「下請法の3条書面は電子契約化可能?」
と疑問に感じていませんか。
下請法3条2項に記載の通り、一定の要件を満たせば書面による交付に代えて電子契約など電子による提供が可能になります。ただし、電子契約などによって提供する際には事前に相手方の同意を得る必要がありますので留意ください。
当記事では下請法上で3条書面が電子交付可能な理由、3条書面を電子化する際のポイントまでをご紹介します。
下請法上、3条書面は電子交付が認められている
上述の通り、3条書面は下請法上、電子契約など電子提供が可能です。以下では電子化可能な理由を解説していきます。
そもそも下請法とは
「下請代金支払遅延防止法」を通称で「下請法」と呼称しています。公正・自由な共有を促す「独占禁止法」を補完する法律です。下請法も独占禁止法と思想を共有しており、発注者の有意的立場の乱用を予防し、下請事業者の利益保護を目的としています。
下請取引上の代金支払い遅延などの行為は、独占禁止法上の優越的地位の濫用行為に該当するため、独占禁止法19条に違反する可能性があります。
第19条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
しかし、独占禁止法によりこの違反行為に該当する可能性があるものを規制するためには、個別に濫用行為であると認定する必要があるため相応の時間を要する点が課題です。
また、下請取引は性質的に下請事業者に申告するほどの金銭的・時間的猶予が少ないこともあり、下請事業者自身で親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に申告することは現実的に期待できません。
そこで、親事業者による下請事業者への優越的地位の濫用行為を予防し、下請事業者の利益を確保するために独占禁止法とは別に下請法が制定されています。
下請法における請負契約の書面交付義務とは
企業規模(資本金の金額)に差がある企業間で下請取引を行う場合、下請法3条の規定により、親事業者が下請事業者に対して書類を交付する義務があります。
工事やサービスの受発注はビジネス上、高頻度でやり取りされる取引ですが、金額の大小や契約内容に問わず、下請事業者の利益保護の観点から、下請法上、親事業者は下請事業者に書面を交付する必要があるのです。
下請法で交付義務がある書面を通称下請法3条書面と呼ぶ
下請法で親事業者が下請事業者に交付する義務のある書面を通称で下請法3条書面と呼んでいます。
3条書面には「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則(3条規則)」に記載の通り、親事業者及び下請事業者名称や下請金の支払期日など記載すべき項目が決められています。
下請法上で求められる記載項目が多く、書面の整備が大変そうな印象を受けますが安心してください。
公正取引委員会・中小企業庁から「下請取引適正化推進講習会テキスト」が公表されていますので、基本的にはこのテキストを踏襲する形でフォーマットを作成すればよいです。
下請法上、3条書面の電子化は認められている
「下請取引適正化推進講習会テキスト」などを利用してフォーマットを作成したうえで、新規事業者の義務を満たせば3条2項により、3条書面の電子化(電子契約化)は認められています。
2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
ただし、そもそも下請法が親事業者の優越的な地位の濫用行為を予防することを目的に定められた法律ですので、優越的な地位の濫用行為に該当しないように電子化・電子契約化する必要がある点に注意が必要です。
3条書面を電子化する際のポイント
では、3条書面を電子契約など電子化する際にどのような点がポイントになるか解説します。
下請法上、電子交付の方法は限定される
3条書面を電子化する場合、下請法規則2条1項に規定されるような手段を取る必要があります。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 親事業者の使用に係る電子計算機と下請事業者の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し,受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された書面に記載すべき事項を電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し,当該下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(法第3条第2項前段に規定する方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては,親事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク,シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに書面に記載すべき事項を記録したものを交付する方法
つまり、以下手段のうちいずれかを取る必要があります。
- 電気通信回線を通じて送信し,受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法(つまり、メールやEDIなど)
- 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し,当該下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該事項を記録する方法(つまり、ブラウザ上での閲覧など)
- 磁気ディスクやCD-ROMにより交付する方法
ただし、上記手段に対して、下請法上、以下のように注意事項があります。
2 電子メール等による電磁的記録の提供に係る留意事項
(1) 書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は,下請事業者の使用に係るメールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず,下請事業者がメールを自己の使用に係る電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば,通常の電子メールであれば,少なくとも,下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる。また,携帯電話に電子メールを送信する方法は,電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されないので,下請法で認められる電磁的記録の提供に該当しない。
