「社印を電子印鑑にできる?」
「電子印鑑の作成方法や法的効力は?」
と疑問に感じていませんか。
そもそも、社印の有無が契約成立に影響をあたえませんので、電子印鑑化しても問題ありません。また、電子印鑑化したとしても契約の成立や真正性に影響を与えませんので、あくまで商習慣上の観点から押印することになります。
電子印鑑は無料/有料の作成ソフトを利用することで簡単に作成ができますので、電子印鑑を必要とする場合には作成ソフトを利用しましょう。
当記事では、企業が利用する社印や実印などの社判概要や社判を電子印鑑化した時の法的効力、具体的な電子印鑑の作り方まで解説します。
企業が使用する印鑑を総称して社判と呼ぶ
企業が利用する印鑑を総称して社判と呼んでいます。企業が利用する印鑑には角印や実印などいくつか種類がありますが、各印鑑で明確に利用目的やシーンが異なりますので押さえておきましょう。
重要な契約などに利用する実印(丸印・代表印)
実印は法人が重要な契約を締結する際に利用する印鑑です。印面が丸いものがよく利用されるため、丸印と呼ばれます。また、印影には企業名と役職名が記載されるので、代表印とも呼ばれるようです。
この実印(丸印、代表印)は登記手続きや代表取締役の変更手続き、不動産売買契約など、企業でも特に重要度の高い手続きに利用されます。
実印は印鑑証明をすることで、民事訴訟法228条1項で求められるような真正性を証明可能な状態にされているものが主流のようです。
銀行に届ける際に利用する銀行印
銀行の口座開設時などで提出する印鑑を銀行印と呼んでいます。一般的に銀行印と実印は分けて管理している場合が多いようです。
なぜなら、分けて管理することで、もし銀行印をなくしたとしても、実印を利用して締結した契約などを再締結しなくてよいなどのメリットがあるからです。
印鑑は物体かつ、小さなものなので、紛失するリスクが少なからずあるということで、別々に管理しているということですね。
会社を代表して利用する認印である社印(角印)
社印とは、企業における認印に位置づけられる印鑑です。社印の印面が四角いものが多いため、角印と呼ばれます。また、社印は領収書や注文書、見積書などの日常業務で利用頻度の高い帳票に使われるようです。
社印は認印であるので、実印に比べれば信頼性が低いものの、押印されていれば企業の意思として押印されたと認識されるため、社印の押印には注意が求められています。
通常業務で利用するゴム印
社内稟議など、印鑑自体に信頼性が求められない場合に利用されるのがゴム印やシャチハタなどです。実印や社印は象牙や水牛などの高価な材質が使われることも多いですが、ゴム印は文字通り、ゴム製ですので、容易に複製が可能になっています。
社判の管理ルールを設けよう
社判とはいえ、手続きの重要性や利用シーンなどによりいくつか種類があります。各手続きやシーンごとに適切な押印が可能な管理ルール作りが重要です。
特に実印や社印などは、もし流出してしまい悪用されると企業価値を毀損するような事態に発展しかねませんので厳重な管理が求められます。実印と銀行印は厳密に分けて利用する、社印で対応可能な手続きには実印を利用しないなど管理ルールを整備しましょう。
社印などの社判を電子化しても問題ない
厳密な管理が必要な社印などの社判ですが、電子印鑑化しても問題ありません。以下では社印などをデータ化しても問題ない法的な理由を解説します。
書面契約の場合、押印は真正性を証明する
そもそも、契約自体は民法522条1項にある締結方式の自由によって、どのような方法であっても成立します。つまり、実印や社印などの社判が押印されてあるかどうかは、契約の成立には無関係なのです。
ただし、ここで契約が成立することと、契約を訴訟時に証拠として利用できることは別問題である点に留意が必要です。
民事訴訟法228条1項では、文書を証拠として利用するためには真正性を満たす必要があるとしています。書面契約の場合、契約書に本人の押印がされていることで、二段の推定から真正性を証明できるとしているのです。
つまり、ここで初めて実印や社印などの社判を押印する意味合いが出てきます。
電子印鑑化は法的効力を持たない
では、電子契約においてはどうでしょうか。PDFファイルなどに物理的に押印をすることは難しそうです。PDFなどの電子文書に書面契約のように社印などの印鑑を付与するとなると、印影を電子化した電子印鑑の付与が必要になります。
とすると、電子印鑑が書面契約と同様に法的効力を持つかが気になりますよね。この点、電子文書においては電子署名を付与することで電子署名法3条により真正性の証明が可能です。
つまり、電子署名が付与してあれば、真正性の証明が可能なので、電子印鑑自体には特に法的な効力がないことになります。
商習慣上の理由から電子印鑑の押印が求められる
では、法的効力のない電子印鑑を電子契約などの電子文書、PDFファイルに付与する必要があるかというと、以下のようなこれまでの商習慣上の理由から電子文書上に社印などの押印を求められることがあります。
