電子契約とは?書面契約との違いと締結業務の電子化によるメリット
電子契約とは?書面契約との違いと締結業務の電子化によるメリット

テレワークの普及とともに、電子上での契約締結を導入する企業が急増中

電子契約とは、これまで書面で行っていた契約締結の業務を電子上で行えるようにした仕組みのことです。

テレワークの普及などで書面契約の不便さがあらわになり、最近では電子契約への切り替えをはじめる企業が増えています。

この記事では、電子契約と書面契約の違いや、電子上で契約締結を行うメリットなどを解説していきます。

目次

電子契約と書面契約の違い

電子契約と書面契約の違い

まずは、従来の書面契約と電子契約の比較、また電子契約における法的効力の有無について詳しく見ていきましょう。

書面契約との比較

電子契約と書面契約の違いをまとめると以下のようになります。

紙の契約書 電子契約
契約の形式 紙面 電子データ・PDF
押印 印鑑・印影 電子署名
改ざん防止 割印 デジタル署名
本人性の担保 印鑑証明書 電子証明書
存在証明 消印 タイムスタンプ
契約書の送付 郵送または持参 電子メールまたはシステム経由
契約書の保管 実物管理 データ管理(サーバー)
収入印紙 必要(200円~) 不要

電子契約の法的効力

電子契約の法的効力については「電子署名法」という法律でその取り扱いが以下のように定められています。

第3条
 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

つまり、本人の意思によって作成された契約書で、かつ契約書が改ざんされていないことを証明できる場合は、電子契約であっても書面契約と同等の法的効力が認められるということです。

この本人証明や非改ざん証明のために用いられるのが、電子署名やタイムスタンプなどの仕組みとなります。

電子署名 認証局から発行される電子証明書(=印鑑証明書)を付与することで本人証明を行う仕組み
タイムスタンプ その時点で電子文書が存在していたことを証明するために用いられる仕組み

電子上で契約締結を行うメリット

電子上で契約締結を行うメリット

続いて、電子上で契約締結を行うことで期待できるメリットを見ていきましょう。

契約締結までの時間短縮・業務効率化

電子契約の導入によって、契約締結に伴う業務の時間短縮・効率化を行えるのが1つ目のメリットです。

契約締結には、契約書の印刷・製本・押印・郵送といった一連の業務が必要となりますが、電子契約を導入すればこれらを丸ごと省略することができます。

また相手方が契約書を確認・押印して返送するまでの時間も短縮できるため、1週間以上かかるケースも珍しくなかった契約締結の業務が、最短数分程度で完了できるようになります。

締結業務にかかるコストの削減

契約締結にかかるコストの削減を見込める点も電子契約導入のメリットです。

電子契約の導入により、契約書の印刷や郵送にかかる費用、またその作業にかかる人件費の削減が可能です。

更に、電子契約の場合は印紙税が不要となるため、高額な取引を行う企業にとっては特にメリットの大きい仕組みだと言えるでしょう。

コンプライアンスの強化

デジタル署名・タイムスタンプ機能を用いた電子契約の場合、電子データにアクセスしたユーザーの情報やログイン後の操作記録などを全て履歴として残すことができます。

そのため、書面で契約締結を行う場合よりもなりすましや改ざんのリスクが低く、もしもの場合でも簡単に犯人を特定できるなど、コンプライアンス面でのメリットも挙げられます。

また火災や地震などの自然災害によって機材が破損した場合でも、電子データはクラウド上に保管されているため外部の影響を受けることがありません。

契約締結済みの電子文書が破損・紛失するといった心配がなく、復旧も簡単に行えることから、BCP対策の面でも効果的な仕組みとなっています。

電子契約を導入するうえで知っておくべき法律

電子契約を導入するうえで知っておくべき法律

ここからは、電子契約を締結していくうえで知っておいた方が良い法律をご紹介します。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、電子契約書などの電子データに関する保存方法を定めた法律です。

パソコンの普及が加速した1998年に制定されたもので、一定の要件を満たす場合に限り、契約文書を電子ファイルとして保存することが認められるようになりました。

電子契約書を法的に有効なものとするための要件は、電子帳簿保存法第10条にて細かく定められています。

以下は重要な部分を抜粋したものです。

法第10条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)関係
・取引情報の授受の過程で発生する訂正又は加除の情報を個々に保存することなく、確定情報のみを保存することとしている場合には、これを認める。
・取引情報の重複を排除するなど、合理的な方法により編集(取引情報の内容を変更することを除く。)をしたものを保存することとしている場合には、これを認める。

電子署名法

電子署名法は、電子契約の有効性や証拠能力などに関する取り扱いを定めた法律です。

電子帳簿保存法に続く形で2001年に制定されました。

電子署名法で最も重要なポイントが、電子契約の法的効力を定めた第3条の内容です。(「電子契約と書面契約の違い」の見出し参照)

ここでは、電子署名(+タイムスタンプ)が付与された電子文書であれば、書面契約における捺印と同様の法的効力を認めるという旨が記載されています。

e-文書法

e-文書法は、法人税法や会社法・商法などで義務付けられている文書の電子保存を認めるための法律です。

こちらは2004年に制定された法律で、これまで紙での保管が必要であった領収書や請求書などを電子文書として保管できるようになりました。(※要件を満たした場合のみ

なおe-文書法は通称名であり、正確には「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律で構成されています。

契約締結の電子化で期待できるメリットまとめ

契約締結の電子化で期待できるメリットまとめ
  • 電子契約は、これまで書面で行っていた契約締結の手続きをオンライン上で行えるようにした仕組みのこと
  • 電子契約を導入することで、業務効率化やコスト削減、コンプライアンス強化などのメリットが期待できる
  • 電子上で契約締結を行う際は、電子署名法や電子帳簿保存法といった関連法についても簡単に触れておくと良い

電子上での契約締結は、書類作成にかかる様々な業務・コストを削減できる便利な仕組みと言えます。

一方で、契約締結の方法や保管方法を誤るといざという時に法的効力を発揮できない可能性があるため、導入する際は関連法の内容もチェックしておくと安心です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次