「電子契約の末尾文言はどのように変更したらよい?」
「末尾文言の具体的な修正点を知りたい」
と疑問に感じていませんか。
書面契約を電子契約に置き換える場合、真正性の確保に利用する手段が電子署名に変更になる、書面を利用しなくなるなどの変更によって末尾文言の変更も必要になります。
末尾文言を変更しないばかりに無用なトラブルに巻き込まれることもありますので、注意が必要です。
当記事では、末尾文言の概要や電子契約における末尾文言の記載方法、記載時の注意点までをご紹介します。
末尾文言とは?
末尾文言とは契約書の最終に1~2行程度で記載されている文言です。
末尾文言の役割
いつも同じようなことが記載されているように見える末尾文言ですが、契約書が誰により何通作成され、どのように締結され、保管されるのか記載しています。例えば以下のように記載される場合が多いようです。
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。
2022年4月8日
甲 住所/氏名
乙 住所/氏名
末尾文言に含まれる要素は5つ
末尾文言に含まれる内容以下の5つです。
- 契約書の作成目的
- 契約書の作成通数
- 契約書の作成者
- 契約書の締結方法
- 契約締結日
契約書の作成目的
契約書を作成する目的が記載されています。つまり、契約が成立したことを文字に残すことで後日の係争に備える旨を端的に末尾文言に記載する必要があるのです。
契約書の作成通数
契約書の作成通数が記載されています。一般的には契約当事者分だけ契約書を作成しますが、印紙税などのコストを削減することを目的として、契約書を1通のみ作成する場合もあります。
契約締結時に何通の契約書を作成したか末尾文言に記載ください。
契約書の作成者
契約書を誰が作成したのか、つまり、契約の当事者全員を記載する必要があります。また、作成された契約書を誰が保管するのかについても末尾文言に記載が必要です。
契約書の締結方法
契約書をどのように締結したかを末尾文言に記載する必要があります。書面契約の場合は記名押印による締結が主流ですが、電子契約の場合、電子署名を付与することで契約を締結します。
契約締結日
西暦でも和暦でもよいので、契約締結をした日時を末尾文言に記載します。和暦の記載でも問題ないものの、管理表でまとめることなどを考慮すると西暦での記載統一が推奨です。
電子契約を導入する場合、末尾文言の変更が必要
書面契約と電子契約では、契約の作成の仕方、締結の仕方、保管の仕方に違いがあります。したがって、電子契約に合わせた記載に修正が必要になるのです。修正が必要な変更点は以下の通りです。
- 変更点①:契約の締結方法
- 変更点②:作成通数、保有通数
- 変更点③:契約締結日
変更点①:契約の締結方法
書面契約では印鑑を押印することで真正性を証明しています。一方で、電子契約は電子署名を付与することで真正性を証明しますので、契約の締結方法が異なるのです。
したがって、書面契約の場合、末尾文言に「記名押印により~」と記載される場合も多いですが、電子契約では電子署名を示す記載、例えば、「電子署名を施し」などに末尾文言の修正が必要です。
もし、記名押印と文言が残っていた場合、記名押印がないことで契約が真正に成立していないとみなされるリスクがありますので注意ください。
変更点②:作成通数、保有通数
書面契約では当事者全員で契約書を保持する場合があるため、複数の原本が存在する場合があります。しかし、電子契約では複製が容易であることから、原本は1つです。
したがって、通数は常に1であるので、末尾文言への作成通数、保有通数の記載は不要です。
変更点③:契約締結日
電子契約の場合、タイムスタンプを付与するのであれば、タイムスタンプ上に契約締結日付情報を残すことができますので、末尾文言に契約締結日の記載は不要であるとも考えられます。
ただし、タイムスタンプの記録はあくまで契約書を作成した日時を示すに過ぎません。つまり、実際に契約が成立した日時とは異なる場合があるのです。
したがって、より厳密に契約締結日を把握するのであれば、末尾文言に契約締結日の記載は必要でしょう。一般的には上記のような背景もあり、末尾文言には契約締結日の記載とタイムスタンプの付与が併用されることが多いようです。
末尾文言の変更記載例
上記の変更点を踏まえたうえで以下3種の記載例をご紹介します。
- パターン①:電子契約サービスを導入する一般的な記載例
- パターン②:書面契約と電子契約を併用する記載例
- パターン③:異なる2種類の電子契約サービスを導入する例
パターン①:電子契約サービスを導入する一般的な記載例
一般的な末尾文言は以下の通りです。
「本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、○○○および●●●が合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。」
パターン②:書面契約と電子契約を併用する記載例
