますが、法対応や管理のしやすさを考えると電子契約サービスを導入したほうがメリットに勝るでしょう。
当記事では、電子契約書を作成する際に確認が必要な法的ポイント、電子契約の作成方法、電子契約サービスの選び方、電子契約書の作成時の注意点までご紹介します。
電子契約書を作成する際に確認が必要な法的ポイント
電子契約書の作成方法を検討するにあたり内容を確認し、遵守しなければいけない法律があります。以下、法律の概要と電子契約書へ反映させるポイントを紹介します。
契約書の定義(民法第522条1項、電子署名法第2条)
民法第522条1項に以下の記載があり、契約の定義が示されています。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
上記から、契約は必ずしも書面である必要はないことが読み取れます。したがって、電子契約書は法的に有効です。
ただし、係争時に契約書は証拠として裁判所に提出されることがあるため、文書の信頼性を確保する必要あります。文書の信頼性は本人性および非改ざん性から成り立ち、この要素を保証するのが電子署名です。
電子署名法第2条では電子署名の定義を以下のように示しています。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
上記から電子署名を構成するのは以下2要素であることがわかります。
- 電子署名が本人によって署名されたことが証明できること(本人性)
- 電子署名後に改ざんされていないことが証明できること(非改ざん性)
したがって、上記の要素を兼ね備えた電子署名(デジタル署名)を付与する方法をとることで電子契約書を作成し、係争時の信頼性を確保する必要があります。
税法上求められる要件(電子帳簿保存法10条)
国内取引で使用する電子契約書は税務・会計上決算申告に関連する書類であるため、電子帳簿保存法10条に記載がある電子取引要件を満たす必要があります。電子契約書に求められる要件は以下の通りです。
- 電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備え付け
- 見読可能装置の備え付け
- 検索機能の確保(主要3項目での検索など)
- 真実性の確保(タイムスタンプの付与、事務処理規定の作成など)
また、書面の契約書と同様に確定申告書の提出期限の翌日から7年間(繰越欠損金がある場合は10年)の保存義務がある点にも注意が必要です。
電子契約書の作成方法
電子契約書の作成方法は大枠2つの方法があります。
- 文書作成のアプリケーションを利用する方法
- 専用のアプリケーションを利用する方法
文書作成のアプリケーションを利用する方法
office365のWordやExcelやAdobeAcrobatのPDFなどの文書作成アプリケーションを利用して電子契約書を作成する方法です。
ただし、WordやExcelなどでは、電子帳簿保存法に求められる検索性を担保するためにプロパティを付与が難しく、ファイル名で対応する必要がある点に注意が必要です。また、ファイル名で検索性を担保する場合、ファイル数が多くなると管理運用が煩雑になる課題となる方法といえるでしょう。
加えて、電子帳簿保存法に求められる真実性確保に求められるタイムスタンプなどを付与できない、電子契約書作成後、メール添付などで相手方に送付の運用負荷が高いなどの課題があります。
専用のアプリケーションを利用する方法
電子契約サービスなど専用のアプリケーションを導入して電子契約書を作成する方法です。電子契約サービスを導入し、利用する場合の流れ例は以下の通りです。
- 担当者が電子契約サービス上でテンプレートを元に電子契約書を作成する。
- 相手方にメールで契約締結用のURLを送付する。
- 相手方は受領したメールに記載のURLをクリックし、内容を確認する。内容に認識齟齬がなければ契約を締結する。
この方法であれば文書作成アプリケーションを活用する方法の課題を解消できます。
専用アプリケーションによる対応方法が一般的
既に所持している文書作成アプリケーションを活用する方法であれば、無料かつ現状の運用をほぼ変えることなく電子契約書を作成できるメリットがありますが、デメリットも多いです。
一方で、電子契約サービスなど専用アプリケーションを活用する方法であれば、コストはかかるものの、文書作成アプリケーションで対応した場合の課題を解消することができるでしょう。
