電子印鑑は電子契約で用いられるハンコのことですが、「普通の印鑑と同じ効力があるの?」「押印は必須なの?」など、効力・必要性に関して疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、電子印鑑が持つ法的効力や従来の印鑑との違い、また効力のある電子印鑑・印影画像を作成できるサービスについてまとめています。
そもそもの印鑑の役割や種類といった基本知識も掲載しているので、電子印鑑への切り替えでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
文書に印鑑を押印する意味とは?
まずは、書類に印鑑を押印することの意味や代表者印・会社印・角印といった印鑑の種類など、従来の印鑑に関する基本知識を確認しておきましょう。
書類に印鑑を押す理由
書類に対する印鑑の押印は、押印した人物がその書類を確認・承認したこと証明するために行うものです。
契約書や社内稟議書、身近なところでは回覧板や宅配便の受け取りサインなどが挙げられます。
また領収書のように、自分がその書類を作成したことを証明するために押印するケースもあります。
会社で使われている印鑑の種類
実際に会社で使用される主な印鑑の種類は以下の通りです。
役割 | 効力 | 用途例 | |
---|---|---|---|
代表者印 (会社実印) |
会社のトップが実印として使用する印鑑。登記の際に必ず届出を行う必要があり、法的・社会的な権利義務が発生する。 | ◎ | 株券発行・不動産取引・相続・連帯保証契約・企業買収など |
役職印 | 部長・課長など、特定の役職を持つ人物が用いる印鑑。役職者の意思表示としての効力を持っている。 | ○ | 契約書・社内文書・社内決裁・稟議書など |
銀行印 | 銀行や金融機関に対して届出を行った印鑑のこと。法的効力は強くないものの、資金移動・管理に関わるため厳重な管理が必要。 | ○ | 口座開設・資金移動・小切手や手形の発行・保険や証券の契約など |
会社印・角印 | 会社印・角印は会社における認印の役割を持つ。印鑑証明書の添付までは求められない程度の契約書などで使用する。 | △ | 見積書・請求書・領収書・発注書・社内向けの通達文書など |
個人印 | 社員が個人で使用する印鑑のこと。朱肉を使う印鑑だけでなくシャチハタなども使用可能。法的効力はないものの、押印には責任が伴う。 | △ | 宅配便の受け取り・出勤簿・伝票など |
電子印鑑の法的効力とは
続いて、電子印鑑と普通の印鑑との違い、また電子印鑑が持つ効力について詳しく見ていきましょう。
電子印鑑と従来の印鑑との違い
電子印鑑も従来の印鑑と同様、“書類の確認・承認および責任の証明“をするために用いられる印鑑です。
そのため、押印する意味や役割については、従来の印鑑と変わりないと言えるでしょう。
また、押印したことによる法的効力に関しても、双方の違いはありません。
そもそも印鑑を押すという文化は日本独自のものであり、契約に対する効力とは直接関係しない行為だからです。
実際に、経済産業省のWebサイトでは以下のように記載されています。
Q.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
・特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。
引用元:https://www.meti.go.jp/covid-19/ouin_qa.html
とは言え、本人証明を行うための要素として、押印のない書類よりもある書類の方が信頼度は高まります。
電子印鑑の効力とメリット・デメリット
電子印鑑も従来の印鑑も、契約に対する法的効力という部分では、大きな違いはないことが分かりました。
ただし、本人証明を行うための効力としては、電子印鑑よりも従来の印鑑の方が高いと言えます。
電子印鑑の効力が従来の印鑑に劣る理由としては以下が挙げられます。
- 目の前で書類に押印する場合と比べ、誰が押印したのかが分かりにくい
- 取引先の理解と協力が必要
- そもそも電子契約を利用できない文書がある(宅地建物売買等媒介契約・マンション管理業務委託契約など)
このような理由から、法的効力に違いがなくとも、従来の印鑑の方が汎用性や効力が高いと判断されるのです。
一方で、時代の流れとともに電子印鑑が主流となっていく可能性も十分に考えられます。
以下は電子契約に関する内容を定めた法律の一覧です。
法律名 | 概要 |
---|---|
電子署名法 | 電子署名に対し、紙への押印・サインと同等の法的効力を認めた法律 |
IT書面一括法 | Web・電子メールなどによる書類の交付を認めた法律 |
e-文章法 | 商法・税法により紙媒体での保管が義務付けられていた財務・税務関係書類などの電子化を認めた法律 |
電子帳簿保存法 | 特定の国税関係帳簿類の電子化を認めた法律 |
このように、2000年頃から書面契約の電子化に向けた動きは着々と進められており、電子署名を用いた契約であれば法的効力も認められるようになりました。
