電子契約取引に関連する「電子帳簿保存法」とは。要件やポイントを解説
電子契約取引に関連する「電子帳簿保存法」とは。要件やポイントを解説

電子契約取引に関連する「電子帳簿保存法」とは。要件やポイントを解説

インターネットを介して電子契約を締結する人が増えています。文書を書面で保管する必要がなく、メールなどでやり取りできることもあり、導入を決める企業が増加している状態です。

しかし、この記事を読んでいる人の中には電子契約取引に興味があるものの、詳しく知らない人もいるでしょう。関連法律が気になって、なかなか導入に踏み切れない人もいるかもしれません。

そこで本記事では、電子契約と深く関連する電子帳簿保存法について詳しく解説します。

目次

書類を電子化する電子契約を導入するメリットとは

電子帳簿保存法について確認する前に、書類を電子化するメリットについて簡単に解説します。

収入印紙が不要

通常、書面の契約書は金額に応じて収入印紙を貼付する必要がありますが、電子契約の場合はその必要がありません。したがって、印紙税を負担せずに電子契約を締結できます。

年間の契約数が多い企業や契約金額が高額であることが多い場合は、電子契約サービスを利用することで金銭的な負担が軽くなる可能性があるでしょう。

ペーパーレス化の促進

電子契約サービスを導入すれば、契約書などを印刷しなくてすみます。書類のやり取りは基本的にインターネットを介して行えるようになるため、ペーパーレス化によるコスト削減につながるでしょう。

また、契約書などをいちいち書面に印刷しなくていいので、内容に誤りがあった場合でもすぐに訂正できるメリットもあります。

電子帳簿保存法とは|法律概要をまとめて解説

電子帳簿保存法とは、契約書などの書類を電子化する場合に関連してくる法律です。電子データを保存する場合は、必ずこの規則に則って書類を保管しなければいけない義務があります

電子帳簿保存法の概要を簡単にまとめましたので、順番に確認していきましょう。

電子帳簿保存法のポイント1:納税地で7年間のデータ保存が必要

電子契約で用いた契約書などの書類は、必ず納税地で7年間保存しなければいけません。ただし、欠損金の繰越控除に関連する書類は、最長10年間の保存が必要になるので注意してください。

電子契約サービスの中には、海外のサーバーに書類をクラウド保管する製品もあります。そのため、「納税地と書類の場所が異なるのでは」と不安に感じる人がいるかもしれませんが、この場合は心配いりません。

なぜなら、電子帳簿保存法では国内からいつでもアクセスできるサーバーであれば、問題がないと定められているからです。

電子帳簿保存法のポイント2:タイムスタンプなどによる真実性の確保が不可欠

電子契約は従来の書面契約のように対面でサインや押印をすることがないため、真実性の確保がポイントになります。そのため、電子帳簿保存法では原則として電子化した書類に対して認定タイムスタンプの付与を求めています。

タイムスタンプとは、当該電子データがある時間に存在したこととその時間以降に改ざんされていないことを証明できる技術です。電子契約の真実性を確保するために重要なシステムではありますが、コストがかさむという指摘もあります。

そのため、電子帳簿保存法では次の要件を満たす場合は、適正に保管ができていると判断します。

  • 電子化した書面の訂正・削除を制限する社内規定を設ける
  • 電子化した書面の訂正・削除の履歴が残るシステムを採用する
  • 電子化した書面の訂正・削除に対応していないシステムを利用する

企業として本格的に電子契約サービスを導入するのであれば認定タイムスタンプを用意すべきですが、どうしても難しい場合は上記の要件を満たす方法で電子契約を活用すると良いでしょう。

電子帳簿保存法のポイント3:見読性を確保しなければいけない

電子帳簿保存法では、電子化した書類の内容をいつでもスムーズに確認できる状態にしておくことが義務づけられています。そのため、電子契約サービスを会社で導入する場合は、電子化した書類をきちんと確認できるようなプリンターやディスプレイの用意が必要です。

なお、見読性を確保している場所は、納税地もしくは事業所その他準ずる場所でなければいけません。

電子帳簿保存法のポイント4:データを検索できる状態にする必要がある

電子契約を導入する場合は、電子化した書類をすぐに確認できるようにデータを検索できる状態にしておく必要があります。これを検索性の確保といいますが、税務調査などの際にデータを絞り込んで検索できる体制を整えておかなければ法律違反になるため十分気を付けてください。

電子契約の保管に関する注意点

電子契約サービスを導入して電子契約を結ぶ場合、電子帳簿保存法に則ってきちんとした方法で保管しなければいけません。

この章では、電子契約の保管に関して押さえておくべき注意点を確認しましょう。

あらかじめ税務署に申請しなければいけない

電子帳簿保存法では、紙の文書を電子化して取引の記録を残す場合、管轄の税務署にあらかじめ申請を出すことが義務付けられています。申請の期限は、3カ月前です。

要件の確認や取引内容の確認などに時間がかかる可能性があるため、電子契約を導入するときはなるべく早めに税務署に申請を出すことをおすすめします。

なお、新しく業務を開始する場合は、事後の届出認められることがあります。具体的な要件は、以下の通りです。

承認を受けようとする国税関係書類の全部又は一部がその業務の開始の日から同日以後5月を経過するまでの間に書類の 電子データ保存によって紙媒体の書類の保存に代えるものである場合:業務の開始の日以後2ヶ月を経過する日まで

承認を受けようとする国税関係帳簿の全部又は一部がその設立の日から同日以後6月を経過するまでの間に書類の電子デ ータ保存によって紙媒体の書類の保存に代えるものである場合:設立の日以後3月を経過する日まで

出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000025

もともと電子データの契約書は事前届出が不要

書類を電子化して取引を行う場合、前述の通り、管轄の税務署に申請を出さなければいけません。しかし、電子化されたデータを用いて契約する場合、あらかじめ税務署に申請しなくても大丈夫です。

これから電子文書を本格的に導入していこうと考えているなら、この違いを理解しておき、計画的に進めていくべきと言えます。

2020年の電子帳簿保存法の改正の内容について確認

電子帳簿保存法は、これまでに数回、内容が改正されています。今回は、直近の改正である2020年の改正について簡単に説明します。

2020年10月における電子帳簿保存法の改正内容の大切なポイントは、以下の通りです。

  • デジタルの利用明細を領収書の代わりとして認める
  • キャッシュレス決済の場合は領収書不要

2020年10月の電子帳簿保存法改正前は、電子マネーやクレジットカードなどで決済した場合にレシートや領収書の撮影・保管が必要でしたが、この改正によって不要になりました。

また、電子帳簿保存法は2022年1月にも改正が予定されています。施行日はあくまでも予定ですが、新しい電子帳簿保存法では不正行為に対するペナルティの強化が行われます。

例えば、電子契約などに関するデータを改ざんした場合は、重加算税に10%加算されるなどの罰則が設けられているので注意が必要です。

まとめ

電子契約を導入する場合は、電子帳簿保存法に定められた要件や方法に基づいて適切に文書を保管しなければいけません。要件を満たしていないと、法律違反とみなされることもあるため注意が必要です。

今回は電子契約を保管する方法について解説しましたが、もっと詳しくデータの保存方法や電磁的文書の要件などについて知りたい場合は、国税庁のホームページを確認することをおすすめします。

今回紹介した内容を参考に、電子帳簿保存法に則った電子契約サービスの導入を検討してみてください。

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