「電子帳簿保存法に対応した保存方法はどうすればよい?」
「領収書の電子帳簿保存法対応の期限は?経費精算後いつ破棄してよいの?」
と疑問に感じていませんか。
領収書をデータ保存する際には電子帳簿保存法の要件を満たして保存が必要です。ただし、電子的に授受する場合、紙を電子化する場合で保存要件が異なりますので、保存対象の領収書によって保存要件が異なる点に注意ください。
当記事では、領収書で満たすべき電子帳簿保存法の概要、電子帳簿保存法 電子取引、スキャナ保存の各要件における具体的な要件を解説します。
領収書やレシートのデータ保存には電子帳簿保存法対応が必要
領収書をデータ保存する場合、電子帳簿保存法の要件を満たした保存が必要です。では、電子帳簿保存法とは何でしょうか。以下では電子帳簿保存法の概要を説明します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類の保存を国税庁が認めた法律です。領収書や契約書、請求書など国税関係書類や帳簿を電子保存する際に満たす必要があります。
電子帳簿保存法は1998年に施行されてから、世間のデータ化需要に応える形で改正を繰り返してきた経緯があります。2022年にも改正法が施行され、電子的に授受した文書は電子保存が義務化されたことで大きな注目を集めました。
電子帳簿保存法は保存対象となる国税関係帳簿書類の種類によって、以下4つの要件区分があります。
- 国税関係帳簿データ(帳簿保存の要件区分)
- 決算関係書類など国税関係書類データ(書類保存の要件区分)
- 紙の電子化データ(スキャナ保存の要件区分)
- 電子的に相手方とやりとりした文書データ(電子取引保存の要件区分)
領収書の場合、領収書をECサイト上からダウンロードするなど電子的に授受するのか、紙により授受してデータ化するかによって、保存要件が変わる点に注意が必要です。
領収書を電子的に授受した場合、電子取引要件対応が必要
領収書を例えば以下の手段によって授受した場合、改正後の電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいた保存が必要です。
- メール添付された領収書データを授受
- AmazonなどECサイト上から領収書データをダウンロード
- インターネットファックス経由で領収書データを授受 など
2023年中までであれば、上記のような方法で授受した領収書を紙に印刷して原本保管しても問題ありません。
なぜなら、2022年1月に電子帳簿保存法の改正が施行されたものの、電子取引要件における電子保存の義務化については2年間の宥恕措置(ゆうじょそち)が公表されているからです。
2024年1月以降、もし要件を満たして保管をしていない旨を国税調査時に指摘された場合、青色申告の承認取り消しなどのリスクがありますので、確実な対応が必要になります。
紙の領収書を電子化する場合、スキャナ保存要件対応が必要
紙の領収書を授受した後に、スマホで撮影するなど紙を電子化して保管する場合には改正後の電子帳簿保存法 スキャナ保存要件を満たした保存が必要です。
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件は電子取引要件とは異なる要件ですので、対応する際には要件の違いを理解したうえで対応が求められます。
また、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件に対応する場合、原本は電子データになります。したがって、紙の領収書は廃棄してよい点に留意ください。
加えて、電子帳簿保存法 電子取引要件において、電子的に授受したデータは電子保存が義務化されていますが、紙により授受した領収書の電子化保存までは義務化されていない点にも留意が必要でしょう。
改正電子取引要件とは何か
領収書を電子的に授受した場合、2022年1月改正後の電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいた保存が必要です。改正電子帳簿保存法 電子取引要件では大きく以下2つの要件を満たして保存が求められています。
- 真実性
- 可視性
真実性
電子帳簿保存法における真実性とは授受した領収書やレシートが「改ざんされていないことを証明する」要件です。電子帳簿保存法 電子取引要件では以下3つの方法の中から任意の方法を選択して対応することが認められています。
- 方法①:タイムスタンプが付された後のデータ授受、または、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプをデータに付す
- 方法②:データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
- 方法③:訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
可視性
可視性とは授受した領収書やレシートを「整然かつ速やか、明瞭に特定して提示ができる」ことを求める要件です。可視性を構成する要件はいくつかありますが、その中で最も注意したいのが検索性の要件です。
電子帳簿保存法 電子取引要件における検索性の要件では、最低以下3つの項目による検索ができることを求めています。
- 取引先名
- 取引年月日
- 取引金額
ただし、上記3項目のみの検索でよいのは国税調査時にダウンロードの求めに応じることができる場合です。
一方で国税調査時にどのようなデータのダウンロードを求めるかは明示されていないので、ダウンロードの求めに応じることができるか懸念がある場合には以下による検索も追加でできる必要があります。
