「建設業法上、電子契約は適法?」
「建設業で利用できる電子契約サービスは何があるの?」
と疑問に感じていませんか。
結論、建設業法上の法的要件を満たせば契約書の電子化はできます。ただし、2020/10に建設業法が改正され、法的要件に本人性が追加されている点に注意が必要です。
当記事では、建設業法で電子契約が適法である根拠、適法であるとみなされた事例、建設業法に適法の電子契約サービスまで紹介します。
電子契約サービスは建設業界でも利用できるのか
建設業法第19条3項により建設業界においても電子契約は認められています。以下、建設業界における電子契約の扱いを紹介します。
2001年の建設業法改正で電子契約は合法になった経緯がある
2000年にIT書面一括法が施行され、民間の商取引において書面交付が義務付けられている書面について、相手方の了承があれば電子交付が可能になりました。
IT書面一括法による関連法律の電子化対応の流れを受けて、2001年に建設業法が改正され、書面交付を義務付けていた建設業務請負契約の電子契約利用が認められています。
建設業界において電子契約が合法である根拠
建設業法では基本的に契約書の書面交付に加え、署名または記名押印を求めています。
◆建設業法19条
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
しかし、建設業法19条3項には相手方の了承を得れば、契約書の電子化をしてもよいと明記されているため、電子契約の利用ができます。
◆建設業法19条3項
建設工事の請負契約の当事者は、(中略)当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。
「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術」とは、コンピューターやインターネットを指し、この技術を利用する電子契約サービスは適法であると判断できるでしょう。
グレーゾーン解消制度により電子契約の法的拘束力も確認済み
建設業法を確認する限り、電子契約が適法であると判断できるものの、実際に国土交通省など省庁から適法であるとお墨付きを頂いた方が安心して利用できます。そこで利用するのがグレーゾーン解消制度です。
クラウドサインやDocuSignなど一部の電子契約サービスではグレーゾーン解消制度を利用して、各要件を満たしていることを確認しているため、安心して利用できます。
電子契約を行うための法的要件
「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」に記載の、各法的要件を紹介します。
原本性の確保
上記ガイドラインの、「原本性の確保について(規則第 13 条の 2 第 2 項第 2 号関係)」には原本性の要件が記載されています。記載は以下の通りです。
原本性の確保について(規則第 13 条の 2 第 2 項第 2 号関係) 建設工事の請負契約は、一般的に契約金額が大きく、契約期間も長期にわた る等の特徴があり、契約当事者間の紛争を防止する観点からも、契約事項等を 記録した電磁的記録の原本性確保が重要である。このため、情報通信技術を利 用した方法を用いて契約を締結する場合には、以下に掲げる措置又はこれと同 等の効力を有すると認められる措置を講じることにより、契約事項等の電磁的記録の原本性を確保する必要がある。
つまり、原本性を確保するためにシステム上で対応措置をとる必要があります。対応は以下の通りです。
(1)公開鍵暗号方式による電子署名
情報通信の技術を利用した方法により行われる契約は、当事者が対面して 書面により行う契約と比べ、契約事項等が改ざんされてもその痕跡が残らな いなどの問題があり、有効な対応策を講じておく必要がある。 このため、情報通信の技術を利用した方法により契約を締結しようとする 場合には、契約事項等を記録した電磁的記録そのものに加え、当該記録を十 分な強度を有する暗号技術により暗号化したもの及びこの暗号文を復号す るために必要となる公開鍵を添付して相手方に送信する、いわゆる公開鍵暗 号方式を採用する必要がある。
まず、公開鍵暗号方式により文書の本人性および非改ざん性の証明が必要です。公開鍵暗号方式を採用する場合、本人性をより強固に証明するために電子証明書を発行します。電子証明書に係る要件は以下の通りです。
(2)電子的な証明書の添付
(1)の公開鍵暗号方式を採用した場合、添付された公開鍵が真に契約を しようとしている相手方のものであるのか、他人がその者になりすましてい ないかという確認を行う必要がある。 このため、(1)の措置に加え、当該公開鍵が間違いなく送付した者のも のであることを示す信頼される第三者機関が発行する電子的な証明書を添 付して相手方に送信する必要がある。この場合の信頼される第三者機関と は、電子認証事務を取り扱う登記所、電子署名及び認証業務に関する法律(平 成 12 年法律第 102 号)第 4 条に規定する特定認証機関等が該当するものと考 えられる。
つまり、電子署名法第4条~14条に規定された要件を満たす認証事業者が発行する電子証明書を取得し、相手方に送付する必要があります。
(3)電磁的記録等の保存
建設業を営む者が適切な経営を行っていくためには、自ら締結した請負契 約の内容を適切に整理・保存して、建設工事の進行管理を行っていくことが 重要であり、情報通信の技術を利用した方法により締結された契約であって もその契約事項等の電磁的記録等を適切に保存しておく必要がある。 その際、保管されている電磁的記録が改ざんされていないことを自ら証明 できるシステムを整備しておく必要がある。また、必要に応じて、信頼され る第三者機関において当該記録に関する記録を保管し、原本性の証明を受けられるような措置を講じておくことも有効であると考えられる。
