「地方自治体が提供する行政サービスで電子契約サービスの利用は可能?」
と疑問に感じていませんか。
地方自治法施行規則が2021/1に改正され、地方自治体での行政サービス上で立会人型電子契約サービスの導入が可能になりました。
これまでは当事者型にのみに限定されていたため、電子契約の活用が進んでいませんでしたが、立会人型が利用可能になったことで、地方自治体の行政における電子契約の導入が推進されていくと想定されています。
当記事では、地方自治体の行政サービス上で電子契約の導入が進んでいる背景や行政こそ電子契約サービスの導入がおすすめである理由、行政が電子契約を導入する際の注意点までご紹介します。
地方自治体で電子契約サービスの導入が進んでいる
2021/4の茨城県つくば市の電子契約サービス導入を皮切りに埼玉県、富山県、高知県、熊本県、東京都など各都道府県が電子契約サービスの導入を進めています。
なぜ、最近になって電子契約サービスの導入が進んでいるのか順を追って解説をします。
地方自治法施行規則が改正されるまで電子契約の導入が難しかった
2021/1以前の地方自治法の改正以前、行政において電子契約が活用されるシーンは少なかったようです。
なぜなら、地方自治法施行規則234項4項で電子契約サービスを導入する場合、以下いずれかの電子証明書の発行が必要であり、利用者の負荷が高かったからです。
- 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が発行した電子証明書
- 認定認証事業者が発行した電子証明書
- 登記官によって作成された電子証明書
上述のような電子証明書を利用する電子契約サービスを当事者型と呼称しています。この当事者型を利用する場合、利用者と相手方双方で電子証明書の発行が必要であり、電子契約を利用開始するまでに手間とコストが発生します。
この点の負荷が高く、地方自治体における行政サービスで電子契約サービスの導入が進んでいなかったのです。
電子契約サービスには2タイプある
そもそも電子契約サービスには以下の2タイプがあります。
- 当事者型
- 立会人型
地方自治法施行規則が改正される前まで、唯一利用可能であったのが当事者型です。当事者型は利用者自身で電子証明書を発行するので、立会人型と比較して電子署名を付与済みの電子契約に対する信頼性が高いとも考えられています。
一方で、利用者自身で電子証明書を発行せず、事業者が代理で電子署名を付与するのが立会人型です。事業者が代理で電子署名を付与するので、利用者は手間とコストをかけずに電子契約の利用を開始することができる点がメリットです。
電子契約サービスで世界No1シェアであるのが立会人型のDocuSignであることからも、一般的には立会人型が利用されているようです。
地方自治施行規則の改正により立会人型の利用が可能に
2021/1に施行された改正地方自治法施行規則によって、地方自治体が提供する行政サービス上においても立会人型の電子契約サービスが導入することができるようになりました。
したがって、地方自治体における行政サービス上で電子契約を利用できるシーンも増えてくると考えられています。
立会人型を利用しても真正性の証明は可能
地方自治体が提供する行政サービス上で、立会人型電子契約サービスの導入が可能になったとはいえ、立会人型によって電子署名された電子契約の真正性が気になります。
なぜなら、地方自治体における行政サービスでは、特に電子契約の真正性は証明されなければなりませんし、なにより、事業者が代理で電子署名を付与したものが真正性を証明できるのか疑問に感じるからです。
この疑問に対して、2020/7に総務省・法務省・経済産業省の3省連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子契約サービスに関するQ&A)」が公表されています。
この公表の中で、立会人型電子契約サービスであっても、固有性の要件を満たせば真正性を証明できると明記されているため、立会人型を利用して電子署名を付与しても問題ないことがわかったのです。
固有性の要件とは
ここで気になるのが固有性の要件とは何か、という点です。固有性とは簡単に言ってしまうと「厳密に本人の意思によって電子署名されたことを証明してね」という要件です。
したがって、利用者側で意識すべきことは、立会人型電子契約サービスを利用する際にどのように本人確認を厳密にするかという点になるでしょう。
上述の公表で固有性を満たす一つの方法として、二要素認証が記載されています。したがって、地方自治体が提供する行政サービス上で立会人型電子契約サービスを利用する場合には二要素認証が利用できる電子契約サービスの選択が必要でしょう。
行政サービスに電子契約サービスがおすすめの理由
上述のように地方自治体の行政サービス上で立会人型の電子契約サービスが利用可能です。ではなぜ、地方自治体が提供する行政サービス上で電子契約を利用する必要があるのか理由を解説します。