電子印鑑が従来の印鑑と同等の効力を持つ可能性も高く、今のうちから電子印鑑の扱いに慣れておく必要があると言えるでしょう。
効力を持つ電子印鑑を使用する方法
ここからは、電子印鑑の中でもできる限り効力の高い印鑑を作成するための方法を紹介していきます。
また法的効力が認められている「電子署名」の仕組みについても簡単に見ていきましょう。
情報が保存された電子印鑑をつくる
電子印鑑には大きく以下の2種類があり、どちらを利用するかによって効力が大きく異なります。
- フリーソフトや印影のスキャンなどを用いて印影を画像化した電子印鑑
- 印鑑に識別情報が含まれている電子印鑑
エクセルやフリーソフトでの印影作成、またスキャンなどで印影を画像化しただけの電子印鑑は、いつ・誰が押印したのかを証明することが難しく、また複製されるリスクが高いというセキュリティ面のデメリットがあります。
一方、印影に識別情報が含まれているものであれば、タイムスタンプや押印者の情報が残るため、本人証明の効力を持つ電子印鑑としての利用が可能です。
効力のある電子印鑑を利用できるサービスは基本的に有料となっており、主なサービスとして以下のようなものがあります。
Shachihata Cloud(シャチハタクラウド)
- WordやExcelのデータをアップロードしてPDFファイルに変換できる
- 既存の印影の他、オーダーメイドの印影データ作成にも対応
- 立会人型の電子署名も利用できる(ビジネス版のみ)
月額料金(税込) | スタンダード版:110円/ビジネス版:330円 ※印面数あたり |
---|---|
電子契約の仕組み | 電子印鑑の付与・立会人型による電子署名 |
モバイル対応 | ○ |
公式サイト | https://dstmp.shachihata.co.jp/ |
とろろこんぶシステム工房(tksk eSeal)
- 押印時にパスワード入力が必要となるセキュリティ機能付き
- 押印履歴を残すことができる
- あらかじめ搭載されている2,600名字に加え、独自の電子印鑑を作成することも可能
料金(税込) | 承認はんこ:68,000円/日付印ぺったん:62,000円 |
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電子契約の仕組み | 電子印鑑の付与 |
モバイル対応 | – |
公式サイト | http://www.tororokonbu.jp/ |
電子署名の仕組みを活用する
法的効力を持つ電子契約の仕組みとして「電子署名」があります。
電子署名では「公開鍵暗号方式」という技術が用いられ、認証局が発行する電子証明書によって本人確認を行う仕組みです。
暗号化された情報で契約を取り交わすため、データの改ざんや偽装リスクといったセキュリティ面の課題を解消できるのが特徴です。
ここでは代表的な電子署名サービスを3つご紹介します。
クラウドサイン
- 国内シェア80%を誇る業界トップの電子契約サービス
- 弁護士監修のもとで開発されており、法的に安心して利用できる
- サポート体制が充実している
月額料金(税込) | 11,000円~(+1送信ごと220円) |
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契約方式 | 立会人型 |
本人確認 | メールアドレス認証・アクセスコード認証 |
モバイル対応 | ○ |
DocuSign
- 44言語に対応しており、グローバルで活躍する企業におすすめ
- 350以上の既存システムと連携することができる
- SMSへの通知ができるなど、モバイル利用に特化した機能が備わっている
月額料金(税込) | 10$~ |
---|---|
契約方式 | 立会人型 |
本人確認 | メールアドレス認証・SMS認証・電話認証 など |
モバイル対応 | ○ |
電子印鑑GMOサイン
- 当事者型署名と立会人型署名に対応したハイブリッドの電子契約サービス
- 内部統制に必要なワークフロー機能が標準対応している
- セキュリティ対策が豊富
月額料金(税込) | 8,800円~(+1送信ごと110円) |
---|---|
契約方式 | 当事者型・立会人型 ※当事者型の場合は相手の登録が必要 |
本人確認 | メールアドレス認証・手書きサインによる認証・認証局による本人確認 |
モバイル対応 | ○ |
まとめ
- 印鑑は、文書を確認・承認したことを明らかにする目的で押印される
- 電子印鑑も従来の印鑑も法的効力には違いがないものの、本人証明の効力としては従来の印鑑の方が高い
- 今後電子印鑑が主流となる可能性は十分にあるため、早めに電子印鑑を準備しておくのがおすすめ
日本ではまだまだ印鑑文化が根強く、電子化に対して消極的な企業も少なくありません。
とは言え、国の取り組みとしてペーパーレス・脱ハンコ化が進められている以上、電子印鑑・署名のニーズは高まっていくことが予想されるでしょう。
電子契約はテレワークが普及した現代に適した仕組みでもあるので、まずは社内文書などの身近なところから電子化を進めてみてはいかがでしょうか。