- 社印等の電子印鑑が押印してあると信頼における文書に見える
- 社印等n電子印鑑が押印してあれば契約締結が完了していることが一目でわかる など
つまり、相手方の気持ちの問題です。しかし、この気持ちの問題はとても大事な要素なので、一概に社印等の電子印鑑が無駄であるとは言い切れません。現状、電子文書の利用は過渡期にあるので、電子文書の利用を提案しても、拒否されるケースが多々あります。
この時、相手方の主張はたいてい「電子文書は信用できない」というものです。この相手方の電子文書への不安を少しでも和らげることができるのであれば、社印などの電子印鑑の押印は十分に意味のあることではないでしょうか。
電子印鑑の作り方
商習慣上の理由から押印が求められる電子印鑑ですが、以下2パターンの作成方法があります。
- 無料の電子印鑑作成ソフトを利用する
- 電子契約サービスなど有料ソフトを利用する
無料の電子印鑑作成ソフトを利用する
web上には無料で電子印鑑を作成可能なソフトが多数あります。例えば以下の無料ソフトを利用すると、簡単に電子印鑑が作成できるのでおすすめです。
- おすすめ無料ソフト①:電子印影
- おすすめ無料ソフト②:Excel電子印鑑
- おすすめ無料ソフト③:クリックスタンパー
おすすめ無料ソフト①:電子印影
電子印影を利用すると以下の3ステップで簡単に社印などの電子印鑑を作成できます。
- 印影の形を選ぶ(丸印、角印など)
- フォントを選ぶ(新生楷書、リュウミンなど)
- 出力する文字を選ぶ(電子印鑑に出力する氏名など)
電子印影の場合、上記の3ステップを実施しながら、実施後のイメージをプレビュー画面で確認ができますので、トライ&エラーを実施しやすい点にメリットがあります。
おすすめ無料ソフト②:Excel電子印鑑
Excel電子印鑑はMicrosoftOffice365が提供するExcel上で動作するアドインです。エクセルユーザーであれば利用がしやすい点がメリットといえるでしょう。
同アドインをExcel上にダウンロードすると、セル上で右クリックをすることで、社印などの電子印鑑を作成できるようになります。
おすすめ無料ソフト③:クリックスタンパー
クリックスタンパーを利用する場合、すでに電子印鑑のサンプルファイルが用意されているので、より確実に素早く社印などの電子印鑑を作成できる点にメリットがありあす。
サンプルファイルがすでに用意されているとはいえ、社印や角印、丸印など電子印鑑の形を調整できるほか、解像度や縦横サイズまで修正できますのである程度のカスタマイズ性はあります。
電子契約サービスなど有料ソフトを利用する
web上の無料ソフトでも社印などの電子印鑑の作成は可能ですが、識別情報を持たせることは難しいです。
識別情報を持たせることができれば、社印等の電子印鑑が付与されることで、誰によって押印されたのかなどを証明できるので、ある程度の文書の信頼性向上に寄与できます。
電子印鑑に識別情報を付与する場合、電子契約サービスなど有料ソフトの利用がおすすめです。一部の電子契約サービスであれば、識別情報付きの電子印鑑作成だけでなく、以下のような契約業務そのものを効率化する点をメリットとして見込めます。
- 契約書1通あたり2,500円程度のコスト削減効果を期待することもできる
- 契約締結までのリードタイムを早ければ即日までに短縮できる
世界No1シェアのDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では、実際に契約書1通あたり2,500円のコスト削減を実現できたと公表していますので、デジタル化・業務効率化によるコスト削減効果は確実であると見込んでよいです。
電子印鑑を作成する際の注意点
社印などの電子印鑑は簡単に作成ができますが一部利用時に注意点があります。
電子印鑑を作成する場合には、印影のスキャンをする場合が多数です。社印等の印影を画像化して、そのまま画像として利用するのか、識別情報を付与して利用するのか、どちらかで利用するでしょう。
この時、印影は実際に業務上で利用している実印や社印から取得しないように注意ください。もし実印や社印から電子印鑑を作成した場合、第三者によって不正利用されるリスクがあります。
なぜなら、昨今の3Dプリンターの技術は高く、実印や社印の印影画像からでも、元の印鑑を再現できてしまうからです。したがって、電子印鑑を利用する場合には、社印などは利用せず、ゴム印など利用されても問題ない印鑑を利用するようにしてください。
まとめ 社印の電子化はまずは無料ソフトを利用してみよう
社印等の電子印鑑を作成する方法はいくつかありますが、まずはweb上のフリーソフトから利用してみるとよいでしょう。
無料で電子印鑑を利用してみて、識別情報の付与や、そもそも契約業務を効率化していきたいなどの要望が出てきた場合には、電子印鑑を作成可能な電子契約サービスなどの導入をご検討ください。