メリット①:文書保管の効率性向上
行政サービスを提供する地方自治体では3年単位で担当者が移動する習慣があります。したがって、書面契約の場合、引きつぎ作業や保管文書の配置転換が頻繁に発生する点が課題です。
この点、電子契約サービスを導入すれば、システム上で契約書を管理できますので、文書保管の効率性を大幅に向上させることができます。例えば、以下の機能を利用して文書保管の効率性を向上できます。
- 文書への属性(取引先名、取引金額、取引年月日など)の付与、および、属性による検索
- 関連文書の紐づけ
- 文書別のバージョン管理 など
したがって、地方自治体が提供する行政サービスの文書管理を効率化・DXしたいのであれば、電子契約サービスの利用がおすすめです。
メリット②:承認プロセスの効率性向上
地方自治体を含め行政機関では、内部の調査・承認プロセスで時間を要します。省庁が離れている、出先機関の複数部門による承認が必要な場合、さらに時間を要するため、承認プロセスの効率化が必要です。
この点、電子契約サービスであれば、ワークフロー機能を搭載しているサービスがあるため対応が可能です。地方自治体の承認プロセスのすべてのオンライン上で実施できるので、大幅なリードタイムの削減を見込める点が大きなメリットといえるでしょう。
メリット③:セキュリティリスクの低減
民間企業以上に地方自治体などの行政機関では、各文書に対するセキュリティが重視されます。書面契約の場合、契約書の持ち出し、紛失、盗難などのリスクがありましたが、電子契約の場合これらのセキュリティリスクを低減できるのです。
電子契約サービスを地方自治体などの行政機関が利用する場合、リスク低減を期待できる機能として以下を利用可能な場合が多いです。
- 文書別のアクセス制御
- フォルダ別のアクセス制御
- ユーザー別のアクセス制御
- IP別のアクセス制御
- 文書別の追跡記録・バージョン管理 など
利用する際の注意点
地方自治体などの行政機関にとって電子契約サービスは導入するメリットが大きいです。しかし、地方自治体などの行政機関が利用する場合、一部注意点がありますので解説します。
なりすましリスクがある
書面契約と同様に電子契約を利用する場合にも、なりすまし署名のリスクがあります。例えば、立会人型電子契約サービスを利用する場合、契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付する必要があります。
この時、メールアドレスへの不正アクセスを許してしまい、契約とは無関係な第三者によって不正に電子署名をされてしまうリスクがあるのです。この場合、本人によって電子署名を付与されていませんから、もちろん真正性を証明できません。
上記は一例ですが、このようななりすましリスクに対応するため、地方自治体などの行政が利用する場合、本人性を厳密に実施できる二要素認証などの機能が搭載されているかを確認する必要があるでしょう。
電子署名の有効性は5年間
電子署名法施行規則6条で電子署名には5年間の有効期限が規定されています。
一方で電子契約を始めとする国税関係書類には法人税法上で最低7年間の保存義務があるため、電子署名による真正性を維持したまま保存しようとすると、有効期限が問題です。
そこで利用されるのが長期署名です。長期署名とは電子署名に対してタイムスタンプを付与することで、有効期限を延長することのできる技術です。理論上は無期限に有効期限を延長できます。
したがって、電子署名の有効期限切れリスクに対応するために、地方自治体などの行政機関が電子契約サービスを導入する際には、タイムスタンプの付与ができるか、長期署名を利用可能かが確認ポイントとなります。
電子契約を長期保存する必要がある
上述した通り、電子契約は法人税法上で最低7年間(繰越欠損金がある場合には10年間)保存する義務があります。したがって、もし電子契約サービス上で電子契約を保存するつもりであるなら、システム上で長期保存が可能か確認が必要です。
電子契約サービスによってはシステム上で長期保存ができない、長期保存ができたとしても保存量に応じて従量課金されるなどの場合がありますので、導入前に確認をおすすめしています。
また、必ずしも電子契約サービス上で長期保存する必要はありませんので、他システム上に文書を移動させて保存する等対応を検討する必要もあります。
まとめ 行政にシステムを導入して業務効率化を目指そう!
地方自治体が提供する行政サービス上で立会人型電子契約サービスが利用できることで、利用者としても手間とコストをかけることなく電子契約を利用できます。
したがって、今後地方自治体の行政サービスで電子契約を見かけるシーンも増えてくるでしょう。
しかし、地方自治体の行政サービスで電子契約を利用する際には、電子署名の有効期限やなりすましなどのリスクがありますので、リスクに対応した電子契約サービスを選ぶようにしてください。
電子契約サービスを利用して地方自治体の行政サービスのデジタル化・および、業務効率化を目指しましょう!