電子データを活用して手続きをする電子契約は、「当事者署名型(当事者型)」「事業者署名型(立会人型)」の2種類に分けられます。
それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、自社にとって最適なシステムを探しましょう。
立会人型・当事者の電子契約サービスを導入するメリット6点
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立会人型・当事者型の電子契約サービス導入のメリットはいくつかありますが、今回はそれら共通する、6つのポイントを紹介していきます。
- 印紙税の削減
- 事務労力・コストの削減
- 契約締結までのスピード感
- 保管・管理の効率化
- リモートワーク対応
- 契約更新の確認漏れ防止
それぞれ詳しくみていきましょう。
①印紙税の削減
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紙媒体の契約書は、収入印紙を貼ることが法律により義務付けられています。
税額は1件辺り200円から、大きいものでは数十万円。1件当たりの金額は高額でなくとも、積み重なることで負担となります。
電子契約に切り替えた場合、契約書は「課税物件に掲げる文書」ではなくなるため、印紙税が不要になり印紙税を削減可能に。
②事務労力・コストの削減
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電子契約の契約書のやりとりはネット上で行われるため電子ファイルや資料をアップロードするだけで済み、ペーパーレスに。
そのため「印刷・製本」「宛名書き」「封入・投函」などの事務作業は不要。
従来事務作業を行なっていた時間を他の作業に費やすことも可能となり、さらにインク代・印刷代・郵送代などのコストも省けます。
③契約締結までのスピード感
書面契約では、契約締結までなにかと時間がかかりがち。
これはスピード性が重視される昨今のビジネスシーンで致命的になることもあります。
電子契約であればクラウド上でデータを確認し合意したその場で契約締結が可能。ロスタイムなしで契約が完了します。
④保管・管理の効率化
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契約書は法律により、一定期間の保存が義務付けられています。
紙媒体の契約書の場合、原本をファイリングし鍵をかけて保管しておくのが一般的ですが、スペース不足や管理の手間の側面から上手く管理できていない企業も少なくありません。
電子契約の場合、契約書はデータとしてクラウド上にまとめて保管するため保管方法やスペースに悩むことはなくなり、情報漏洩や紛失のリスクも回避可能に。
また、検索機能を利用すれば目当ての契約書をアーカイブから簡単に閲覧可能です。
⑤リモートワーク対応
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コロナ禍の中で急速に広まったリモートワーク。
そんな中、電子契約サービス未導入故に契約を締結するためだけに自宅から会社にわざわざ出勤している人も少なくありませんでした。
電子契約であれば、紙と押印を必要としないため、場所・時間を選ばずに契約を締結させることができます。
現在リモートワークは部分的にしか利用していない場合でも、今のうちに導入を進めておくことがおすすめ。
⑥契約更新の確認漏れ防止
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電子契約なら、契約期限の管理も安心。更新期限が近づいたらアラート通知をするように設定することもできます。
通知回数の設定、期限以外の通知条件の追加、通知先などの条件も柔軟に設定可能です。
電子契約は「立会人型」と「当事者型」の2種類
電子契約は、電子署名の方法によって「立会人型」と「当事者型」の2種類に分類できます。
主な違いは、契約時の流れや本人証明の効力。それぞれの仕組みを正しく理解して電子契約を上手に活用しましょう。
立会人型とは
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電子契約の立会人型とは、契約をおこなう当事者ではない第三者の立会人(多くの場合は電子契約サービス事業者が相当)が契約の当事者の指示にもとづき電子署名を付与する方式を言います。 立会人型は別名、事業者署名型とも言われることも。
なお立会人型での電子契約は、代理人ではないので、立会人に双方本人の意思が確認されている状態で、サービス提供事業者が電子契約をするという形を取ります。
この電子契約を行う際の本人証明となる電子署名はメール認証やSMS認証で本人確認がおこなわれる事が一般的。
この本人確認のステップを踏むことで、立会人型の電子署名であっても法的効力は認められ、契約上問題が生じることはないという点も確認しておきましょう。
これは民法522条2項(締結方式の自由)により、契約方式の自由が存在し、原則としてどのような形式(書面、口頭、電子契約など)の契約であっても法的に有効であると規定されているためです。
つまり、どのような形式をとったとしても契約自体は有効であり、「電子契約の○○型だから法的有効性がない」ということはありません。
当事者型とは
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電子契約の当事者型は、立会人型に対し立会人を介さず本人同士が契約を締結する電子契約の方式を言います。
このとき、契約の当事者たちは署名者が本人であることを証明するために認証局で発行される「電子証明書」を用意する必要があります。
電子証明書は、信頼できる第三者(認証局)が本人証明をするもので、紙媒体の書面契約における「印鑑登録証明書」と同じ意味合いのものです。
立会人型の電子契約サービスのメリット/デメリット
