電子契約とは、インターネット上で売買契約などを締結できる仕組みです。紙を用いた契約と違って、印鑑や手書きのサインがいりません。契約に同意したことは、電子署名とタイムスタンプを用いて表します。
電子署名・タイムスタンプを自社で導入しようといろいろ調べていると「タイムスタンプなしで契約を結んでも問題ないのだろうか」「法的な証明はできるのだろうか」という疑問にぶつかることがあります。
タイムスタンプなしでも大丈夫なら、会社として用意するのは電子署名だけになるため「電子契約の準備にかかる負担が少なくなるのでは」と考える人もいるでしょう。
そこで本記事では、電子契約におけるタイムスタンプの取り扱いについて解説します。タイムスタンプなしの電子契約でも認められるのか、どのような場合にタイムスタンプが必要なのかあわせて確認していきましょう。
タイムスタンプとは?電子契約における役割
そもそもタイムスタンプとは、電子契約を締結する際に電子文書へ付与する時刻の情報のことです。
タイムスタンプを押すことで、その時刻に電子文書が存在していたことを証明できます。
またタイムスタンプは、付与した時刻以降に電子文書が何者かによって改ざんされていないことも表します。
電子契約におけるタイムスタンプの役割をまとめると、以下の2つです。
- 存在証明
- 非改ざん証明
タイムスタンプが上記2つの役割を果たすことで、さまざまな人が使用するインターネット上でも会社にとって重要な契約や申請データをやりとりできます。
基本的に電子契約を導入する場合は、電子署名とあわせてタイムスタンプが必要です。
タイムスタンプの信頼性はいかに?
タイムスタンプは電子文書の作成者自身で付与するものではありません。それでは、タイムスタンプの信頼性が担保されないでしょう。
タイムスタンプは、時刻認証局(TSA:Time-Stamping Authority)によって付与されます。具体的には一般社団法人日本データ通信協会の認定を受けた事業者が、電子文書にタイムスタンプを付けます。
認定事業者は以下サイトで確認可能です。気になる方はぜひ目を通してみてください。
タイムスタンプなしの場合、電子契約は有効?
タイムスタンプなしであっても、電子契約の締結は可能です。ただし、タイムスタンプなしの場合は電子署名の有効性が確保できません。具体的には、有効期限が定められている電子契約の場合、タイムスタンプがないと契約が無効になります。
電子契約を結ぶときには、電子証明書を用いることがあります。電子証明書とは紙の契約でいう印鑑証明書のような役割を持つものです。電子契約で使用すると、電子署名を電子文書に付与したのが間違いなく本人であることを証明できます。
この電子証明書には1~5年の有効期限が設定されています。有効期限が設けられている背景には暗号アルゴリズムの脆弱性がありますが、要は電子証明書は有効期限を設けて発行・更新しなおすことで安全性が確保されるということです。
例えば、2021年3月31日までが有効期限の電子証明書を使用する場合、2021年11月に結んだ電子契約は有効です。しかし、2021年3月31日を過ぎると2021年11月の電子契約の有効性は認められなくなります。
こうした場合に活用されるタイムスタンプです。電子証明書の有効期限が切れる前に更新し、その情報をタイムスタンプで付与することで2021年3月31日を過ぎても2021年11月に締結した電子契約の有効性が認められます。
したがって、契約期間が長くなる場合、会社として重要度が高い電子契約を結ぶ場合などは、電子署名とあわせてタイムスタンプを電子文書に付与することが大切です。
契約書への電子署名以外にタイムスタンプが必要な場面
ここまで契約書に電子署名・タイムスタンプを付与する場合について解説してきましたが、それ以外にも必要になるケースがあります。具体的には、e-文書法や電子帳簿保存法に基づいて電子文書を保存するときです。
e-文書法におけるタイムスタンプの必要性を確認
e-文書法とは、紙での管理が義務づけられていた文書を電子化して保存するために設けられた法律です。電子文書による管理に変更することで、ペーパーレス化によるメリットを感じられます。例えば、コピー用紙やインクにかかる費用・印紙代の削減、書面を紛失するリスクの低減などが代表的です。
しかし、e-文書法では文書を電子化して保存する際の要件として「完全性」「機密性」「見読性」の3つを満たすようにと規定されています。
上記3つの条件のうち、「完全性」「機密性」をクリアするために有効なのがタイムスタンプです。電子署名と併用することで、e-文書法に則した電子文書の保存が成立します。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの必要性とは
電子帳簿保存法とは、電子化した帳簿書類を取り引きなどの証拠として保存するために施行された法律です。この法律で定められている真実性の確保のために、電子署名とあわせてタイムスタンプの付与が必要とされています。
複数回、改正が行われており、直近では令和3年度の税制改正に伴って帳簿書類を電子的に保存する際の手続き見直しが行われました(施行は令和4年1月1日)。
タイムスタンプに関することでいえば、本改正で要件や検索要件などが緩和されています。
具体的には、以下の通りです。
⑴ タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。
⑵ 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。
⑶ 電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(注1)において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
タイムスタンプなしでも電子帳簿保存法の要件を満たせる?法律の改正内容とは
結論からいうと、電子帳簿保存法で定められている一定の要件を満たしていればタイムスタンプなしでも問題ありません。
具体的には、適した管理を行っている場合に受領者側のタイムスタンプが不要になります。ちなみに、電子帳簿保存法が改正する前は、電子文書の発行者と受領者の両方でタイムスタンプの付与が必須とされていました。
要件が満たせない場合は、タイムスタンプなしであることが大きな問題になるケースがあります。自社でひとつひとつ判断するのが面倒な場合は、電子署名やタイムスタンプの専用サービスなどを利用して対応する方法をおすすめします。
まとめ
タイムスタンプとは、電子文書に電子署名とあわせて付与することで存在証明や非改ざん証明ができる仕組みです。
タイムスタンプの付与はすべての電子文書で必要になるわけではありません。タイムスタンプなしで保管しても問題ないケースもあります。
ただし、タイムスタンプなしが許される場合は一定の要件が設定されているため、その都度確認することをおすすめします。
電子帳簿保存法などの関連法律は、頻繁に改正されている状況です。電子署名・タイムスタンプを用いた電子契約をこれから導入しようと考えているなら、常に最新情報を入手するように心がけましょう。