また、契約書を適切に保存しなければいけません。保存時、保存した文書の非改ざん性を証明できるシステムを整備する必要があると記載されています。
見読性の確保
上記ガイドラインの「見読性の確保について(規則第 13 条の 2 第 2 項第 1 号関係)」には見読性の要件が記載されています。記載は以下の通りです。
見読性の確保について(規則第 13 条の 2 第 2 項第 1 号関係)
情報通信の技術を利用した方法により締結された建設工事の請負契約に係 る建設業法第 19 条第 1 項に掲げる事項又は請負契約の内容で同項に掲げる事 項に該当するものの変更の内容(以下「契約事項等」という。)の電磁的記録 そのものは見読不可能であるので、当該記録をディスプレイ、書面等に速やか かつ整然と表示できるようにシステムを整備しておくことが必要である。 また、電磁的記録の特長を活かし、関連する記録を迅速に取り出せるよう、 適切な検索機能を備えておくことが望ましい。
つまり、見読性を確保するために、明瞭かつ速やかにディスプレイ上に建設工事請負契約書などを出力できる必要があります。
また、システムである利点を活かし、主要三小目(取引年月日、取引日付、取引先名称)などで検索できる必要がある点に注意が必要です。
本人性の確保
2020/10に建設業法が改正され、原本性、見読性に加えて本人性も要件として加えられています。
(建設工事の請負契約に係る情報通信の技術を利用する方法)
第十三条の四
(略)
2前項に掲げる措置は、次に掲げる技術的基準に適合するものでなければならない。
一・二(略)
三 当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。
本人性は契約当事者同士で本人確認ができるのであれば要件を満たすと考えられます。したがって、電子証明書を発行する当事者型電子署名、また、立会人型電子署名を付与することで要件を満たします。
建設業界で契約書を電子化するメリット
建設業では下請け・元請け業者との契約や土地や資材の売買など様々な業務で契約書を発行します。これらの契約書を電子化することで以下のメリットがあるでしょう。
- 印紙税など紙固有業務のコストを削減可能
- コンプライアンスの強化
- 取引リードタイムの短縮化
印紙税など紙固有業務のコストを削減可能
建設業では従来書面での契約を大量に締結していますので、契約書をオンライン化することで印紙税や紙固有の業務の削減によるコスト削減効果が見込めます。
不動産譲渡契約や建設工事請負契約などの建設業に直接関係する契約の他、金銭消費賃貸借契約や領収書、注文書などを合計すると多額の印紙税を削減できるでしょう。
また、書面の契約書は税務会計上、最低7年間の保管が法的に義務付けられています。多量の書面を7年保管すると保管場所の確保だけでコストが多額です。
一方で、電子契約であれば、システム上に一元管理できますので、かかるコストはストレージ利用料のみです。
コンプライアンスの強化
建設業で多量に締結する書面契約書を管理する場合、契約書の紛失や閲覧にリスクがあります。
一方で電子契約であれば、フォルダ別にアクセス制御やデバイス別のIP制御、閲覧履歴の確保など、各種セキュリティ機能が充実していますので、コンプライアンスの強化を見込めるでしょう。
取引リードタイムの短縮化
郵便法が2021/10に改正され、普通郵便の配送が最短で翌々日になりました。したがって、取引のリードタイムの長期化が課題です。
一方で電子契約サービスであれば、URLリンクを送付するだけで契約を締結できる場合が多いので、リードタイムの短縮化を期待できます。
建設業法に適合したおすすめのシステム
国交省のグレーゾーン解消制度を活用し、建設業法上適法であると明確に証明された電子契約サービスをご紹介します。
クラウドサイン
クラウドサインは弁護士ドットコム株式会社が提供する国内シェアNo1の電子契約サービスです。グレーゾーン解消制度により建設業法上適法であると証明されています。
電子契約業界でNo1シェアを誇るため、豊富な連携実績を持つ点にメリットがあります。
SalesforceのようなCRM/SFシステムやkintoneやジョブカンなどのワークフローシステム、BOXなどの外部ストレージシステムなど多種多様なシステムとの連携実績があるため、お持ちのシステムとの連携も問題なくできるでしょう。
また、No1シェアに恥じない豊富な機能を搭載しています。長期署名機能、タイムスタンプ、文書のテンプレートなど契約業務をサポートする機能が充実していますので、電子契約で迷ったらクラウドサインの導入でも問題ないでしょう。
wan-sign
wan-signは電子契約業界で業界最大手の導入社数を誇るGMOクラウド株式会社が提供する「GMO電子契約サービスAgree」をベースに作成された電子契約サービスです。グレーゾーン解消制度により建設業法上適法であると証明されています。
また、wan-signは当事者型電子署名と立会人型電子署名のいずれも活用できる点が特徴的です。立会人型電子署名は電子証明書を発行していない分、当事者型電子署名と比較し、係争時の信頼性に劣りますので、係争時の信頼性を求める企業にwan-signはおすすめです。
加えて、電子印鑑GMOサインと同水準の文書管理機能や契約業務補助機能がありますので、機能面でも申し分ありません。2022/1に改正予定の電子帳簿保存法にも対応していますので、安心してご利用いただけます。
まとめ 電子契約サービスを導入して業務を効率化しよう!
建設業法上の法的要件を満たせば契約書の電子化はできます。建設業法で電子契約に求められる要件は原本性、見読性、本人性ですので、要件を満たした電子契約サービスを導入しましょう。