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立会人型電子契約のメリット/デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
メリット
・メールアドレスなどの方式で簡易的に契約締結できる
・手間、費用が少なくて済む
デメリット
・特になし
立会人型は、先述したようにメールアドレスなどを使用し本人確認をするため、手間と費用が少なくてすみます。
本人名義の電子証明書も不要で、契約の相手方の同じ電子契約サービスを契約、またアカウント開設もほとんどの場合不要で、契約締結が可能。
立会人型の特徴は以下の表で確認していただけます。
契約の有効性 | 本人性の保証 | 手間・費用 | アクセシビリティ | |
---|---|---|---|---|
立会人型 | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
当事者型の電子契約サービスのメリット/デメリット
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当事者型電子契約のメリット/デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
メリット
・電子証明書を使用するので本人性の証明が強固になる
デメリット
・時間と費用がかかる
・双方が同じサービスやシステムを使用し、アカウント契約する必要がある
当事者型を使用するときは、本人性を担保するために認証局と呼ばれる公的機関で「電子証明書」を発行する必要があります。
この際、念入りに本人確認がおこなわれるため本人性を十分に満たすことができますが、その代わり時間と費用がかかる点がネックになることも。
電子証明書は1枚につき数千円程度で、有効期限のたびに更新する必要があります。
また、締結の際は契約当事者の双方が同じシステムを利用していて、かつ電子証明書を持っている必要があるため、契約の相手方に負担をかけてしまうこともあるでしょう。
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ただし、注意しなければいけないのは立会人型であっても、当事者型であっても法的効力は同等であること。
では、立会人型に比べ手間や費用のかかりやすい当事者型電子契約サービスはなぜ存在するのでしょう?
それは、万が一本人証明がポイントとなる係争になった場合に本人性の証明が強固になるというメリットがあるためです。これについては後ほど詳しく説明します。
当事者型の特徴は以下の表で確認していただけます。
契約の有効性 | 本人性の保証 | 手間・費用 | アクセシビリティ | |
---|---|---|---|---|
当事者型 | ◎ | ◎ | △ | △ |
それぞれの違いと選び方のポイント
ここまで立会人型、当事者型の電子契約の特徴やそれぞれのメリットデメリットを見てきました。
次に、事業・業務内容の観点から立会人型、当事者型どちらの方法を選ぶことが自社にとってベストか、選択におけるポイントを紹介します。
当事者型、立会人型、どちらも契約の法的有効性は同じ
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先ほど触れたポイントになりますが、よく誤解される点を説明します。それは当事者型であっても立会人型であっても、電子契約は民法の契約の自由の原則によりどちらも法的に有効であり、有効性は同等であるということです。
ではなぜ当事者型の電子契約が存在するのか、それは万が一本人性の証明が重要となる係争が起こった場合、当事者型電子契約の方が本人性の証明が強固であるためです。
当事者型は厳格な電子証明書が付与されており、本人性の証明として非常に信憑性があります。
このため、当事者型の電子契約サービスは複雑な契約や大型契約、海外との取引の際に選択肢になってくるでしょう。
立会人型・当事者型比較
立会人型と当事者型を選ぶ際に参照すべきポイントは以下の通り。
契約の有効性 | 本人性の証明 | 手間・費用 | |
---|---|---|---|
立会人型 | ◎ | ○ | ○ |
当事者型 | ◎ | ◎ | △ |
どちらの方式であっても電子契約の有効性は認められていることは確認しておきましょう。
立会人型・当事者型どちらがより普及している?
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当事者型の電子契約では契約の当事者双方が電子証明書を保有している必要があるため、手間と費用がかかります。
そのため、実際に広く普及しているのは手軽に導入可能な立会人型の電子契約。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会と株式会社アイ・ティ・アールが発表した「企業IT利活用動向調査2021」を見ると、立会人型を使っている事業者数が当事者型を使っている事業者数を上回っていることが分かります。
引用元:https://www.jipdec.or.jp/library/report/htpisq0000003u8q-att/20220317_s01.pdf
まとめ:電子契約サービスの種類をもっと知ろう
電子契約を導入する際は、電子証明書を発行して当事者同士が電子署名をする当事者型と、サービス提供事業者を通して電子署名をする立会人型の2種類から選ぶことが可能。
当事者型と立会人型の最大の違いは「電子証明書の名義」で、どちらも契約の有効性は認められています。
また、どちらかに絞ることが難しければ、ハイブリッド型のシステムの検討もおすすめ。
GMO サイン、docusignなどのハイブリッド型サービスは立会人型、当事者型電子契約の両方に対応しており、取引先や文書の重要性に応じて契約方法を選ぶことが可能です。
契約の重要度や会社の方針に合わせ、自社に合ったシステムを採用しましょう。