- 範囲検索
- 複数条件検索
法人税法上などで最低7年の保存が必要
電子帳簿保存法 電子取引要件の対象書類は厳密にいえば、国税関係書類以外の書類です。なんだかよくわからない書類に感じる方も多いかと思いますが、国税関係書類と同等であると実務上は考えてもらって大丈夫です。
なぜ国税関係書類以外の書類と表現しているかというと、国税関係書類が紙を想定している言葉だからです。
つまり、電子帳簿保存法 電子取引要件のようなデータを対象とする場合には言葉の定義を違えてしまうため、国税関係書類以外の書類と表記しています。
話を戻しますと、電子帳簿保存法 電子取引要件の対象文書である国税関係書類以外の書類は税法に基づいた保存が必要です。したがって、法人であれば法人税法に基づいて最低7年、個人であれば所得税法に基づいて最低5年の保存が必要です。
紙保存した領収書の再電子化は認められていない
2023年12月までは電子取引した文書を書面に出力して保存をしてもよいとされています。しかし、一度書面出力した電子取引した文書を再度電子化して保存することができない点に注意ください。
紙を電子化する際に満たすべき要件として、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件があります。この電子帳簿保存法 スキャナ保存要件の対象文書は国税関係書類です。
一方で、電子取引して紙出力した文書は国税関係書類以外の書類です。つまり、電子帳簿保存法 スキャナ保存要件の対象外の文書であるので、電子化して保存ができません。
したがって、電子取引した文書を書面出力して保存した場合、紙の原本を紙のまま最低7年保存する必要があるのです。
改正スキャナ保存要件とは何か
領収書やレシートを紙で授受し、スキャン後データとして保存する場合には電子帳簿保存法 スキャナ保存要件を満たして保管が必要です。
改正後の保存要件
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件は電子取引要件と比較して要件が多くかつ、厳しいです。電子帳簿保存法 スキャナ保存要件は文書の「金やモノの流れへの影響度」から以下2つの要件があります。
- 重要書類
- 一般書類
領収書やレシートは重要書類に該当するため、重要書類に求められる要件を満たしましょう。また、重要書類とはいっても、これから発生する領収書やレシートを保存するのか、過去の領収書やレシートを保存するのかでも要件が異なります。
これから保存しようと考えている領収書やレシートの状況に合わせた要件を選択して要件を満たすようにしてください。状況別の要件は以下の通りです。
要件 | 重要書類 | 過去分重要書類 |
---|---|---|
入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力) | 〇 | |
一定水準以上の解像度(200dpi 以上)による読み取り | 〇 | 〇 |
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677 万色)以上) | 〇 | 〇 |
タイムスタンプの付与 | 〇 | 〇 |
解像度及び階調情報の保存 | 〇 | 〇 |
サイズ情報の保存 | 〇 | 〇 |
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認等) | 〇 | 〇 |
入力者等情報の確認 | 〇 | 〇 |
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 | 〇 | 〇 |
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備付け | 〇 | 〇 |
整然・明瞭出力 | 〇 | 〇 |
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け | 〇 | 〇 |
検索機能の確保 | 〇 | 〇 |
なお、過去分の重要書類を電子化する際には、事前に税務署への適用届出書の提出が必要です。忘れずに対応するようにしてください。
電子化した紙領収書は廃棄してOK
電子帳簿保存法 スキャナ保存要件に対応した領収書やレシートは原本がデータになります。したがって、スキャン元の領収書やレシートは保存不要ですので、廃棄ください。
2022年1月改正以前までの電子帳簿保存法 スキャナ保存要件では適正事務処理要件という内部統制的な要件があり、その中でスキャン元の紙文書の定期チェックという要件があったため、領収書やレシートを即廃棄することは難しいものでした。
しかし、2022年1月以降の改正後ではこの適正事務処理要件自体が廃止されたため、紙の領収書やレシートを廃棄できるようになったのです。
とはいえ、データ化前のレシートや領収書を内部統制上の観点で一定期間保存する企業も多いですので、2022年1月改正前の要件を依然と満たして保存しても問題ありません。
まとめ 領収書の電子帳簿保存法対応可能なシステムを選定しよう
領収書やレシートをデータとして保存する際には電子帳簿保存法の要件を確認するようにしましょう。特に過去の紙領収書やレシートをデータ化して保存する場合には事前に税務署への適用届出書提出が必要になりますので注意ください。
領収書やレシートをデータ保存する方法で業務効率化を狙うことは十分に可能です。領収書やレシートのデータ化をしやすいシステムを選択するようにしてください。