また、電子契約サービス導入による契約書作成の工数削減や取引のリードタイム短縮、印紙税削減などのメリットを考えれば、電子契約サービス導入のコストは回収できると考えられます。
したがって、一般的には電子契約サービスを活用する方法で電子契約書を作成する方法をとる方が多いようです。
サービスの選び方
ここまで紹介をしてきた方法や法的ポイントを踏まえて、電子契約サービスの選び方をご紹介します。
電子帳簿保存法に求められる要件を満たせられるか
上述の通り、国内取引で電子契約を実施する場合電子帳簿保存法に対応する必要があります。したがって、電子契約サービス上で電子帳簿保存法に対応する場合は以下2点をシステム上で利用できるか確認しましょう。
- 検索機能の確保(主要3項目での検索など)
- 真実性の確保(タイムスタンプの付与、事務処理規定の作成など)
ただし、電子帳簿保存法への対応は必ずしも電子契約サービス上で実施する必要はなく、所持している他システムを活用する方法で対応していただいて結構ですので留意が必要です。
電子契約サービスを他文書管理ツールなどに統合する方法で対応する場合も多いようですので、統合する方法をとれるか、統合した事例があるかも確認ポイントになります。
電子契約サービス上で最低7年間保管できるか
電子契約サービス上で電子契約書を保管する場合、システム上で7年以上保管ができるかが確認ポイントです。
オンプレミスであれば、保管容量はサーバスペックに依存するため、そこまで注意する必要はありません。どちらかというと、クラウドで保存する場合に注意が必要です。
クラウド上で保管する場合、50GB毎にストレージを購入して保存が必要などの料金プランが用意されているかと思いますので、料金プランを確認し、電子契約サービス上で保管するか検討をしましょう。
また、必ずしも電子契約サービス上で保管し続ける必要はない点に留意が必要です。お持ちのシステムに電子契約書を移し替える方法でも対応ができます。
契約業務を効率化する機能が搭載されているか
電子契約サービスを導入することで、契約業務を効率化できます。したがって、所属企業の求める機能要件を満たしたサービスであるか確認しましょう。
例えば、社内稟議を効率化したいのであればワークフロー機能、社内のセキュリティを強化したいのであれば、契約書別のアクセス制御などです。
ただし、電子契約サービスの機能概要や導入メリットはホームページ上だけではわかりづらい場合が多いですので、無料の試使用プランなどを利用して機能概要を把握することをおすすめします。
注意点
導入メリットが大きい電子契約サービスですが、一部注意点があります。
一部の契約書は原本の電子保存ができない
一部の契約書では原本の電子化が認められていないため、注意が必要です。例えば、不動産業の一部の契約書では、一回の契約金額が大きいため原本の電子化が認められていません。
原本の電子化が認められていない契約書例は以下の通りです。
【公正証書の作成が必要とされる類型】
- 事業性貸金契約の保証契約(民法465条の6)
- 定期借地契約(借地借家法22条) など
【書面交付が必要とされる類型】
- 宅地建物売買等の媒介契約書(宅建業34条の2)
- 宅地建物売買等契約における重要事項説明時に交付する書面(宅建業法35条) など
ただし、契約書の電子化自体が禁止されているわけではない点に注意が必要です。書面の原本を保管し、社内での検索性や管理をしやすくするために、電子文書も二重で保存する手法も考えられます。
署名の方法により係争時の信頼性に違いがある
電子契約サービスを利用する場合、電子契約書の真正性を確保するために電子署名(デジタル署名)を付与しますが、デジタル署名の付与方法により電子契約書の係争時の信頼性が異なる点に注意が必要です。
一般的に当事者型の方が立会人型と比較して係争時の信頼性は高いと言われています。したがって、係争時に備えるのであれば当事者型の電子署名(デジタル署名)を付与可能な電子契約サービスを導入しましょう。
まとめ 電子契約サービスを導入して書面業務を効率化しよう!
電子契約書を作成する方法は文書作成アプリケーションまたは専用アプリケーションを利用する方法の2通りあります。投資対効果を考えると電子契約サービスなど専用アプリケーションの導入がおすすめですので、ぜひご検討ください。
電子契約サービスを導入して書面の契約業務を効率化していきましょう!