(2) 書面の交付に代えてウェッブのホームページを閲覧させる場合は,下請事業者がブラウザ等で閲覧しただけでは,下請事業者のファイルに記録したことにはならず,下請事業者が閲覧した事項について,別途,電子メールで送信するか,ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる。
メールなどにより提供する場合、メーラー上に受診記録が記録される必要があります。また、SMSやチャットなどを利用して提供する場合には下請事業者が管理するサーバ上に記録が保存されないので、要件をみたさないこととされているのです。
また、ブラウザ上の特定のサイトを閲覧させる手段を取る場合においても、閲覧させるだけでは要件をみたさず、下請事業者に閲覧情報を保存させる仕組みづくりが必要としています。
下請法上、下請業者の事前承認が必要
下請法施行令2条を参照すると、3条書面を電子的に提供するためには下請事業者から事前に承諾を得る必要があることがわかります。
第二条 親事業者は、法第三条第二項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該下請事業者に対し、その用いる同項前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
この事前承諾を得る手段についてはメールなどの電子的な方法も認められています。この旨が「下請取引適正化推進講習会テキスト」に記載がありますので興味がある方は参照ください。
また、事前承諾をメールなどで受領した場合には該当のメールに対してタイムスタンプを付与するなどの方法で係争時の信頼性向上に努めるようにするとよいです。
3条書面を書面による交付ができると明記することも大事
下請法上、3条書面の交付を電子によって実現することもできますが、もちろん書面による交付もできます。
したがって、下請法上によって3条書面を電子化してよいか下請事業者から承諾を得る際に書面による交付も可能である旨を明記するようにしてください。
仮に電子による提供を請事業者から承諾されなかった場合に、取引を中止する、契約金額を小さくするなどをした際には独占禁止法19条に違反する可能性がありますので注意が必要です。
3条書面を電子契約化するメリット
3条書面を電子契約化することで業務の効率化を見込めます。電子契約化する際には電子契約サービスを利用するとメリットを最大化できますので、電子契約サービスの利用がおすすめです。
契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果を見込める場合がある
電子契約サービスを導入することで以下のコスト削減を見込めます。
- 印紙税の削減
- 書面契約の作成・郵送・管理コストの削減
- 監査コスト削減
電子契約サービスで世界No1のDocuSignを導入したソフトバンク株式会社では契約書1通あたり2,500円のコスト削減効果があったと公表しています。この事例からもわかる通り、電子契約サービス導入によるコスト削減効果は非常に大きいです。
下請法と関連する契約として、建設業法の建設請負工事契約がありますが、電子契約化が可能です。したがって、3条書面と同様に電子契約対応することでさらにコストの削減を期待できます。
2週間程度かかっていた業務を即日完結できる場合がある
2021/10に郵便法が改正され普通郵便の最短配送日が翌々日になりました。したがって、取引のリードタイム長期化が課題です。
この点、立会人型の電子契約サービスを利用すれば契約締結用のURLが記載されたメールを相手方に送付するのみで契約締結を完了できますので、取引のリードタイム短縮を期待できます。
国内導入数No1を誇る電子印鑑GMOサインでは、電子契約サービス導入によって本来2週間程度かかっていた契約業務を1日に短縮できた事例があると公表しています。この事例からも電子契約サービスによるリードタイム短縮効果は大きいといえるでしょう。
おすすめの電子契約サービス
下請法に対応し、電子契約の導入メリットを最大化する電子契約サービスをご紹介します。
国内導入数No1電子印鑑GMOサイン
電子印鑑GMOサインは国内で20万社以上に導入され、導入企業数No.1の地位を保持している電子契約サービスです。
下請法で交付が求められている3条書面の電子契約化はもちろん可能ですし、建設業法の建設請負工事契約など関連する契約書の電子契約化ができます。また、立会人型と当事者型を併用できるハイブリッド型の電子契約サービスですので使いやすいです。
国内ベンダーが提供している電子契約サービスであるので、下請法や建設業法、電子帳簿保存法や電子署名法など各種法律に対応している点も特徴的な電子契約サービスといえます。
世界No1シェアのDocuSign
DocuSignは世界180か国以上で利用され7割強100万社以上の優良顧客を有する電子契約サービスです。電子契約サービスで世界No1シェアを裏付けるだけの多機能性と使いやすいUIが特徴的です。
また、DocuSignは国内外問わず350以上のシステムとの連携実績があります。電子契約サービスは他システムと連携することでメリットを最大化できますので、この点も電子契約サービスを利用する上での大きなメリットです。
Adobe Acrobat Pro DCユーザであれば無料で利用できるadobe sign
Adobe Signは世界36か国で対応でき、年間80億回の処理を行う世界的な電子契約サービスです。
Adobe Acrobat Pro DCユーザであれば既存契約の中で無料で利用可能であり、かつ、kintoneなど業務アプリケーションやMicrosoft365など生産性向上アプリケーションと統合可能ですので、非常に使いやすい点に特徴があります。
したがって、Adobe Signは海外との取引が多く、かつ、他システムと連携し契約業務を効率化していきたい方におすすめの電子契約サービスです。
まとめ 下請法を理解して契約業務を効率化しよう!
下請法上、3条書面の電子契約提供は可能です。とはいえ、電子契約で提供する際には相手方の事前承諾が必要となりますので、忘れずに承諾を得るようにしてください。
下請法のみならず法律上電子契約化可能な契約書が非常に多いです。電子契約サービスを導入することで関連文書も電子契約化して契約業務を効率化させていきましょう!