「電子署名には複数種類がある?」「各種類の違いとは?」と疑問に感じていませんか。
電子署名とは電子文書が信頼できること(真正性)を証明する仕組みや技術の総称です。
したがって、技術の数だけ種類があると判断することもできます。ただし、一般的にはデジタル署名と呼ばれる技術が使われることが多いようですので留意ください。
また、エンドユーザが電子署名利用時に必要となる電子証明書を発行するか否かにより電子契約サービスの種類(タイプ)が変わる点もあわせて留意が必要でしょう。
当記事では、そもそもの電子署名の定義や仕組み、電子署名と電子印鑑など類似する概念種類間の違い、電子契約サービスの種類別の違いまでをご紹介します。
電子署名とは
まず、電子署名の定義や仕組みについて紹介します。
電子署名の定義
電子署名の定義は電子署名法第2条にあります。電子署名法第2条の記載は以下の通りです。
第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
つまり、以下の2要件を満たすものを電子署名と定義しています。
- 署名が本人の意思によって実施されたものであると証明できること(本人性の証明)
- 署名後、署名が改ざんされていないことを証明できること(非改ざん性の証明)
電子署名の仕組み
電子署名では上述の2要件を満たすために以下の技術を併用するのが一般的です。
- 公開鍵暗号
- 公開鍵暗号基盤(PKI)
- ハッシュ関数
上記の技術を以下のフローで利用することで、電子署名法第2条に求められるような要件を満たします。
- 電子文書の送信側は秘密鍵により、送信文書を暗号化した後、受け取り側にデータを送信します。
- その後、受信側は電子証明書が適切な電子証明書であるか認証局に確認します。
- 電子証明書が有効であると確認後、受信者側は公開鍵を利用して暗号化された文書を復号し、複合文書のハッシュ値を取得します。
- 複合文書のハッシュ値と受信した文書のハッシュ値が同一であることが確認できれば、改ざんなく文書が受信できたことを証明できます。
また、上記の技術のみを利用する場合、電子署名が「いつ」付与されたかを証明することが難しいため、タイムプスタンプの付与も同時に行われる場合が多いです。
タイムスタンプが付与されることで、タイムスタンプが付与される以前に電子文書が存在し、かつ、タイムスタンプの付与後に改ざんがされていないことを証明できます。
似た概念との違い
電子署名と混同されがちな概念の種類として以下があります。各概念種類と電子署名の違いを解説します。
- 電子印鑑
- 電子サイン
- デジタル署名
電子印鑑との違い
まず間違えられやすいのが電子印鑑です。
電子印鑑とは、印面を電子化した印鑑そのものを指します。書面契約で利用する印鑑と同様に、認印のような信頼性が低い種類や、実印のように信頼性が高い種類まで幅広くあります。
認印のような信頼性が低い種類の電子印鑑は、実際の印鑑をスキャニングし、画像化したような種類を指します。比較的容易に作成できる一方で、電子印鑑を本人が押したと証明することは難しいです。
一方で、信頼性が高い電子印鑑の種類とは、画像データに識別情報を持たせる種類の電子印鑑です。この電子印鑑を付与することで、電子署名と同様に本人性や非改ざん性を証明できるようになります。
電子サインとの違い
電子サインとは、契約の締結までの全プロセスを指します。
例えば、ある英会話スクールの入会希望者がいたとして、この入会希望者が契約内容の規程を一通り見た後、スマートフォン経由で入会用HPにログインし、契約書PDFを記入するまでのすべての流れを電子サインと呼びます。
電子署名と電子サインの違いは自社企業以外の第三者を経由しない点です。電子署名は第三者による本人確認(電子証明書の提出など)を実施しますが、電子サインは第三者の関与はありません。
したがって、企業においては見積書のやり取りなど、本人性などを重視しない業務に向いているでしょう。
つまり、電子署名は電子サインの一部と考えることができる点に留意ください。
デジタル署名との違い
デジタル署名とは、電子署名に求められる本人性や非改ざん性をシステム上で満たす技術手法です。
上述で紹介した通り、以下の技術を利用する技術手法をデジタル署名と呼称しています。
- 公開鍵暗号
- 公開鍵暗号基盤(PKI)
- ハッシュ関数
つまり、デジタル署名は電子署名の一部と考えることができるでしょう。
違いまとめ
以上の解説から、電子署名、電子印鑑、電子サイン、デジタル署名の役割の違いをまとめると以下のようになります。
電子印鑑 | 電子サイン | 電子署名 | 電子サイン | |
---|---|---|---|---|
定義 | 印面を電子化した印鑑そのものを指す | 電子取引における、押印や署名、本人の確認の代わりに行われる電子プロセス全般を指す | 電子サインの一部であり、電子文書が信頼できること(真正性)を証明する仕組みや技術の総称 | 電子サインの一部かつ電子署名の一部であり、電子署名に求められる本人性および非改ざん性をシステムに満たす技術手法 |
電子契約サービスには電子署名の使い方により2種類ある
電子契約サービスにおいて、電子署名の使い方(利用企業自身が電子証明書を発行するか否か)によって2種類あります。
ここからは、2種類の違いや、そもそも電子契約が法的に有効であるのか解説していきます。
そもそも電子契約は法的に有効か?
