電子署名によって締結される電子契約については、双方合意の下で定められた契約期間とは別に、電子署名法における有効期限が設定されている点に注意が必要です。
この記事では、電子署名に有効期限が設けられている理由と、有効期限を延長するための方法を解説。
導入する電子契約システムを選ぶ際のポイントにもなる部分なので、電子署名の利用をお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
電子署名に有効期限があるのはなぜ?
従来の書面契約が双方の合意のみで契約期間を決められるのに対し、電子署名の場合は法律によって有効期限が指定されているというのはなぜなのでしょうか。
まずは、電子署名に設けられている有効期限とその理由について詳しく見ていきましょう。
電子署名の有効期限
電子署名の有効期限は、電子署名に付与する電子証明書(書面契約における印鑑証明書と同様の役割をもつ証明書)の有効期限によって決められます。
電子署名法施行規則の第6条4項に「電子証明書の有効期間は、五年を超えないものであること。」と明記されていることから、電子署名の有効期限は最大5年であることが分かります。(参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413M60000418002)
そのため、多くの電子契約システムでは電子署名の有効期限を1年~3年に設定しており、期間を過ぎてしまった場合は失効という扱いに。
有効期限を過ぎて失効扱いになると、本人による電子署名であるか、電子署名後にファイルが改ざんされていないかといったことを証明できなくなり、法的効力が弱まってしまいます。
電子署名に有効期限が設定されている理由
電子署名に有効期限が設定されている理由は、将来想定されるアルゴリズムの危殆化に備えるためです。
電子署名には電子証明書やタイムスタンプといった高度な暗号化技術が用いられており、これによって本人証明や非改ざん証明を行っています。
しかし、この暗号化技術が将来においても絶対的なものであるという保証はなく、技術の進歩によっては突破されてしまう可能性もゼロではないのです。
電子署名付きの文書の改ざんが可能ということになれば、電子証明書そのものの法的効力が失われてしまいます。
こうした事態に備えて電子署名には有効期限が設けられており、一定期間ごとに署名を更新または再締結する仕組みとなっているのです。
電子署名の有効期限切れを防ぐ「長期署名」の仕組み
電子署名の有効期限は一般的に1年~3年とされていますが、「長期署名」の仕組みを活用すれば有効期限を10年以上の長期に延長していくことが可能です。
続いて、長期署名に必要なタイムスタンプの概要と、タイムスタンプを使った長期署名のやり方について詳しく見ていきましょう。
タイムスタンプの役割
タイムスタンプとは、電子署名が付与された日にち・時刻を電子文書に記録するための技術です。
電子文書として法的に認められるには、「誰が」「何を」「いつ」という3つの要素を証明できる必要があり、タイムスタンプはこのうち「いつ」の証明に用いられます。
- 誰が……契約の当事者が内容を確認・合意していることの証明(本人証明)
- 何を……契約書が改ざんされていないことの証明(非改ざん証明)
- いつ……タイムスタンプが押された日時には契約書が存在していたことを証明する(存在証明)
タイムスタンプはそれ自体に10年の有効期限が設定されているため、タイムスタンプが付与された電子署名であれば、電子署名の有効期限も10年とすることが可能です。
タイムスタンプは時刻認証局(TSA)と呼ばれる第三者機関が証明を行うことから、電子署名のみの文書と比較して有効期限が長く設定されています。
電子署名の効力を10年以上維持するには
電子署名の効力を10年より更に長く維持したいという場合は、署名時に付与したタイムスタンプとは別に保管用のタイムスタンプを付与する「長期署名」の仕組みを利用します。
長期署名とは、電子署名の有効期限が切れる前に、その時点における最新技術のタイムスタンプを付与し直し、電子署名の有効期限を10年単位で延長していく仕組みのことです。
長期署名は繰り返し利用できるため、契約期間が20年・30年といった長期にわたる場合に大変役立ちます。
数年ごとに電子署名をやり直さなければならないというのは利便性に欠けるため、長期契約の機会がある場合は保管用のタイムスタンプ機能が搭載されたシステムを選ぶのがおすすめです。
電子契約サービスを導入する際は長期署名の対応を確認
電子契約システムの中には、保管用のタイムスタンプ機能に対応していないもの、また上位プランでなければ利用できないものなども少なくありません。
タイムスタンプの付与は電子帳簿保存法における電子文書の保存要件に含まれるため、タイムスタンプ機能のない電子契約システムを導入する場合は以下の方法で対応する必要があります。
- 電子文書の印刷および書面での保管
- 訂正及び削除を制限する社内規程の作成
保管用のタイムスタンプ機能がない電子契約システムでも利用には問題ありませんが、電子帳簿保存法に関わる契約書については、一部対応が必要となる可能性がある点を理解しておきましょう。
まとめ
- 電子署名の場合は1年~3年、タイムスタンプには10年の有効期限が設定されている
- 有効期限が設定されているのは、将来的なアルゴリズムの危殆化リスクに備えるため
- 保管用のタイムスタンプを繰り返し付与することで、有効期限を延長していくことが可能
長期契約を結ぶうえでタイムスタンプ機能は欠かせない機能の1つとなっています。
とは言えタイムスタンプ機能の有無は電子契約システムによってまちまちなので、事業に必要な契約書を見直しながら必要なシステムを選択していくことが大切です。