相手方が電子契約の法的な有効性に懸念を抱くなどして、相手方分の契約は書面で締結する場合があります。その場合、電子契約と書面契約を併用することになりますので、末尾文言の記載も変える必要があるのです。
記載例は以下の通りです。
「本契約の成立を証するため、本書を書面および電磁的記録として作成し、○○○および●●●が合意の後記名押印および電子署名を施し、 ○○○は書面を、 ●●●は電磁的記録をそれぞれ保管する。」
パターン③:異なる2種類の電子契約サービスを導入する例
相手方もすでに電子契約サービスを導入している場合、お互いで導入している電子契約サービスを利用して契約を締結する場合があります。
この場合、以下の記載に末尾文言を修正する必要があるでしょう。
本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、○○○および●●●が合意の後クラウドサインおよび【他の電子契約サービス名】上において電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する 。
レイアウトも変更できると尚よい
書面契約を電子契約に置き換える際に、印鑑押印の位置を契約書上の右上などの固定位置にするようにレイアウト変更ができると、のちの電子契約管理が効率化できます。
もし固定位置に印鑑押印の場所を置いた場合、複数の契約書に対してまとめて電子印鑑を押すことができるからです。
今回紹介した例は電子印鑑についてですが、そのほかにも固定位置に付与するものがれば可能な限りレイアウトは統一した方がよいでしょう。
電子契約は電子保存が必要
電子契約を利用したとしても、書面に印刷して保存をすれば末尾文言の修正は不要なのでは?と考える方もいるかもしれません。しかし、電子契約は電子のまま保存が必要です。
電子帳簿保存法に基づいた保存が必要
相手方と電子的にやり取りする電子契約は電子帳簿保存法 電子取引要件に基づいた保存が必要です。
電子帳簿保存法とは電子的に帳簿や書類の保存を認めた法律で、保存対象となる税法上の文書の種類に応じて以下4つの要件区分があります。
- 国税関係帳簿(帳簿保存の要件区分)
- 決算関係書類など国税関係書類(書類保存の要件区分)
- 紙の電子化(スキャナ保存の要件区分)
- 電子的に相手方とやりとりした文書(電子取引保存の要件区分)
この中で電子的にやり取りをする電子契約は電子取引保存の要件区分を満たした保存が必要になるのです。
もし要件を満たして保存をしていない場合、青色申告の承認取り消しや仕入れ税額控除が受けられないなどのペナルティが想定されていますので、確実な対応が必要です。
電子取引要件とは
では、電子契約が満たすべき電子取引要件とはどのような要件があるのでしょうか。大枠で以下2つの要件があります。
- 真実性の要件とは
- 検索性の要件とは
真実性の要件とは
真実性とは文書が改ざんされていないことを証明する要件です。電子取引要件では以下いずれかの手段を取ることで真実性を満たすことができます。
- タイムスタンプが付された後のデータ授受、または、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプをデータに付す
- データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
もっとも簡単に要件を満たすことができるのはタイムスタンプの付与です。とはいえ、タイムスタンプの導入には安くないコストがかかりますので、ご検討ください。
検索性の要件とは
検索性とは特定の文書を速やかに見つけ出せることを求める要件です。電子取引要件では、税務監査時にダウンロードの求めに応じるのであれば以下の主要三項目で検索ができればよいとされています。
- 取引年月日
- 取引先名
- 取引金額
もしダウンロードの求めに応じることが難しいと判断される場合には上記に加えて、範囲検索、複数条件検索ができる必要がありますので注意が必要でしょう。
電子帳簿保存法対応をした電子契約サービスを利用するのが簡単
電子契約をExcelなどで作成することは可能です。ただし、Excelなどで作成した場合、自社のファイルサーバー上などで独自に電子帳簿保存法 電子取引要件を満たした保存をする必要がありますので、対応が難しいことがあります。
この点、電子帳簿保存法に対応した電子契約サービスを導入すると手間なく簡単に対応ができます。また電子契約サービスは契約業務自体を効率化する様々な機能を搭載していますので、導入がおすすめです。
まとめ 記載の変更し忘れに注意
電子契約を利用する場合、末尾文言の修正が必要です。また、相手方との契約締結の方法によっては記載が必要な末尾文言にも変化がある場合がありますので注意ください。
末尾文言の修正においても電子契約サービスを導入すると簡単に変更ができます。ぜひこの機会に電子契約サービスを導入して、契約業務の効率化、末尾文言の容易な修正を実施ください。