電子契約サービスに2種類あるという話をする前に、そもそも電子契約書が法的に有効であるか解説します。
結論、法的に有効です。民法522条2項により、契約締結に契約方式は問わないと記載があるため、電子契約書は法的に有効であると考えられます。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
したがって、極端な話をすれば口頭での契約締結も法的には有効です。
ただし、口頭など形が残らない形式で契約締結をする場合、後日係争になった場合に証拠の信頼性が問われることになることが多いことから、一般的には書類や電子で契約書を残しています。
法的に有効であるが係争時の信頼性に違いがある場合がある
上述で紹介した通り、電子契約書は法的に有効であるものの、係争時の信頼性をいかに確保するかが大事になってきます。
電子契約サービスを利用して契約書を締結する場合、利用者自身が電子証明書を発行するか否かにより以下の2種類が存在します。
- 立会人型
- 当事者型
立会人型
立会人型の電子契約サービスの場合、多くの場合で契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付することで契約締結が完了する種類が一般的です。
したがって、利用者自身で電子証明書を発行する必要がないため、手軽に始められる点にメリットがあります。一方で、当事者型と比較すると係争時の信頼性に劣る点が懸念点です。
ただし、現在電子契約サービスを利用しているユーザの多くは手軽さを重視し、立会人型を利用しているようです。頭の片隅に置いて、サービス選びをしてください。
当事者型
当事者型の電子契約サービスを利用する場合、利用者自身で電子証明書を発行するため、係争時の信頼性を高めることができる点がメリットです。
一方で、電子証明書の発行には手間とコストがかかることから、重要な契約書を締結する時のみに当事者型を利用するユーザが多いようです。
一部の電子契約サービスではハイブリッド型も利用可能
当事者型、立会人型の種類差によりメリット・デメリットがありますが、両種類のいい点を活用できるハイブリッド型の電子契約サービスも存在します。
ハイブリッド型であれば、送信側の自社企業は係争時の信頼性を高めるために当事者型を利用し、受信側の相手方企業は負担を減らして契約締結をするために立会人型を利用するような使い方をできます。
電子契約サービスを導入するメリット
電子署名や類似種類の概念の違い、電子契約サービスの種類による違いと、細かな差がたくさんあるが、そこまで理解してまでも電子契約サービスを導入する必要があるのか?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
以下では導入のメリットを紹介します。
印紙税削減などコストメリット
電子契約サービスを導入することで以下のコストメリットがあります。
- 印紙税削減
- ペーパーレスによる契約書の保管・管理コストの削減
- 監査コストの削減 など
特に印紙税の削減効果は大きいです。
印紙税は契約書上に記載された契約金額により課税金額が変わりますが、1通あたり2,000~円かかる場合も多く、削減できた場合のコストメリットは大きいといえるでしょう。
実際に世界No1シェアを業界で誇るDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと試算しています。
取引のリードタイム短縮
2021/10に郵便法が改正され、普通郵便の最短配送日が翌々日と取引のリードタイム長期化が懸念されます。
特に海外企業とのやりとりや、NDAなど頻繁にやり取りを実施する契約書を扱い場合はなおさら取引のリードタイム長期化が課題でしょう。
電子契約サービスを導入すると、立会人型を利用すれば契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで契約締結が完了するため、取引のリードタイム短縮を期待できます。
まとめ 種類を理解した上で業務効率化・コスト削減できるサービスを選ぼう!
電子署名とは、電子署名法に定義されているように本人性と非改ざん性を証明するための仕組みや技術の総称です。
電子署名と類似する概念種類として電子サインや電子印鑑がありますが、別物ですので類似する概念種類間の違いを理解する必要があります。
また、電子契約サービスを導入するにしても、利用者自身が電子証明書を発行するか否かにより2種類ありますので、自社の運用に適した種類を選択して導入しましょう。
電子署名や電子契約には類似する概念種類がいくつかあるにしろ、電子契約サービスを導入した場合のメリットは大きいですので、前向きに導入をすすめることをおすすめします。