印鑑いらずの電子署名システムを用いた電子契約・電子認証が、世間の注目を集め、各業界の企業で急速に普及しています。
電子契約や電子署名・電子認証はメリットが大きく、「ハンコ文化」が根強く浸透した日本においても将来、一般に定着し、当たり前の存在になっていくことは間違いありません。
そのような動向から、電子契約サービスを提供する企業の収益性も向上していくことが確実視されています。
この記事では、主に個人投資家に向けて、電子契約サービスに関連する株式銘柄の内訳と、その将来性などをテーマに解説しています。
電子契約サービス関連銘柄とは?
電子契約サービス関連銘柄とは、国内の株式市場に上場している株式会社のうち、署名・押印入りの契約書を不要とする新たなデジタル契約認証技術である「電子契約」「電子認証」に関わっている企業の総称です。
既に述べたとおり、電子契約は急速に普及している途上であり、需要も大きいです。つまり、電子契約関連サービスを提供する企業の株価が上昇する契機となりうるのです。
電子契約の需要のテーマは「テレワーク」と「コストカット」です。
社印は社外に持ち出すことが原則として許されないため、従来はテレワークで契約書の作成業務を行うことが困難でした。
しかし、社印が不要となる電子認証・電子署名を利用した電子契約システムを利用すれば、テレワークの環境下でも容易に電子契約書の作成や送付などの事務手続きを行うことができます。
また、電子契約サービスを使えば、契約書の印刷・製本・郵送・保管などの手間をすべて省くことができる、従業員の省力化、ならびに労働生産性向上のメリットがあります。
さらに、印紙税が免除されるほか、郵送代も削減できるコストカット効果も小さくありません。
それで電子契約・電子認証サービスをテーマとした関連銘柄は、フィンテック(財務系IT)やリーガルテック(法務系IT)といったテーマにも深く関連する
人気の電子契約サービス関連銘柄一覧
上場企業の中でも、電子契約というテーマで注目すべき関連銘柄について、「サービス提供事業者」「関連ソフト業者」「サービス販売業者」という3ジャンルに分けて、以下、具体的に挙げています。
電子契約サービスの提供事業者
日鉄ソリューションズ(2327)
日本製鉄グループ内で、システムインテグレーターの役割を担う企業の株式銘柄です。電子契約サービス「CONTRACTHUB(コントラクトハブ)」を提供しています。
同社はかつて、当事者型の電子認証システムを採用していましたが、2021年4月から、事業者署名型(立会人署名型)の電子署名機能を新たに追加しています。
業歴40年以上を誇る、伝統ある電子契約関連企業であるだけでなく、非常に収益性が高く、長年にわたって無借金経営を続けている注目の銘柄です。
インフォマート(2492)
インターネットの黎明期から、企業間電子取引に関するデジタルソリューションを提供してきた注目の関連銘柄です。独自の電子契約システムとして「BtoBプラットフォーム 契約書」を提供しています。
最新のブロックチェーン技術を採用しているのが大きな特徴です。ブロックチェーンは不正な改ざんを不可能にした特殊なデジタルデータで、取引の信用や機密性を確保し、ビットコインなどの仮想通貨を成り立たせている基幹技術です。
さくらインターネット(3778)
インターネット黎明期から、レンタルサーバ事業を展開して急成長してきた企業銘柄です。国内オンライン通信の業界を牽引してきた強みを生かして「電子契約プラットフォームβ」という独自の電子署名システムを提供しています。
GMOグローバルサイン HD(3788)
「電子印鑑GMO(gmo)サイン」を展開するGMO(gmo)グローバルサイン株式会社を子会社としている持ち株会社の銘柄です。そのほか、GMO(gmo)グループは米国・英国・上海・ベルギー・シンガポール・フィリピン・インド・ドバイ・ロシアに、電子契約サービスを提供する現地法人を立ち上げています。
弁護士ドットコム(6027)
三井住友フィナンシャルグループとの合弁で、SMBCクラウドサイン株式会社を設立し、国内シェア1位の「クラウドサイン」という電子契約サービスを展開している企業の銘柄です。
法律情報ポータルサイト「弁護士ドットコム」の運営会社でもあります。
セイコーHD(8050)
国内を代表する時計メーカーとして著名な100年企業の老舗銘柄です。近年では、多角経営の一環で、電子署名をテーマとした分野にも乗り出し、電子契約サービス「かんたん電子契約 for クラウド」を展開しています。
日本通運(9062)
物流事業で国内最大手の銘柄ですが、電子認証テーマの関連銘柄としても注目されています。同グループ傘下で情報資産管理事業を行う、株式会社ワンビシアーカイブズでは、独自の電子契約サービス「WAN-Sign」を開発、販売しています。
なお、日本通運は2022年1月、持株会社「NIPPON EXPRESS ホールディングス」を設立予定です。
セコム(9449)
日本初かつ国内最大の警備サービス企業として著名な銘柄です。また、セキュリティに関する専門性を生かし、独自の電子契約関連サービスとして「セコムあんしんエコ文書サービス」「セコムあんしん電子契約スマート」を提供しています。
ベクター(9758)
オンライン上で、個人や中小企業が制作したフリーウェアやシェアウェアをダウンロード販売している企業として、国内大手の注目銘柄です。電子署名・電子認証の関連テーマでは、基本無料の電子契約サービス「みんなの電子署名」を意欲的に展開しています。
電子契約サービスの周辺機器・署名認証技術の関連業者
ソリトンシステムズ(3040)
ITセキュリティ・本人認証に関するシステム開発や販売などを行っている企業の銘柄です。
電子契約に関わるオンライン認証の分野では、本人識別機能を強化したネットワーク環境を実現する、「NetAttest EPS」を提供しています。
ディー・ディー・エス(3782)
指紋認証技術では、日本国内でも指折りのリーディングカンパニーの銘柄です。大学とも連携したセキュリティシステム開発を精力的に行っています。
サイバートラスト(4498)
独自の電子署名・電子認証システムブランド「iTrust」を提供している企業の銘柄です。さらに、弁護士ドットコムと業務提携しており、「iTrust 電子署名用証明書」と「iTrust リモート署名サービス」が、クラウドサイン内の認証システムとして正式採用されています。
ジャパンシステム (9758)
米国のIT周辺機器大手、ヒューレットパッカードグループ内の国内システムインテグレータとして活動しています。NTTデータや官公庁向けに、より信頼性の高い電子署名を中心とする認証やセキュリティに関連するシステムを開発しているのが特徴です。
電子契約の関連では、多要素認証によるセキュリティソリューション「ARCACLAVIS Ways(アルカクラヴィス ウェイズ)」を提供している銘柄といえます。
電子契約サービスの販売提携
NECネッツエスアイ(1973)
電子契約サービスで世界シェアNo.1のDocuSignの販売代理店としての活動を行っている企業の銘柄です。「DocuSign Agreement Cloud」という独自のオンライン電子契約販売プラットフォームを展開しています。
カナミックネットワーク(3939)
医療・介護・育児に特化して生産性の向上や業務効率化を目指す「カナミッククラウドサービス」を展開しているオンラインプラットフォーム企業の銘柄です。そのサービス内で、弁護士ドットコムの「クラウドサイン」とのシステム連携や販売を実施しています。
富士フイルム HD(4901)
撮影用フィルムメーカーとして昭和時代には隆盛を誇りましたが、最近では化粧品や製薬など経営の多角化に乗り出している企業の関連銘柄です。
グループ傘下の富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(旧:富士ゼロックス)では、弁護士ドットコムのクラウドサインや、シェア世界一のDocuSignを販売展開しています。
人気銘柄は実際に契約業務に導入するのもおすすめ?
株式投資の銘柄として、電子契約サービスをテーマとした関連企業に注目することと、実際にそのサービスの利用者になることは、本来、別の問題です。
株価が順当に上がるかどうかは、主観的な好みよりも、多くの投資家が注目しそうな客観的視点のほうが重要な判断材料になるからです。
しかし、運営会社の株価が上昇するなど、人気を集める電子契約サービスは、多くの利用者の評価に触れており、改善が繰り返されています。銘柄として注目するだけでなく、実際に利用してみるのも良い選択です。
おすすめ電子契約サービス
DocuSign(ドキュサイン)
世界シェアNo.1の電子契約・電子署名・電子認証サービスです。多言語対応が充実しているため、国内だけでなく、グローバル市場への展開を行う企業にとっては、特に重宝します。
クラウドサイン
弁護士ドットコムと三井住友フィナンシャルグループの合弁会社が展開している、国内シェア1位の電子契約・電子署名・電子認証サービスです。法律家集団が中央官庁と繰り返し確認し、常に最新の電子契約法制をサービスに反映させています。
電子印鑑GMOサイン
グローバル展開も果たしているネット関連企業群、GMO(gmo)グループが提供している電子契約・電子署名・電子認証サービスです。インターネットを知り尽くしている運営会社だからこそできる使いやすさが特徴です。